目標 5 恒久的解決策のさらなる追求

1.長期化する難民状況の包括的な恒久的解決の実現


  • UNHCRは、各国およびその他のパートナーと共に実行可能な恒久的解決策を含む包括的な行動計画の可能性を追求し、長期化するすべての難民状況の見直しを行う。上記行動計画は出身国、受け入れ国、第三国定住国および難民自身との緊密な協議のもとに実施する。
  • 第三国定住に関する作業部会は、第一次庇護国の対応力強化がいかに第三国定住以外の恒久的解決策の可能性に影響を及ぼすか、また、難民発生国の近隣地域内での再定住を含む第三国定住の効果的利用法に関して調査する。

 

2.自主帰還にまつわる条件の改善


  • 出身国は、UNHCRおよび国連人権高等弁務官事務所を含む関連するパートナーと協力して、帰国の権利を尊重し、難民の帰国を認めることを約束する。出身国はこれを、適切な身体的・法的・物質的な保障措置の枠組みの中で行わなければならない。その中には、例えば恩赦、人権の保障、財産の回復を可能にする措置などが含まれる。これらの可能性は、適切に難民に伝えられなければならない。
  • また上記に鑑み、出身国は、社会、経済、文化、政治の分野においてイニシアチブをとり、特に帰還民コミュニティとの和解と対話を促進し、法の支配への尊重を確保する。
  • 各国は、出身国に対してさらに一貫性のある包括的な支援を整え、出身国が帰還民の法的、身体的、物質的な安全を保障する責任が果たせるよう支援する。
  • 各国は、平和と和解のプロセスに女性を含む難民の参加を促す。それらの合意は、帰還する権利を適切に認め、帰還、社会への再統合、和解の促進を意図したものでなければならない。
  • 出身国と庇護国はUNHCRと協力しながら、とりわけ三者間協定の締結、「体験訪問」といった方法で自主帰還を促進する。また、難民と出身国の政府職員との交流を含む帰還準備説明会、その他の信頼構築のための活動、加えて、資源の許す範囲内で、UNHCRのフィールドでの存在を強化し、出身国での継続的なモニタリングおよび帰還に適した、正常で平和的な状況作りに貢献する。
  • UNHCR執行委員会は、自主帰還に関する結論第40号(XXXVI)を補足するものとして、財産事項を含む法的保護措置に関する「結論」を採択する。
  • 各国とUNHCRは、帰還または社会復帰の際に起こりうるジェンダーおよび年齢特有の問題が早い時期に見出され、自主帰還プログラムの計画と実施の際にこの点を十分に考慮に入れられることを確保する。
  • 各国とUNHCRは、男女ともに帰還に関する十分な情報を与えられた上で、難民が自発的に帰還の決定を下し、さらに個人情報の保護も考慮した上で自主帰還申請書に署名する機会を与えられることを確保する。

 

3.帰還を成功させるための協力体制の強化


  • UNHCRは、1996年の『自主帰還に関するハンドブック』を、関係者間の協力と信頼強化により鋭く焦点を当てて改訂する。
  • UNHCRとその他の関連するパートナーは、帰還民、避難民、現地住民の間において、必要不可欠なサービスへの衡平なアクセスと公的生活への衡平な参加を促し、和解を奨励する措置を帰還に関する企画立案に盛り込むことにより、和解のプロセスを支援する。
  • 各国とUNHCRは、帰還の持続可能性とUNHCRの時宜にかなった活動の終了および作業の引き渡しを促進するため、開発援助におけるパートナーを早期に関与させる帰還計画を作成する。
  • 各国、UNHCRと開発援助におけるパートナーは、必要に応じ、また協力の精神に基づき、地域住民・帰還民のための住居と必要不可欠なサービスを優先的に考慮し、難民の受け入れ能力を高めかつ和解に資する、コミュニティに基礎をおいた再統合への投資に焦点を当てる。
  • 各国は、女性帰還民に対して住居、財産および土地の所有権の回復にあたり平等な権利を保障する措置をとる。
  • 各国、UNHCRおよびその他のパートナーは、出身国において帰還民に対する教育の機会を重視し、国外に逃れている間に受けた教育、職業訓練またはその他の研修を相応に資格評価し、教育の継続を図る。

 

4.恒久的解決に向けた包括的戦略の一環として位置づけられた庇護国での定着


  • UNHCR執行委員会は、難民の特別なニーズ、国際および国内の法的基準ならびに受け入れ国の社会的・経済的な現状に配慮した「結論」の形で、庇護国への定着という解決策を実施するための枠組み的考慮事項を設定する。これに関連して、庇護国への定着にあたりジェンダーと年齢に配慮した地域開発のアプローチを促進し、可能で適当な場合には、難民と現地住民双方のニーズを考慮に入れることとする。
  • 各国は、既にかなりの程度の社会的・経済的定着を達成した難民に、安定した法的地位と居住権の付与(庇護国の国籍を取得する機会を含む)を、いつ、どこで、どのようにして促すかを検討する。
  • 各国は、国際および地域開発機関と協力しながら、負担の共有を通して難民の庇護国への定着の実現に寄与する。難民の存在により既に影響を受けている地域コミュニティの利益も十分考慮に入れながら、難民の自立と定着を支えるために必要な資源を確保しなければならない。

 

5.第三国定住機会の拡大


  • UNHCRは第三国定住を受け入れる国の数を増やし、第三国定住をさらに効果的・計画的(strategic)に利用し、より多くの難民がその利益を享受できるようにすることにより、難民の保護の強化に努める。ただし、そのために必要な資源について考慮しなければならない。
  • 第三国定住の機会をまだ提供していない国は、難民受け入れ枠を設けることについて積極的な考慮を払う。
  • 各国とUNHCRは、NGOと協力し、新規の第三国定住受け入れ国のために、研修のみならず、経験豊富な第三国定住実施国との提携やその他の支援を含む、受け入れ能力構築プログラムを策定する。
  • 既に第三国定住の機会を提供している国は、受け入れ枠拡大、多様な難民集団の受け入れ、いっそう柔軟な受け入れ基準22の導入を検討する。
  • 各国は、第三国定住が、受け入れられた難民の現地社会への定着を強化する政策と並行して行われることを確保する政策を導入する。これは、長期的な在留資格を付与された難民が、受け入れ国での社会、経済、文化的な生活における権利と機会を平等に享受できることを目標とし、これらの権利および機会には、特に語学研修、能力開発を含む教育、労働市場、家族再統合、市民権が含まれる。

22 ゴール3の目的6も参照のこと。

 

6.保護の手段および恒久的解決策としての第三国定住のより効率的な活用


  • 各国とUNHCRは、NGOと協力し、難民の保護の必要性 により強い焦点を当て、第三国定住の申請要件を合理化する。
  • 各国とUNHCRは、第三国定住を必要としている難民の身元確認作業を支える、生体認証登録システムの実現可能性を検討する。
  • 各国とUNHCRは、難民個人および特定の難民集団の第三国定住の必要性を事前に予測し、特に緊急を要する状況下での第三国定住申請を迅速に処理するため、難民の登録時に集められた情報の早期分析の実行方法を検証する。
  • 各国とUNHCRは、第三国定住の特別な基準である「危機に瀕する女性」(women-at-risk)のカテゴリーに加えて、ジェンダーに基づく保護の必要性も十分考慮し第三国定住プログラムを進めていく。
  • UNHCRは、不正行為の可能性を最小限に抑えるための手段および仕組みを改善し、汚職と詐欺の問題に取り組み、UNHCR執行委員会に情報を提供し続ける。
  • 各国とUNHCRは、各地域において均等に、第三国定住に必要とされる今後の資源の増加を確保する。

 

7.難民の自立の達成


  • UNHCRと各国は、難民支援プログラムに、当初から難民の自立とエンパワーメントのための戦略が統合されることを確保する。この点に関連し、UNHCRはそのために財政的および技術的支援を動員する触媒の役割を担う。
  • また、上記に鑑みUNHCRと各国は、難民女性の機知や潜在的可能性を活用し、救済代替政策23に目を向ける。これは、難民の過度の依存や無為な時間に起因し得る性的およびジェンダーを理由とする暴力を含む深刻な保護上の問題の防止にも効果があろう。
  • 各国は、教育、職業訓練、農業その他の所得を生み出すプログラムの可能性の拡大を男女公正に検討する。
  • 各国、UNHCR、人道援助におけるパートナーは、難民の中でも特に女性と青年、および受け入れ地域住民の自立プログラムの策定と発展への参加を確保する。
  • 各国、UNHCR、人道援助と開発援助におけるパートナーは、受け入れ国とともに、難民受け入れ地域の受け入れ能力を強化するための統一されたアプローチをさらに発展させる。
  • UNHCRは、庇護国にいる難民の経済的、社会的状況の調査研究に着手する。この調査は、難民の雇用に関する各国の法令と自立達成計画における最良の実務例の作成に重点を置き、各国に対して原則を具体的な措置として実行するための実質的な運営手段を提供する 。

23 特定の物資〈例えば、食用油、小麦粉、毛布、ストーブ〉を生産するに際しての難民と地域の共同体の双方を巻き込んだ取り組みをいう。

 

8.旧難民受け入れ地域の復興


  • 各国、UNHCRと開発援助におけるパートナーは、旧庇護国内で難民の流入の影響を受けた地域の復興に対する国際社会の取り組みをいかに促進し、貢献できるかについて検討する。

GOAL : 1 2 3 4 5 6