ビジネスを通じて、難民問題の恒久的な解決に貢献する――。2024年6月20日の「世界難民の日」を前に、UNHCR駐日事務所、UNDP駐日代表事務所、Youth Co:Lab(ユース・コーラボ)の共催で、「ビジネスの視点で難民問題にアプローチ! 世界難民の日ワークショップ」が実施されました。
このイベントは、UNDP(国連開発計画)が毎年ユース世代を対象に実施している社会起業コンテスト「ソーシャル・イノベーション・チャレンジ」からアイデアを得た企画。世界の社会問題の解決にビジネスの視点からアプローチし、新たなビジネスモデルの実現に挑戦する若者を応援する取り組みです。
今回は「世界難民の日」に合わせて、難民問題をテーマに、ワークショップ形式でビジネスモデルづくりを行うことに。会場には学生や社会人などユース世代の約20人が集まり、また、オンラインでも配信されました。
世界で故郷を追われる人が1億2,000万人に達し、難民問題が長期化・複雑化しているいま。その解決の糸口として、日本政府も推進している「人道・開発・平和の連携(HDPネクサス)」「女性・平和・安全保障(WPS)」について学ぶことも、このイベントのもうひとつの目的です。
冒頭、ユースなんみんプラットフォーム代表の有田真彩さんが、世界の難民問題の現状とユースが実施する取り組みについて発表。「難民という漢字から、どうしても“困難な状況にある人”というイメージが強いが、実際に私が活動を通じて出会った人々は困難に立ち向かう強い人ばかり。そんな人たちと共に生きていく社会をつくりたいと思って活動している」と話しました。
続いて、ハジアリッチ秀子UNDP駐日代表が、HDPネクサスのアプローチについて、UNDPがアフリカで実施する事業を事例に解説しました。「人道支援、開発支援、平和構築、どれが欠けても、私たちの未来は遠ざかっていく。私たちができることは、一つひとつの事業を振り返り、教訓を共有し合いながら取り組みを進めていくこと」と訴えました。
また、過去の「ソーシャル・イノベーション・チャレンジ」の受賞者を代表して、中田渉さんと白石エリンさんより、それぞれが開発したビジネスモデルの紹介、その実践を経て得た学びについての共有がありました。そして、今回のイベントのモデレーターでもある社会起業家の坂下裕基さんは、自社が取り組むシステム開発の分野で勝ち残っていくために、人権問題にからめてどうビジネスの価値を高めていくか、そのノウハウを紹介しました。
後半のワークショップでは、参加者が4つのグループに分かれて、難民に関連するビジネスモデルをつくりました。そのうえで活用したのが「ビジネスモデルキャンバス」。ビジネスモデルを可視化するためのフレームワークで、価値提案、顧客との関係、チャネル、収益の流れなど、9つの要素をキャンバス形式で埋めていく手法です。
そして、それぞれのグループからは、難民の未来と自立への道を切りひらいていくために、創意工夫あふれるアイデアが生まれました。以下はその概要です。
■難民の人材派遣会社を立ち上げ、難民の就業・雇用に必要なサポートを提供。難民のスキルと企業のニーズのマッチングを行う。
■難民の銀行口座開設をサポート。手続きや必要なサポートをスムーズに行うことができるアプリを開発する。
■難民の小中学生の給食支援。避難先でも文化や宗教に合った食事がとれるようサポート、学校全体の食育にもつなげる。
■難民女性の能力強化。宗教上の理由から外に出る機会が少ない女性に対して、日本語の指導や職業訓練、仕事のあっ旋などを行う。
最後に、UNHCR駐日代表の伊藤礼樹が「この仕事に30年以上携わっているが、政府から資金提供を受けて支援するだけでは到底足りない、難民支援の現場でのニーズはふくれあがっている。若い皆さんの力とアイデアで、ビジネスと難民支援をどんどんつなげていってほしい」とエールをおくりました。
本イベントの様子は、UHHCR駐日事務所公式YouTubeでも公開しています。こちらもぜひご覧ください。
本イベントの様子は、UHHCR駐日事務所公式YouTubeでも公開しています。こちらもぜひご覧ください。
「ソーシャル・イノベーション・チャレンジ日本大会2024」は、10月11日(金)正午まで応募を受け付け中です。今回は新たに「UNHCR賞」が設けられ、難民問題をテーマにしたビジネスモデルも幅広く募集します(くわしくはこちら)。