ジリアン・トリッグス国連難民高等弁務官補(保護担当)は、2019年に就任後初となる訪日(2022年12月19日~22日)の総括を日本記者クラブで行いました。
まず冒頭で、UNHCRで保護を統括する立場として、日本の政府や自治体、企業、市民社会そして日本に定住する難民などさまざまなアクターと対話や意見交換をすることができ、非常に有意義な訪日であったと話しました。
トリッグス高等弁務官補は「日本はこの数年、国際的に保護を必要としている人々への扉を広げている。これは大変素晴らしく、前向きな変化だ」とし、アフガニスタンやミャンマー、ウクライナなどから日本に避難してきた人々への日本の対応を評価しました。
初日に訪問した千葉市では、ミャンマーとウクライナから避難してきた人々との対話を通じて、自治体や企業の努力により、難民の自立に向けた基盤が整ってきていること、子どもは学校に通うことができ、就労を通じて地域にも貢献しようと奮闘している姿などを見ることができ、大変心強く感じたと話しました。
トリッグス高等弁務官補は、UNHCRが戦略として掲げている「難民に関するグローバル・コンパクト」でも強調されているように、難民支援には“社会全体での取り組み”が必要不可欠であることをあらためて強調。日本の第三国定住の拡大を歓迎するとともに、その他にも教育などを通じた補完的受け入れの強化や従来の受け入れの拡大など、故郷を追われた人々の保護の道筋がさまざまなアクターにより広がっていくことを期待したいと伝えました。
また、UNHCRは2021年7月に出入国在留管理庁と協力覚書を締結していることにもふれ、それに基づいて、今後も両者で協力関係をさらに強化していきたいと訴えました。
また、今回の訪日では無国籍の問題も重要なトピックの一つとして挙げられ、政府や他のステークホルダーと活発に意見交換を行ったことも紹介しました。特にフィリピン残留日系人の国籍の確認については、対象者の高齢化も進んでいることから早急に解決が求められているとし、政府などによって、解決に向けた取り組みが進んでいることも認識していると話しました。
また、政府には無国籍条約への加入の検討をはじめ、国籍認定のより一層の適正化や無国籍認定手続きの設置などの要望を伝えたとし、UNHCRが2024年までに目指している無国籍ゼロの達成に向けて、UNHCRとしても日本をサポートしていきたいと訴えました。
2023年、日本は、G7サミット(主要国首脳会議)のホスト国、国連安全保障理事会の非常任理事国入りと、国際的にも大変重要な年を迎えます。これらに加えて、来年12月の「グローバル難民フォーラム」の共同議長国にも決定していることが紹介され、日本は共同議長国として難民支援においてリーダーシップを発揮することが重要であると訴えました。
最後にトリッグス高等弁務官補は、世界各地で深刻化する難民や無国籍の課題には国際協力なしには取り組むことができないとし、人道大国としての日本のリーダーシップへの期待を強調しました。