2017年8月にミャンマーの少数民族ロヒンギャが、70万人を超える規模でバングラデシュに避難して5年がたちます。それ以前にもすでに数十万人のロヒンギャがバングラデシュに避難していますが、避難生活は長期化しています。
UNHCRはロヒンギャ難民に対して、資金面でのサポートに加え、将来に向けた解決策が確保されるよう、さらなる取り組みが必要であると訴えます。
この人道危機を受けて、バングラデシュ政府と地元のコミュニティは、今や世界最大規模といわれるコックスバザールの難民キャンプで、支援団体と連携しながら、避難してくる人々に対して迅速な支援に取り組んできました。
5年たった今、ロヒンギャ難民の多くは、安全、尊厳がミャンマーで確保され、持続的な帰還が可能になり、移動の自由、身分証明書や国籍の取得、各種サービス、収入を得る手段にアクセスできるようになれば、故郷に戻りたいと話しています。
約100万人のロヒンギャ難民は密集した空間で避難生活をおくっており、日常的に人道支援に依存し、資金の減少によりさらに困難が増しています。人道分野の複数の調査において、共通のニーズは、適切な栄養、シェルター資材、衛生施設、生計向上の機会が主に挙げられています。より良い未来を求めて、危険な船旅を選択する人もいます。
女性、子ども、障がい者は特に、保護のニーズが見過ごされがちです。子どもや女性に対する暴力、特にジェンダーに基づく暴力などのサバイバーは、スティグマによって声なき存在とされ、法的、医療、心理社会的などのサポートへのアクセスがない場合も多くあります。
また、教育、技術向上、生計向上の機会に対する支援も強化すべきです。これらの活動は、難民の最終的な帰還のための準備であると同時に、バングラデシュで安全かつ生産的な生活を送るためにも役立ちます。
バングラデシュのロヒンギャの子ども約1万人は、ミャンマーのカリキュラムで、ミャンマー語で学べる教育を受け始めており、これから持続的かつ幅広くミャンマーのカリキュラムへのアクセスへの支援が必要です。これは、フォーマル教育に向けた大きな一歩となり、以前は学びの機会がなかった高学年の子どもたちのギャップを埋めることにもつながります。
UNHCRは国際社会に対して、青少年、成人のロヒンギャ難民が、職業訓練、能力向上の機会などの技術を磨く機会を得ることができるよう、さらなる支援を呼び掛けています。これは、難民がコミュニティに貢献し、バングラデシュで尊厳をもって生活し、なによりも、ミャンマーに安全に自主帰還できた時の生活再建に備えることにもなります。
国際社会からの支援は、ロヒンギャ難民の命を守るための保護と支援に必要不可欠ですが資金は不足しています。2022年の計画では、ロヒンギャ難民、受け入れコミュニティを含む140万人以上に対して、8億8,100万米ドル以上が必要ですが、これまで調達が完了しているのは49%、4億2,620万米ドルです。
ロヒンギャの人々がこれ以上、故郷を追われることで苦しい生活を余儀なくされることがないよう、安全かつ尊厳を保ち、持続的に自主帰還が可能となる状況が整うよう、国際社会により、政治的対話と外交的な取り組みを強化するための努力がもっとなされるべきです。
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