2018年12月末に国連総会で採択された「難民に関するグローバル・コンパクト」(Global Compact on Refugees:GCR)の理念に基づき、日本では難民支援に携わるステークホルダー間での情報交換が活発に行われています。
その一環としてスタートした「MSC(Multi-Stakeholder Consultation)勉強会」。これまで教育や雇用をテーマに3回にわたり実施されてきましたが、この数カ月のアフガニスタンでの人道危機を受けて、第4回を9月末にオンラインで緊急開催。難民支援に携わる日本のステークホルダーが一堂に会し、「人道危機に直面するアフガニスタン〜日本にできることは〜」をテーマに議論、情報交換を行いました。
第一部では、UNHCRアジア太平洋地域局より、この数カ月のアフガニスタン情勢と難民の状況、UNHCRの取り組みについて説明がありました。今年に入ってから50万を超える人が国内で移動を強いられていることから、緊急支援物資の配布をはじめ、特に高いリスクにさらされている女性・女児への支援の強化、国境の開放を含めた周辺国との連携が急務であるとして、アフガン難民の受け入れを含む各国からのさまざまな形の支援が大きな役割を果たしていくとの言及がありました。
続いて上智大学の東大作教授から、メディア、研究者としてのアフガニスタンとの関わりから得た知見が共有されました。現在の治安はいったん落ち着きを見せている一方、アメリカの経済制裁による影響もあり貧困や格差が広がっており、国内のアフガニスタン人への対応も早急に議論される必要があるという訴えがありました。
また、現場で活動を続けるNGOを代表して、シャンティ国際ボランティア会(SVA)が発表を行いました。この20年で妊産婦や子どもの死亡率は減少、就学率も10倍近くの増加がみられているものの、今回の人道危機による女性の就労や女子教育への影響が懸念されること、新型コロナウイルス対応も引き続き活動の重要な部分を占めていることなどの紹介がありました。
さらに、NGOが活動を継続していくうえで、女性スタッフの安全確保や銀行口座からの現金の引き出し、スタッフの国外退避など課題も多く、他機関、タリバン側との調整も重要になってくると指摘がありました。
第二部では、日本での難民受け入れと支援についての情報共有、意見交換が行われました。
なんみんフォーラムの発表では、加盟23団体、UNHCRなどと連携しながら、アフガニスタン関連の問い合わせに対応しており、家族や親族の呼び寄せ、難民認定についての相談が増えていること、うち3団体による「アフガニスタン出身者を含む庇護希望者への迅速な保護等を求める声明」などについての説明がありました。
また、千葉大学でアフガン人を含む外国人の調査を行っている小川玲子教授からは、日本でも「人間の安全保障」の概念自体は定着しているものの、実際に人道危機が起こった際の政策には改善の余地があるとして、政府による対応の迅速化と特例化を求めました。
日本の大学で学ぶために来日したアフガニスタン留学生より、9月の卒業後も帰国できていないこと、卒業後は日本での学びを生かしてアフガニスタンに貢献するという夢も、現在の混乱の中では就職も難しく、自身と同じ環境にあるアフガン人の若者も多くいるとの声が共有されました。
最後に、NGOでアフガン支援に携わった経験もある谷合正明参議院議員から、アフガン人の退避や人道支援アクセスの確保に加え、在留アフガン人への対応、第三国定住などを通した受け入れについて、日本としても検討を続けていくべきであり、そのうえでもMSC勉強会のようなステークホルダーの協議の場は非常に重要な役割を果たすというコメントがありました。
今もなお、多くの人が故郷からの避難を余儀なくされ、国際社会からのさらなる支援を必要としているアフガニスタン。UNHCRは一人ひとりの命を守り、尊厳ある生活をおくることができるよう、さまざまな分野のステークホルダーと連携しながら取り組みを進めていきます。