UNHCRは今後10年間で無国籍をなくすための「#IBelongキャンペーン」を開始しました。無国籍者は国籍を持たず、そのために人権を基盤とした保護を受けられない人々のことを指します。
無国籍者は世界中に1000万人以上いると見られており、10分に1人無国籍の子どもが生まれています。無国籍者は本来国家が国民に付与する権利やサービスへのアクセスを持たない場合が多く、様々な問題に直面します。
「無国籍であることは、教育や医療サービスを受けられず、正規雇用の機会も与えられないことを意味する。移動の自由も、将来の見通しも立たたない状況は、人間らしい生き方が否定されていると言える。」
アントニオ・グテーレス高等弁務官は、アンジェリーナ・ジョリーUNHCR特使をはじめとした20人以上の著名人とともに書簡を発表し、無国籍をなくす意義を訴えました。
無国籍状態に陥る理由の多くは、民族、宗教、ジェンダーに基づく差別です。ここ3年間で無国籍に関する2つの国際条約(「無国籍者の地位に関する1954年条約」「無国籍の削減に関する1961年条約」は、世界中の無国籍者を保護し、無国籍を防止・削減に向けたカギとなる法文書です。各地域の諸条約の基準や国際人権法によって補完されていはいるものの、上記2つの無国籍条約が無国籍に特化した国際法の枠組みとなります。)への加入国が増えた一方で、紛争を逃れた難民が避難中に出産し、出生証明書を得られずに子どもが無国籍者になるケースが増えています。
無国籍をなくすという政治的な強い意志によってこの問題は解決されるという思いを込め、UNHCRはこのキャンペーンを2024年まで10年間継続して行います。
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<追記>
■#IBelong キャンペーンとは■
「無国籍根絶のためのグローバル・アクションプラン」で掲げられている10の行動計画のうちの一つです。2014年にUNHCRは向こう10年での無国籍根絶を掲げた「#IBelongキャンペーン」を立ち上げており、このアクションプランでは、各国に対して以下の目標達成に向けた取り組みが提示されています。
アクション1:既存の無国籍者集団の状況を解決する
アクション2:子どもが出生による無国籍とならないようにする
アクション3:国籍法によるジェンダー差別を撤廃する
アクション4:差別的な理由による国籍の否定、喪失、剥奪を防止する
アクション5:国家承継における無国籍を防止する
アクション6:無国籍者たる移住者への保護的地位を与え、帰化を容易にする
アクション7:無国籍の防止のため、出生登録を確保する
アクション8:国民としての要件を満たす者に対し、国籍を証明する書類を発行する
アクション9:無国籍者地位条約・削減条約への加入
アクション10:無国籍者についての数的・質的データを向上させる
「難民に関するグローバル・コンパクト」でも本キャンペーンへの協力の必要性がうたわれており、「移住に関するグローバル・コンパクト」でも無国籍を根絶する重要性が認められています。また上記の目標の達成は「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にも不可欠です。2021年8月末時点で、10年の間で、80万人を超える無国籍者が国籍を取得・確認し、無国籍でなくなったことが報告されています。