東京2020オリンピック競技大会が閉幕しました。史上2回目の出場となるオリンピック難民選手団。さまざまな困難を乗り越えて代表の切符をつかんだ29人の難民アスリートたちが、世界の舞台で全力を尽くして競いました。
新型コロナウイルス対策のためほとんどの会場が無観客。しかし、故郷を追われながらも、自分を信じて努力を続けてきた難民アスリートを応援したいと、日本各地の若者がアイデアを出し合いました。
「言葉は通じないけれど、千羽鶴なら、私たちの想いを届けられると思いました」。そう話してくれたのは、陸前高田市立高田第一中学校の松田穂乃実さん(中3)。この夏、2016年リオ五輪に続いて難民選手団の代表に選ばれたローズ・ナティケ選手(陸上女子800メートル)に、生徒たちから千羽鶴が贈られました。
高田第一中とローズ選手のつながりは2年前。2019年、国際NGO AAR Japan(難民を助ける会)の招待でローズ選手が来日し、高田第一中を訪問したことがきっかけでした。ローズ選手は生徒たちの前で、南スーダンの紛争から逃れた時のこと、ケニアのカクマ難民キャンプでの生活についてなど、難民としての人生について話してくれました。
オリンピアンのローズ選手による“走り方教室”も開かれました。「実は走るのは苦手なんですが、ローズ選手と一緒に走れたのは楽しかったです。ストレッチの仕方も教えてもらいました」と菅野愛海(あみ)さん(中3)は話します。
ローズ選手との交流を通じて、「芯のある、強い女性だと感じました」と熊谷汐音(しおん)さん(中3)。生徒たちのほとんどが、難民問題について学ぶのは初めてでしたが、2011年の東日本大震災を経験し、津波で家が流されたり、大切な家族や友人を失った経験のある生徒たちは、自身とローズ選手の境遇を重ねて見ていたようです。
「震災が起きて、それまで楽しく過ごしてきた空間が、一瞬で壊されてしまいました」と熊谷さん。家族が多く、物資が足りずに大変だったことが記憶に残っているという松田さんは「いろいろな人の助けがあって、ここまでこれました」と振り返ります。
難民としてさまざまな困難を経験したローズ選手と過ごした時間は、生徒たちの心に大切な思い出として刻まれていました。そして、ローズ選手が東京五輪への出場が決まったことを知り、応援のメッセージを届けたいという声が上がりました。
3年生全員、一人ひとりが想いを込めながら千羽鶴を折り、約2週間かけて完成。その写真を受け取ったローズ選手は、「美しい千羽鶴を本当にありがとう。また陸前高田の皆さんに会いたいです」と返しました。選手村に直接届けることはかないませんでしたが、ローズ選手は海を越えて千羽鶴が届くのを楽しみにしています。
「この先、難民の人と会う機会があったら、その人のこと、その国のことをまずしっかり勉強したいです」。生徒たちはそう笑顔で話してくれました。
SNSを通じて、難民アスリートについて積極的に情報発信を続けてきた大学生もいました。日本各地で難民支援に取り組む大学生のプラットフォーム「YouthxUNHCR for Refugees」は、難民選手団応援企画として、アプリ開発などを通じて学生を支援する団体AMOと連携し、ウェブアプリ「Fly-Your-Message」を通じて、日本、そして世界から難民アスリートへのメッセージを集めています。
この企画に携わった秋田国際大学3年の篠倉なつみさんは、オリンピック開催期間中には競泳やテコンドーをテレビで観戦し、難民アスリートを応援していたと言います。「選手の皆さんはとてもかっこよかったです!」。
世界で8,000万人を超える難民の代表として参加した難民選手団。その姿が世界中で放送されることで、日本、そして世界中で難民問題への意識が高まってほしいと篠倉さんは話します。
「大学生の多くは、難民問題にふれる機会がそれほど多くありません。難民選手団は学びのきっかけになると思いますし、同じ世代の若者が難民問題に関心を持ち、支援の輪を広げられるよう、私のような学生も行動を起こしていくことが大切だと思います」
Fly-Your-Messageでは、引き続き難民アスリートへのメッセージを募集しています。メッセージの投稿はこちらから!
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