シリア難民のモハメドの職場は、カナダにある企業Bonfire。レバノンに逃れて8年がたったころ、ソフトウェア開発者として就職への切符をつかみました。
難民は自身のスキルを生かして働くことができ、企業は有能な人材を雇用できる―。このまさにwin-winの仕組みを作ったのが「Talent Beyond Boundaries(TBB)」。モハメドをBonfireへの就職に導き、企業と企業が必要とするスキルを持つ難民のマッチングを行う団体です。
TBBでは、レバノンとヨルダンで、IT、エンジニア、貿易、経理、医療の分野で1万人を超えるシリア人プロフェッショナルを登録しています。その多くは仕事に就くことができず、スキルが使われないままです。
移民全体の5割以上(2019年)は、なんらかの経済プログラムを通じてカナダに移住しています。しかし、難民の多くはこういった仕組みにアクセスできません。スキルや教育がないからではありません。有効なパスポートがないなど、基本的な条件が“壁”となっているのです。
難民が自身のスキルを生かし、労働者として移住する可能性を試すために、カナダ政府は試験的に「Economic Mobility Pathways Project」を立ち上げました。モハメドはこのプロジェクトの第一号の成功例です。
「知識もある、スキルもある、でもそれを生かす場がないのです」。モハメドはレバノンにいる何千もの難民のプロフェッショナルについてそう話します。「コミュニティにも貢献しうる存在。なぜその力、難民の力を使おうとしないのでしょうか」。
「難民に関するグローバル・コンパクト」でも同じ疑問が投げ掛けられ、難民が法律にのっとって第三国に移動できる新たな道をつくり、難民の脆弱性のみを基準に選定する第三国定住を超えた取り組みづくりが推奨されています。
モハメドのケースのように、今後も能力ある難民とカナダの雇用のニーズとマッチングが行われ、就労を通じた難民保護、自立への機会が開かれることを期待しています。それは、難民に革新的な解決策を通じて希望となり、受け入れコミュニティも難民の才能によって豊かになるでしょう。
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