イラク
アンジェリーナ・ジョリーUNHCR特使はイラク、ドホーク県のクルディスタン地域に避難しているシリア難民とイラクの国内避難民を訪問し、イラク国内にいる難民、避難民約330万人への支援の意志を伝えるとともに、その窮状を国際社会に訴えた。
ジョリー特使は2012年9月にイラクを訪問したが、その後戦闘激化によってシリアとイラクにおける人道危機は規模も、深刻さも増している。「私が2012年にイラクを訪れた後、人道状況が悪化したのを知り大変ショックを受けています。イラクは多くのシリア難民を受け入れてきました。また2014年は200万人が新たにイラク国内で避難を強いられました。罪のない人々が安全を求め、避難場所を転々としているのです。」
UNHCRはパートナー団体とともに危機の対応にあたっているが、冬の寒さに耐え、ありあわせのシェルターで避難している人がイラク国内に33万人散在して生活している状況である。
25日、ジョリー特使はドホークから車で40分ほどの町カンケにある国内避難民の避難地域を訪れた。ここでは昨年8月初旬にシンジャールから避難してきたヤジディ教徒2万人が生活している。ジョリー特使は、監禁されながらも 脱走して暗闇を徒歩で逃れてきた避難民や、拘束を解かれて避難してきたばかりの女性などの話に耳を傾けた。誘拐や収容、脱走といった経験、また夫や息子、娘が収容されている人、家族と一切連絡がとれなくなってしまった人などの苦難に満ちた話を聴いたジョリー特使は「誘拐や搾取の対象となり、それでもなんとか生きるために苦難を乗り越えたあなた方の苦境を知るにつれ、手が差し伸べられていない現実を知りました。この大規模な危機への対応が追いついていません。国際社会からの一層の支援が求められています。」と訴えた。
ここ半年間でイラク政府、UNHCRとパートナー団体はイラク国内に34ヶ所のキャンプを設営する(設営中も含む)などの活動が行なってきた。その一方で、資金不足により暴力や人権侵害の被害者へ支援は縮小傾向にある。UNHCRが提示する2015年度イラクの国内避難民支援の活動予算5億5600万米ドルのうち集まっているのは31%だ。
イラクのクルディスタン地域には難民、避難民あわせて90万人が生活しており、受け入れコミュニティのインフラや教育機関などに影響が出ている。
25日、ジョリー特使は以前訪れたドミズ難民キャンプにも訪れた。ここでは現在5万人以上の難民が生活している。ジョリー特使はシリア紛争が5年目に入るのを受け「シリア紛争は、ここイラクをはじめ、シリア周辺地域に大きな影を落としています。今求められているのは、暴力の連鎖を断ち切るための国際社会のリーダーシップと恒久的平和合意に向けた策を見出すことです。」と訴えた。
イラク訪問を終えたジョリー特使は「あまりに多くの罪の無い人々がシリア紛争の犠牲となっています。人質となり殺害されたと伝えられている日本人、湯川遥菜さんとその御家族をはじめ、この紛争の犠牲となった多くの人々に深い哀悼の意を表します。」と語った。
これまでにシリアから周辺国(トルコ、レバノン、ヨルダン、イラク、エジプト)へと逃れた難民は380万人にのぼり、シリア国内では760万人が避難を余儀なくされている。イラク国内では310万人が避難生活を送っている。
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