2週間にわたってパリで開催されたスポーツの祭典は、セーヌ川での雨の開会式に始まり、難民選手団初のメダル獲得など、多くの喜びと誇りをもって幕を閉じました。
難民選手団は、故郷を追われたアスリートがスポーツの最高峰で才能を発揮できるよう、国際オリンピック委員会(IOC)とオリンピック難民財団(ORF)により、UNHCRのサポートのもとに設立されました。
ケリー・クレメンツ国連難民副高等弁務官は、閉会式に出席した難民選手団の勇姿を目にし、「ここにいる難民アスリートたちは、想像しがたい困難を乗り越えてきました。そんな彼らの成功の姿は、難民が夢を追うことを支援することで達成できることがあるのだと、世界にあらためて示してくれました」と話しました。
また、ORFのジョジョ・フェリス会長も、「難民選手団の37人の難民アスリートは、この歴史的な大会を終えて、成功につながる機会があれば達成できることがあると、再確認させてくれました」とコメントしました。
ボクシング女子75kg級のシンディ・シンディ・ヌガンバ選手は、難民選手団結成から初となるメダルを獲得、表彰台に上がりました。しかし、ヌガンバ選手の銅メダル獲得という歴史的成功は数ある素晴らしい試合の1つにすぎません。
陸上競技では、ドミニク・ロバル選手が男子5,000m決勝でメダルまであと1秒、4位という結果を残しました。また、ペリナ・ロクア選手とジャマール・アブデルマジ選手は、女子800mと男子10,000mでそれぞれ自己ベストを更新しました。
カヌー・スプリントでは、難民アスリート3選手が準々決勝に進みました。フェルナンド・ダヤン・ホルヘ・エンリケス選手が男子カナディアンシングル1,000m、サイード・ファズルラ選手が男子カヤックシングル1,000m、サマン・ソルターニ選手が女子カヤックシングル500mで健闘しました。
しかし、結果がどうであれ、世界で故郷を追われた1億2,000万人を代表して掲げた旗のもとに、37人の難民選手団のアスリートすべてが、パリ2024オリンピック競技大会の12競技で素晴らしい決意と勇気を見せてくれました。
2021年に開催された東京大会には、29人の難民アスリートが難民選手団として出場し、その中には、今回パリで難民選手団の団長としてチームを率いた、自転車競技のマソマ・アリ・ザダ選手もいました。パリ大会の開会式では、難民選手団の旗手は、ボクシング女子のシンディ・ヌガンバ選手とテコンドー男子のヤハヤ・アルゴタニ選手が務めました。
閉会式では、陸上女子のファリダ・アバロゲ選手とテコンドー男子のカスラ・メヒディポーンジャド選手が難民選手団の旗手を務め、ヌガンバ選手は、フランス代表の競泳男子のレオン・マルシャン選手を含む各大陸を代表する選手とIOCのトーマス・バッハ会長とともに聖火を壇上で吹き消し、オリンピックは閉会しました
今回、IOC旗を掲げて世界の舞台に立った難民選手団以外にも、たとえ故郷を追われたとしても、それぞれの場で機会と支援があれば高いレベルに達することができること、難民の強さとレジリエンスを体現した選手たちもいます。
たとえば、東京で難民選手団として出場したキミア・アリザデ選手は、パリではテコンドー女子57kg級でブルガリア代表として出場。ブルガリア初のテコンドーのメダルとなる、銅メダルを獲得しました。
また、南スーダンのバスケットボール男子代表は、UNHCRのサポーターのウェンエン・ガブリエル選手を含む元難民で構成されており、パリではアフリカ大陸を代表して出場。強豪ぞろいの予選リーグでプエルトリコに勝利、セルビアとアメリカに惜敗しました。
開会式からすべての試合、また、自己ベストや表彰台での結果などを通じて、難民選手団は、世界のすべての故郷を追われた人に勇気と希望を与え、スポーツの力をまさに証明しました。
クレメンツ副高等弁務官は、オリンピックの聖火がパリで消えた時から、難民選手団の活躍はレガシーとなり、これから私たちの人生に影響を与え続けるでしょう」と締めくくりました。
▶原文(英語)はこちら