フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、高等弁務官として9回目となる訪日(2024年11月26日~29日)の総括を日本記者クラブで行いました。
現在、世界では紛争や迫害により、日本の人口とほぼ同じ、約1億2,300万人が故郷を追われています。グランディ高等弁務官は今回の訪日について、世界各地で情勢不安や複数の人道危機が続くなかで、故郷を追われた人々を守り支えるために、日本のステークホルダーとの連携がますます重要になっていると説明。「UNHCRはこの1年で約40回の緊急事態宣言を行い、従来の10件程度から急増している」とし、紛争の長期化や暴力の激化が民間人に残酷な影響をおよぼしており、「罪なき人々が大きな代償を払っている」と強い懸念を示しました。
その一例として、ウクライナでは、ロシアの爆撃によるエネルギーインフラへの壊滅的な被害を受けたことから、UNHCRは冬期を見据えた支援活動に注力しており、国際社会からの支援強化が必要となっていると訴えました。そのなかで、日本はウクライナから避難した約600万人のうち2,000人以上を受け入れており、この寛容な取り組みは特筆すべきであると評価しました。
また、レバノンでは、停戦合意が成立したものの、紛争再発の可能性が依然として残されており、レバノン国内で避難を強いられている人々、レバノンにいるシリア難民に対する支援のニーズは引き続き高く、日本政府が迅速に決定した緊急支援に深い感謝の意を示しました。
続いて、国際社会で忘れられがちであり、日本の人々にも関心を持ってほしい人道危機として、スーダンとミャンマーを挙げました。
スーダンでは、約2,000万人が紛争の影響を受け、うち1,200万人が国内外で避難を余儀なくされ、南スーダンやチャドなど隣国への難民流入が、これらの国々の脆弱な状況を一層悪化させていると指摘しました。他方、ミャンマーでは政府と少数民族勢力の対立が激化しており、特にロヒンギャ民族が深刻な被害を受けており、UNHCRは、バングラデシュに避難しているロヒンギャ難民への支援を強化していると説明しました。
このように世界的に人道危機への対応が増加するなかで、グランディ高等弁務官は今回の訪日を通じて、日本のさまざまなアクターの人道支援への取り組みから多くの希望と勇気を得たといいます。
日本は、難民や移民を受け入れる歴史が伝統的にはないものの、昨今ではウクライナからの難民受け入れや第三国定住プログラムなどを通じて、地域内で先進的な役割を果たしており、また、JICAが推進するシリア人留学生受け入れなど、難民に希望をもたらす重要な取り組みが行われているとして高く評価しました。
また、日本の民間セクターによる難民支援の積極的な関与についてもふれました。「今回面談した企業は、雇用機会の提供や資金援助、技術支援を通じて国際人道支援におけるリーダーシップを示しており、難民にとって実質的な利益をもたらしている」とし、日本社会全体の国際貢献の一環として位置付けられていると話しました。また、日本の市民社会や自治体による支援活動についても、国際社会で高く評価されているとしました。
「日本国内でもさまざまな課題があることは承知しているが、人道支援を犠牲にしないようにしてほしい」として、引き続き国際社会でリーダーシップを発揮し、難民問題の恒久的解決に貢献し続けてほしいと訴えました。
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