ファーストリテイリングは、「RISE(Refugee Inclusion Supporting Empowerment)プログラム」を通じて、世界各地のユニクロの店舗で、難民の背景を持つスタッフを雇用しており、日本でも63人(2020年4月末時点)が勤務しています。
今回は、入社4年目になるエチオピア出身のメコネンさんに、前回のインタビューから、約1年ぶりにお話を伺いました。
――前回のインタビューから、ご状況の変化はありますか
メコネン:日本国籍を取得して、日本人になりました。婚約者も来日することができ、一緒に暮らしています。彼女は働いたり、日本語を勉強したりして過ごしていて、日本の食事、文化や生活が気に入っているようです。私よりも日本語の上達が早いんですよ。
――コロナ禍の生活で大変だったことはありますか
メコネン:フルタイムで働けていますし、生活も安定しているので、コロナ禍でもとても幸運だと思っています。職場と家の往復で、外に出かけることもほとんどないですし、店舗では感染対策もしっかりしているので、安全面でも心配はしていません。ただ、婚約者を日本に呼び寄せるにはとても苦労し、コロナ禍でビザが取得できない、飛行機が飛ばないなど手続きを何度もしなおさなければなりませんでした。そういった意味で、新型コロナウイルスの影響を感じました。
――歴代の店長から、メコネンさんは500人ほどの店舗従業員の中で最も素晴らしいスタッフの1人であり、熱心な仕事ぶりに感謝していると伺いました。日本での生活はいかがですか
メコネン:まず、日本の空港に初めて到着して連絡を取った時から今日まで、UNHCRからのサポートに大変感謝しています。日本とアフリカの文化の違いに戸惑ったこともありましたが、日本の文化に適応しようと努力してきました。また、日本語があまり話せない時でも、落とし物をしたり、道に迷ったりした際に周りの人たちが助けてくれたということもありました。日本の人々、安全な環境、礼儀正しい文化など、すべてが好きです。
――今後、ユニクロで目指していきたいことはありますか
メコネン:店長になるにはまだ日本語力が不十分ですので、オンラインのコースを受講し、まずは日本語を上達させることが第一優先だと思っています。婚約者も来日できたので、一緒に学ぶことができ、モチベーションもより高くなりました。
――東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が始まります。どの種目に興味がありますか
メコネン:学生のころからオリンピック・パラリンピックで有名な選手たちを見てきました。スポーツ全般が好きですが、特にサッカーと陸上に興味があります。2016年のリオ五輪では、難民選手団も参加したと聞きました。
――難民選手団は2016年のリオ五輪に初出場し、東京が2回目となります。こちらが今回の難民選手団の一覧です
メコネン:東京大会ではエリトリア出身の選手もいますね。エリトリアは、かつてエチオピアと同じ国でしたし、名前の付け方などさまざまな文化を共有しています。彼らを誇りに思います。
――彼らに何かメッセージはありますか
メコネン:心から応援しています。そして多くの難民は私と同じように、「社会が難民を受け入れることで、世界は平和で一体感のあるものになり、難民は社会に貢献する」という思いを持っていると思います。
――東京2020オリンピック・パラリンピックでは、どの国を応援したいですか
メコネン:私はエチオピア出身の日本人ですから、日本とエチオピアどちらも応援していますし、どちらの国にも頑張ってほしいです。
――最後に一言、メッセージをお願いします。
メコネン: 日本での生活は楽しく、日本の文化に大変興味をもっています。世界中の人々が、日本のように平和な環境で暮らせることを願っています。また、ここで生活できることを大変うれしく、誇りに思います。
難民選手団をはじめ、難民が国際的なスポーツイベントに参加することを、メコネンさんはとても誇りに感じています。続いて、メコネンさんが働く店舗の入江 学(いりえ あきら)店長にお話を伺いました。
――難民のスタッフと働くことがもたらす店舗への影響はありますか
入江店長:難民のスタッフと働くことで、私たち従業員が世の中の「多様性」に初めて直面して、学ぶ機会になると思っています。さまざまな視点を学び、自分たちの考え方をあらためることがあったり、彼らができることとできないことを理解し、みんなで同じ目標に向かっていく。この経験によって、お客様に対して含め、さまざまな点で良い影響が出ると思います。
――難民のスタッフと店舗で働くことについて、どう思われますか
入江店長:ユニクロは「服のチカラを、社会のチカラに。」を理念のひとつとして掲げており、良い服を届けるだけでなく、できる限り社会に貢献をすることを考えています。難民のスタッフに働いてもらうことは、私たちの学びの機会にもなるので、お互いにとっていいことしかないのかなと思います。
――お互いに学び合うことができるのですね。ユニクロは難民のスタッフの雇用以外にも、”届けよう、服のチカラ”プロジェクトなどさまざまな社会貢献をされています。ユニクロの社員として、その活動をどう感じていますか。
入江店長:私自身として当然誇りに思いますし、加えて、私がカナダに行った際、企業が社会に貢献しているということが、お客様がその企業の商品を選ぶことにつながっていると感じました。ビジネスにおいて、社会貢献は必須になっているというように感じます。また、新型コロナウイルスの流行が、環境や自分の生活、仕事のやり方などさまざまことを考え直すきっかけになったと思います。このような状況の中で、日本社会での意識も大きく変わってきているように感じています。
――今後取り組んでみたい会社の社会貢献活動はありますか
入江店長:商品のリサイクルとして、お客様からお預かりした服を、現地の難民の方にお届けしたいという気持ちがすごく強いです。彼(メコネンさん)はエチオピア出身なので、エチオピアに一緒に行って、彼がこんなに元気に働いていることもお伝えできたらいいですね。また、他の従業員にもこのような活動を理解してもらう機会を作っていきたいと思っています。
――難民スタッフがいない店舗では、このような活動に対する感じ方は異なりますでしょうか
入江店長:難民の方に対する理解は少ないかもしれませんが、ユニクロでは障がいを持っている方も採用しており、本質的には全スタッフの考えは一緒だと思っています。それぞれのできることとできないことを理解し、みんなでサポートしますし、その人たちを理解しようという姿勢は、サステナビリティにつながる考え方なのではないかと思います。
――最後に一言、メッセージをお願いします
入江店長:RISEプログラムの取り組みについて、ユニクロは当然のこととしてやってきたのですが、お客様にも適切な形でもっとお伝えしていきたいと思っています。また、従業員にもこの取り組みについて伝えて、誇りを感じてほしいです。
RISEプログラムは、難民の人生のターニングポイントになっているだけでなく、ユニクロの店舗にさらなる多様性を生み出しています。
2020年4月末時点、世界8カ国のユニクロの店舗で、121人の難民のスタッフが働いています。出身地域や属性にかかわらず、同じ場所で働くスタッフとして、協力し合う文化が根付いているユニクロだからこそ、継続できている取り組みなのです。
UNHCRとユニクロのグローバルパートナーシップは、今年10周年を迎えます。今後も連携を強化し、「RE.UNIQLO」を通しての難民・国内避難民への服の寄贈や難民雇用、難民の生計向上支援など、さまざまな難民支援に取り組んでいきます。
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