本日、国際パラリンピック委員会(IPC)より、東京2020パラリンピック競技大会に出場するパラリンピック難民選手団(Refugee Paralympic Team:RPT)の代表6人が発表されました。パラ陸上、パラ水泳、パラカヌー、パラテコンドーの4種目で、難民アスリート(女1人男5人)が、この夏、世界の舞台で戦います。
パラリンピック難民選手団は、世界各地で紛争や迫害、人権侵害により故郷を追われた8,200万を超える人々、また、その中で障がいをもって生きる1,200万人の代表です。2012年ロンドンパラリンピックのパラ水泳アメリカ代表、キューバ出身の難民であるイレアナ・ロドリゲスさんが団長を務めます。
アンドリュー・パーソンズIPC会長は「世界中の皆さんには、この世界で最も勇敢なスポーツチーム、パラリンピック難民選手団をぜひ応援してほしい。スポーツを通じてどのような変化を起こすことができるのか、難民アスリートはまさにそれを示してくれる存在です。人生を変えるような痛みや苦しみ、安全を求めての避難、危険な旅路を経験し、その過程でいかなる困難に直面しながらも、今回代表となり世界の舞台に立つのです」と話します。
また「スポーツは障がいのある難民たちが社会と関わる力強いツールであり、パラリンピック難民選手団の発表はIPCにとっても感動的な瞬間です。2019年12月の『グローバル難民フォーラム』でも誓約したように、IPCはスポーツイベント・競技会への難民の平等な参加を促進していきます」とメッセージをおくっています。
IPCはUNHCRと連携し、この機会にパラリンピック難民選手団の一人ひとりが自分の物語を通じて、故郷を追われた人の希望や刺激となる力強いメッセージを発信し、世界に注目される存在となるよう取り組みを進めます。難民があらゆる困難に直面するなか、障がいのある難民たちはとりわけ高いリスクにさらされ、あらゆる支援、サービス、機会へのアクセスでさらなる壁に直面しています。
UNHCR、IPCはパラリンピック難民選手団とともに、故郷を追われたすべての人が、障がいのあるなしにかかわらずスポーツの機会に平等にアクセスでき、誰一人取り残されることのない、インクルーシブで平等な世界の実現に向けて、世界的なコミットメントを呼び掛けます。その一例として、パラリンピック難民選手団の一人であるアバス・カリミ選手は、以前はUNHCR グローバルユース諮問委員会のメンバーとして、また今年就任したUNHCRの特別サポーターとして、障がいのある難民があらゆるレベルでスポーツにアクセスでき、社会から取り残されることがないよう積極的に啓発活動を行っています。
今回の発表を受けて、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は歓迎のコメントを寄せています。
「パラリンピック難民選手団に選ばれた6人のアスリートたちを祝福できることをうれしく思います。スポーツ分野で障がいのある難民のインクルージョンを推進していくうえで、UNHCRはIPCとの連携に大変誇りを持って取り組んでいます。難民アスリートたちは、個人として、そしてチームとして、世界中の難民たちに希望と刺激のメッセージを発信しています。彼らはエリートスポーツ、そして人としての人生そのものにおいて、難民と障がいのインクルージョンを推進する真の先駆者です。パラリンピック難民選手団の選手たちが示してくれる姿は、インクルーシブで平等な世界の実現に向けて大きな一歩になるでしょう」
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パラリンピック難民選手団のメンバーに選ばれた難民アスリートは以下の6人です。難民支援に取り組む音楽、スポーツ、文学、舞台、映画の各界のスター、UNHCRの親善大使が出演するメッセージビデオで発表されました。
■イブラヒム・アル・フセイン【シリア難民、ギリシャ・アテネ在住、パラ水泳】
コールドプレイのボーカリスト、クリス・マーティンにより発表
■アリア・イッサ【シリア難民、ギリシャ・アテネ在住、パラ陸上(こん棒投げ)】
ディズニー映画、ロキ・シリーズでも有名なイギリス人女優、UNHCR親善大使のググ・バサ・ローにより発表
■パルフェ・ハキジマナ*【ブルンジ難民、ルワンダ・マハマ難民キャンプ在住、パラテコンドー】
フランスのレジオン・ドヌール勲章を授与されたオペラ歌手、UNHCR親善大使のバーバラ・ヘンドリックスにより発表
■アバス・カリミ【アフガン難民、アメリカ・フォートローダーデール在住、パラ水泳】
『カイト・ランナー(邦題:君のためなら千回でも)』のベストセラー作家、UNHCRの親善大使で自身もアフガン難民のカーレド・ホッセイニにより発表
■アナス・アル・カリファ【シリア難民、ドイツ・ハレ在住、パラカヌー】
サッカー選手でUNHCR特別サポーター、幼少期にボスニア・ヘルツェゴビナの故郷を追われ、ドイツに最初に逃れたアスミル・ベゴヴィッチにより発表
■シャハラッド・ナサジプール【イラン難民、アメリカ・フェニックス在住、パラ陸上(円盤投げ)】
FCバイエルン・ミュンヘン所属、自身もリベリア難民であり、最近UNHCR親善大使に就任したカナダのサッカー選手、アルフォンソ・デイヴィスにより発表
東京2020パラリンピック難民選手団はIPC旗を掲げて戦い、開会式では最初の選手団として国立競技場に入場します。
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IPCはパートナー企業のサポートのもとに、東京2020パラリンピック競技大会に出場するパラリンピック難民選手団を支援しています。
・Airbnb ワールドワイドパラリンピックパートナー
2015年から社の理念を受けて、最初は“オープン・ホームズ”プログラム、現在はAirbnb.org、パラリンピアン体験を通じて難民のイニシアティブをサポート。パラリンピック難民選手団の主要パートナー
・アシックス IPCオフィシャルサプライヤー
東京2020パラリンピック競技大会でパラリンピック難民選手団の公式スポーツウェアを提供
・パナソニック ワールドワイドパラリンピックパートナー
2020年に向けて展開された「ビューティフルジャパン」プロジェクトの一環として、フォトブック『綾瀬はるか meets Beautiful Athletes』を出版。収益の一部はパラリンピック難民選手団の支援に充てられる
キャサリン・パウエルAirbnb体験部門責任者からのコメント
「パラリンピック難民選手団に選ばれた6人のアスリートにお祝いのメッセージをおくります。アバス、シャハラッド、アナス、アリア、イブラヒム、パルフェのそれぞれの選手のストーリーを読んだ時、一人ひとりがそれぞれ違う旅路を経験しており、でも、そこには共通に脅威があることが分かりました。壮絶な体験をしたアスリートたちを新しいコミュニティで受け入れ、彼らが自分の居場所を見つけ、人生を変える後押しとなった人たちがどれほどいたことでしょう。私は皆さんに、難民アスリートのことをもっと知り、Airbnbと一緒に応援してほしいです」
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橋本聖子 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長のコメント
「2016年のリオパラリンピックの初結成に続いて、東京2020パラリンピック競技大会にパラリンピック難民選手団が出場することを歓迎します。スポーツという競技を通じて、難民アスリートの努力、生き抜く力、人としての希望が世界に示され、平和への願いとともに、皆さんが最善を尽くして競技できることを願っています。私たちはIPCや関係自治体と連携しながら、すべてが難民選手団にとってスムーズかつ安全に進むようあらゆる努力をします」
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パラリンピック難民選手団はルードウィッヒ・グットマン卿のレガシーを受け継いでいます。グットマン卿は、難民として新しい故郷を見つけ、パラリンピック・ムーブメントという世界最大のムーブメントの一つを生み出すことで、自身を受け入れてくれた受け入れコミュニティに恩返しをしました。パラリンピック難民選手団はこのようなIPCによる過去の難民のイニシアティブが基盤になっており、2016年のリオパラリンピックの時には、難民と庇護希望者のアスリート2人が独立パラリンピック選手団として出場しました。
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イレアナ・ロドリゲス パラリンピック難民選手団団長のコメント
「パラリンピック難民選手団の代表に選ばれたすべてのアスリートを祝福します。この1年は難民アスリートにとっても特に厳しい年でしたが、彼らの人生においてこのような困難は初めてではありません。きっと、強い気持ちでベストを尽くし、東京2020パラリンピック競技大会で唯一無二のチームになるでしょう。世界中の障がいのある1,200万人の難民の代表として、すべての人に可能性があることを誇りをもって示してくれることと思います」
カレン・ファルカスUNHCR駐日代表のコメント
「パラリンピック難民選手団に選ばれた選手の皆さんにお祝い申し上げます。難民アスリートとしてのパラリンピック出場は史上2回目です。障がいのある難民は、差別や暴力、搾取などの高いリスクに時にさらされますが、そうした数多くの困難を乗り越え、この夏東京の舞台で戦うという夢もあきらめませんでした。UNHCRはIPC、そしてパラリンピック難民選手団の公式ホストタウンに登録された文京区とともに、この素晴らしいチームのサポートができることを光栄に思います」
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<IPCによる難民選手団発表に関するお問い合わせ>
<本件に関するUNHCRへのお問い合わせ>
UNHCR駐日事務所 広報官・守屋 03-3499-2042 / [email protected]
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