5年前、スーダンからヨルダンに逃れてきたワエッド(15)。当初は極度の人見知りで、家族以外とほとんど話すことがありませんでした。
それが今、人が変わったかのように、バスケットコートを走りまわり、仲間に声をかけながらスポーツを楽しんでいます。
「みんなと話したり、相談しながら練習をしています。チームのコーチ、キャプテンになったみたいで、とても楽しいんです」。バスケの練習でエネルギーを発散できることが、朝起きてからの楽しみだといいます。
ワエッドが変わるきっかけをつくったのが「リクレイム・チャイルドフッド(RC: Reclaim Childhood)」。スポーツを通じて少女たちのリーダーシップを育み、受け入れコミュニティと難民間の交流の促進を目指したプログラムです。毎年8歳から18歳の難民とヨルダン人500人ほどの少女たちに、野球、バスケ、ズンバなどのスポーツの機会を提供しています。
ヘッドコーチのネイヤズは、2013年にシリアから逃れてきました。これまで家事以外の仕事をしたことがありませんでしたが、2年前にRCに参加してから変わったといいます。
「自信を持つことの大切さを学びました。いつかシリアに戻る日が来た時、また一からスタートするために必要なものです」
コーチたちが大切にしているのは、まずは保護者との関係です。一人でも多くの子がプログラムに参加できるよう、家庭訪問を通じて信頼関係を築いています。そうすれば、少女たちが外の世界で生きてくうえで助けが必要になった時に、関連団体に紹介するなど、手を差し伸べることもできる関係にもつながります。
参加者は、選手もコーチも、ヨルダンに逃れてくるまでの経験のない人がほとんど。そこでRCでは、受け入れコミュニティーも巻き込んで、コーチの派遣を依頼しています。
このような活動の功績が評価され、2018年のナンセン難民賞の中東・北アフリカ地域の代表として、RCはファイリストまで進んでいます。
ヨルダンは現在、75万人近くの難民が登録されており、うち8割が都市で暮らしています。多くは2011年のシリア紛争の影響を受けて避難してきた人たちですが、イラク、イエメン、ソマリア、スーダンから逃れてきた人も一定数を占めています。
UNHCRは国籍にかかわらず、すべての難民が公平に保護、支援、サービスを受けることができることを目指した “one refugee”アプローチを推進しており、RCはまさにその好事例となっています。
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