ロシア、サンクトペテルブルク
今年2月ウクライナで対立が起こる前、ロシアの移住機関(FMS)は年に120件ほど庇護申請を取り扱ってきた。庇護申請者の大半がアジア、アフリカ出身者であった。
避難場所の提供などウクライナ出身者への支援を行なっているロシア赤十字社によると、現在一日平均約300人のウクライナ出身者がロシアの町に避難してくる。
ナタリア*もウクライナ東部からロシア第二の都市サンクトペテルブルクにたどり着いた何千人もの難民の一人だ。 ナタリアも他の難民と同様にサンクトペテルブルクに住む友人のもとに身を寄せている。 「その友人の親族も最近になって避難してくるようになったので、今後は友人宅を出て新しい滞在場所を探さなければなりません」 と彼女はUNHCRに語った。
こうした大量の難民の流入は、庇護申請の手続きを短縮させるという点においては、良い結果をもたらしている。 UNHCRは、ウクライナから逃れてきた庇護申請者だけでなく、中央アジア、中東、アフリカ出身の庇護申請者も同様の恩恵を受けられるよう期待している。 法改正によって、ウクライナ出身者の庇護申請とそれに伴う身体検査の手続きはより簡潔に、迅速に行なわれるようになった。ウクライナからロシアへ逃れた人はまず、一時的庇護の申請をする。通常、数日ほどで申請は受理され、ロシアに滞在し、保護を受ける権利が与えられる。
多くがそのままロシアにとどまることを考え、仕事先を探し、定住する準備を始めている。ナタリアは幸運だ。ナタリアの夫は既に技術者としての仕事を見つけ、現在初任給の支払いを待っている。ナタリアは友人宅を出たあと、避難所に滞在しており、現在は賃貸を探している。
多くの避難民は、厳しい生活を送っている。UNHCRのパートナーである赤十字社のサンクトペテルブルク支部は、ロシアの移住機関(FMS)や地方自治体、雇用先となりうる企業などと協力して、最も支援の必要な難民の保護にあたっている。
増え続けるウクライナからの避難民の存在は、サンクトペテルブルクの住民の難民問題に対する認知度を上げるという一面もあり、市民は団結して避難所の提供や支援物資の寄付などに取り組んでいる。
UNHCRと赤十字社サンクトペテルブルク支部は、この避難民に対する住民の理解がウクライナ以外からの避難民にも向けられ、彼らにも法的、社会的保護が与えられることを願っている。
サンクトペテルブルクに逃れてくるウクライナ出身者の大部分は、ウクライナに帰還する可能性は低いと考えている。「自国の軍が、私たちを攻撃してきたのです。彼らが政権を握るなら、戻りたくはありません」 とナタリアは語った。
*保護の観点で仮名表記
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