アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は毎年恒例の「性差別による暴力廃絶活動の16日間キャンペーン」の始まりを記念するセレモニーで、毎年世界でおよそ1500万人の少女の生活に影を落としている児童婚を非難した。そして、児童婚根絶に向けた活動はUNHCRの義務であり、そのために全力を尽くすと述べた。
今年の16日間キャンペーンでUNHCRは、「子どもの権利を守る:児童婚問題への取り組み」というテーマにもとづいて最終日の世界人権デー(12月10日)まで活動を行なう。グテーレス高等弁務官はこれまでのUNHCR職員の活動を称賛しながらも、依然として課題は残っていると述べた。
また、グテーレス高等弁務官はUNHCR職員に対して、「児童婚とは地域に深く根付いた慣習であるためUNHCRは市民社会、コミュニティーリーダー、医療や教育に関わる団体や政府機関などと協力し、児童婚の危険性、そして子どもが教育を最後まで受けることと、適切な年齢になるまで結婚を待つことの利点を広める活動を行なうことが重要だ」とメッセージを送った。このためには各国の政府と対談し、児童婚を法的に禁ずるよう要請しなくてはならない。そして、危機的状況にいる子ども達に様々な技術と職業訓練の機会を与え、同時に家族に収入が入るような支援活動を行なうことは児童婚防止につながると述べた。
高等弁務官は性およびジェンダーにもとづく暴力は性別による社会的地位の差との関係性が強く、少女の権利を守るには女性の全体的なエンパワーメントが重要だと語った。そして若くして結婚した少女に対する支援も重要だと強調した。児童婚は子どもの権利の侵害であり、子どもの将来に大きく影響することから、UNHCR職員たちに少女の権利の保護と教育へのアクセスを向上させる方法を見いだして欲しいと述べた。
児童婚はUNHCRが活動を行なっている国、特にアジア、アフリカ、中東などでも行なわれている。避難民や難民の中でも家を追われる以前に、児童婚は地域に根付いた風習であり、今でもその習慣が続いている。児童婚は貧困や経済的苦難を乗り越えるため、そして子どもを守るためには仕方の無いことだと感じている人もいる。
早すぎる結婚は子どもの人生に悪影響を与える。少年の場合でも、若すぎる年齢で結婚することで大人同等の負担が課せられ、教育が妨げられることもあるが、児童婚によって多大な犠牲を伴うのは主に少女だ。
18歳未満の少女は妻と母親になるには身体的にも精神的にも負担がかかりすぎ、また年の離れた男性と結婚することで不平等な力関係が生まれ、家庭内暴力や性的暴力の犠牲になることが多い。周囲の人には結婚後に教育を受ける必要はないと思われ、学校に行くことも許されない女の子も多い。これは、学ぶ機会と、同年代の子どもたちとの交流の機会が取り上げられてしまうだけではなく、夫に頼りきる生活を送ることになり、さらに虐待のリスクを高め、少女の将来の可能性が制限される。
若年妊娠は妊産婦の死亡率が高く、妊娠や出産による合併症の危険も高い。自身がまだ子どもなのに、子育てをするのは容易ではない。また、児童婚は法的な婚姻届が出されないことが多く、子どもの出産届けなどを出すのが難しくなる。
UNHCRはキャンペーンに向けて様々な活動を行なう。フィールドで活動している職員は子どもたちが児童婚に対する意見や体験などを絵にしたものを集めた。結婚したくないという意見が圧倒的に多い。子どもたちは自分の子ども時代を生き、勉強を続けることを望み、虐待を恐れている。
16日間のキャンペーンは1991年より国際的に取り組まれており、UNHCRと、パートナー団体、当事者、そしてその地域社会等が団結し、性およびジェンダーにもとづく暴力を無くすよう呼びかけている。
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