UNHCRと株式会社ファーストリテイリングは2011年にグローバルパートナーシップを締結した。アジアの企業で初めてとなるこのパートナーシップにより、ファーストリテイリンググループの傘下にあるユニクロではユニークな活動が展開している。例えば、日本に住む難民がユニクロ店舗に研修生として受け入れられたり、ユニクロ職員がUNHCRの難民支援の現場に派遣されるなど、人材交流・教育が可能となった。そして同年9月より開始したプログラムで、10月より4か月間、UNHCRのネパール・ダマク事務所に派遣された、2名のユニクロ社員に話を伺った。
社内公募の選考の結果、今回派遣が決定した2名のうち、古澤さんはユニクロの海外商売統括部、駒橋さんは渋谷道玄坂店の店長として勤務をしていた。それぞれ、ユニクロの実施する『全商品リサイクル活動』※については知っていたものの、難民についてはあまり詳しくは知らなかった、と応募当初のことを振り返る。しかし、会社のグローバル化や海外勤務への目標、学生時代から社会貢献に関心を持っていたなどのそれぞれの思いが、UNHCRのフィールドへの派遣制度の応募のきっかけとなった。
派遣が決まってから、それぞれの勤務地で引継ぎを終え、まずはUNHCR駐日事務所での研修を受けた。宮城県石巻市での衣料配布に従事し、ネパール・ダマク事務所での勤務を開始した二人は直接難民キャンプで難民と触れ合い、出発前まで思い描いていたイメージと違ったと語る。
「もっと弱いイメージがあったけど、キャンプで暮らす難民はとても前向きで、力強く毎日を過ごしていました。またダマクのキャンプでは、周辺の受け入れコミュニティーとの関係がとてもよく、上手に共存していると感じました。」そう語ってくれた駒橋さんは、積極的に難民たちと直接対話を続け、現地スタッフのサッカーチームにも参加したりなど、現地での生活にはすぐに馴染めた。そして途中からは「ネパールさん」とみんなから慕われるほどであった。
衣料配布は、1回目にUNHCRスタッフが中心となってダマクの難民キャンプ内で行われた。
2回目の配布は首都カトマンズで実施。ほとんどがブータン難民であるキャンプとは異なり、カトマンズではアフガン難民やイラク難民なども多くいた。3回目の配布は1回目で行き届かなかったキャンプ内の難民に配布。しかし、UNHCRスタッフではなく、古澤さん、駒橋さんが中心となって、難民と協力しながら配布を実施した。また滞在期間中、難民との対話によって生まれた古紙回収やおりがみ教室など、衣料配布以外での活動も実施。現地の人たちから大変喜ばれたことも報告した。
「衣料支援に留まらず、活動を拡大することができたのも、日本人特有の細かい気配り、心配りやマメさを忘れずに難民と触れ合うことができたからだと思います 」と語る駒橋さん。
頷きながら古澤さんは「難民と言っても、私たちと何も変わらず、同じ人間だということを実感しました。初めは言葉の壁や習慣の違いを感じたものの、積極的に自分たちから行動していくことで、次第に分かり合えました。日本人だからとか、ブータン人だから、ネパール人だからということはあまり関係なく、何事も話し合い、思いがあれば通じるのだということを実感しました。今回経験したことを日本に戻っても活かし、難民についてももっと知ってもらえるよう頑張っていきたいと思います。」と語った。
今回のユニクロ×UNHCRの派遣制度で配布された衣料は合計4万着。1万7000人の難民が衣服を受け取った。またユニクロでは新たに2名の社員が4月から開始する派遣制度のため、準備を進めている。
※ ユニクロの『全商品リサイクル活動』は2006年に開始、1200万枚を越える衣類を店頭でお客様から回収している(2011年12月時点)。日本国内の店舗で回収を開始したこの活動も現在では韓国、アメリカ、イギリス、フランス、シンガポールに拡大し、3月からは香港、台湾、上海市内も加わった。
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