スイス・ジュネーブ(6月20日)発
UNHCRは6月20日、移動を強いられた世界の難民の内の5分の4は発展途上国に受け入れられており、先進国では難民に批判的な感情が高まっており、国際支援の深刻な偏りが出ていることを報告した。実際に世界最貧国とされる国の多くに莫大な数の難民が受け入れられていることを2010年グローバル・トレンド(UNHCR統計報告)は示しており、上位3か国にパキスタンが190万人、イランが110万人、シリアが100万人が挙げられている。また一人当たり実質国内総生産(GDP)1米ドルドルに対し、難民710人を受け入れているパキスタンは経済的な影響も最も大きく、1人当たり実質GDP1米ドルに対し難民475人と247人を受け入れているコンゴ民主共和国とケニアが続く。比べて、先進国の中で最も多く難民を受け入れているドイツでは、59万4000人がおり、1人当たり実質GDP1米ドルに対し17人である。
2010年度の報告は総合的に観て、60年前にUNHCRが設立されたときの状況と明らかに変化している。当初UNHCRが取り組んでいた難民の件数は第二次世界大戦によって強制退去させられた210万人のヨーロッパ人であった。今日、UNHCRの活動は120か国に及び、自国から逃れ国境を越えた難民や国内で避難する国内避難民などを含んでいる。2010年グローバル・トレンドは世界中で4370万人もの人たちが移動を強いられていると示している。この数は、コロンビアや韓国の人口に相当し、スカンジナビアとスリランカの人口を合わせた数とも等しい。この数には難民1540万人(UNHCRの保護にある1055万とUNRWA(パレスチナ難民救済事業機関)に登録されている482万人)、自国の紛争により国内避難民が2750万人、庇護申請者が約85万人であり、内5分の1は南アフリカにいる。
特に深刻なのは、身寄りもなく、家族と離れ離れとなった1万5500人もの庇護申請者である。そのほとんどはソマリア人、アフガニスタン人の子どもである。また報告書は2011年におけるリビア、コートジボワールやシリアで起きた衝突により避難する人の数を含んでいない。「今日世界では、難民情勢や国際保護の規範が誤って認識されているのではないかと懸念しています」とアントニオ・グテーレス高等弁務官は述べた。「先進国は想定される大量の難民の流れに対して過剰な懸念を示しており、難民問題と移民問題を混同し、誤解している。 その一方で貧しい国が大きな負担を背負っている。」
今日まで長引いているいくつかの紛争を振り返ると、世界中で何万人という難民が増え続けていることが報告書からも理解できる。UNHCRは5年、もしくはそれ以上の長い年月にわたり避難生活を送り、解決策が見出せないままでいることを長期化する難民問題として定義する。2010年、UNHCRの支援対象者となる難民は720万人で、2001年以降最も多い。一方で、自国へ帰還した難民は19万7600人であり、1990年以降最も少ない。
30年以上避難生活を送っている難民もいる。1979年のソビエト連邦の侵略から最初に逃れたアフガニスタン人は、2001年と2010年には世界の難民の3割を占めている。イラク人、ソマリア人、コンゴ人、スーダン人もまた難民になってから10年近く経つ国の上位10か国に挙げられる。「希望を持てないならば、たとえ1人でも多すぎる」とグテーレス高等弁務官は訴えた。「世界はこの人たちを見捨ており、命の危険にさらしながら自国の安定が戻るまで待たせている。途上国はこれ以上の負担を背負うことはできず、先進国はこの偏りに取り組んでいかなければならない。そのためにも第三国定住の受け入れ枠を拡大していく必要があり、同時に難民が帰還できるよう長期化する紛争の平和への道筋を促進していかなければならない。」と加えた。
2010年の帰還民の数の減少にも関わらず、国内避難民(IDP)の数には動きがあった。2010年、290万人以上の国内避難民がパキスタン、コンゴ、ウガンダとキルギスタンを含む自国へ帰還した。しかし、これ程の帰還した数にも関わらず、国内避難民2750万人という数は過去10年の中で最大である。
さらにUNHCRが統計で数値化しづらいのが無国籍者や国籍により守られる基本的な保証が欠如している人である。2004年以来、徐々に無国籍者の数がを報告する国が増え続けているものの、無国籍者の定義と調査方法の違いから正確な数を計ることは難しい。2010年の無国籍者の数は、2009年に報告された数の半分だが、これらは各国間のデータ収集の方法の変更によるものが主な原因となっている。非公式な予測では、無国籍者の数は1200万人に達しているという。UNHCRは世界が無国籍者の苦境に目を向け、支援を促進するための世界的なキャンペーンを今年8月に実施する。
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