2月6日にトルコ南部とシリア北部を襲った大地震。その直後に避難してきたシリア人一家が、アレッポの旧市街、屋根のある市場の小さな店舗の中で、衣服や毛布にくるまり身を寄せ合っていました。シリア北部のこの地域を襲う極寒の冬をしのぐために、彼らが持っている防寒具はこれだけです。
今回の地震により、トルコとシリアでこれまで2万人以上が命を奪われました。今もなお、がれきの中で行方不明になっている人も多くいます。
この一家が避難しているのは、シリア北部アレッポのアル=ハリリ地区に急きょ造られたシェルター。どこも行くところがなく、地震で損壊した家には怖くてとても帰ることができません。
4人の子どもの父親のマゼンは、長年続くシリア危機の影響により、アレッポ近隣の街の自宅から避難して7年になります。
「早朝に地震が起こった時、自分と家族はもう死ぬのだと思いました」
「その時、私は寝ていました。なにか揺れを感じて、妻が地震!地震!と叫ぶのが聞こえました。すぐに起きて子どもに覆いかぶさり、なにが起きても子どもは守るのだと、自分に言い聞かせていました」
それから1~2分がたって、揺れがおさまりました。「神に感謝と思ったら、その1分後くらいに、また揺れが起こりました。2回目は本当に怖かったです。私たちは外に出て、それから家には帰っていません」。
マゼンは、グレーの上着の下に何枚も重ね着をして、さらに防寒のために帽子の周りにスカーフを巻いていました。家族で住んでいた4階建てのアパートの壁に大きなヒビが入ってしまったため、家に帰るのは安全ではないといいます。
その近隣でも、さらに何十世帯もの家族がモスクの中に避難しています。大人は赤のカーペットの上で静かに座り、小さな子どもたちは周りを走り回っています。ほとんどの人が何も持って出てきておらず、着の身着のまま避難してきました。
先週水曜、UNHCRはシリア・アラブ赤新月社と連携して、モスクに避難している人々が必要としている物資を届けることができました。地震発生以降、UNHCRはパートナー団体と連携し、防寒用の毛布、マットレス、ソーラーランプ、冬服など、地震の被害を受けたシリア人に対する緊急人道支援を実施しています。
今回の被災者の多くは、地震が発生する前から、危険な情勢下で生活を続けてきた人々です。シリア北西部、トルコ国境近くで暮らす何百万もの人々が、12年にわたって続く紛争の間に故郷から避難を余儀なくされています。
UNHCRシリア代表は先週金曜の記者ブリーフィングで「これは危機の中で起こった危機です。この国ではすでに680万人が国内避難民となっていますが、これは地震前の数字です。非常に困難な状況のなか、脆弱な住居で、最も厳しい困難に直面しているのです」と訴えました。
「そして今、シリアは1年で最も寒い時期で、被災地は吹雪に見舞われています。この過酷な天候は現地へのアクセスにも影響が出ており、道路も地震の被害を受けていることから、必要な人に支援を届けることも非常に困難です」とも話します。
地震の直後、シリア北西部に拠点があるUNHCRのパートナー団体は、備蓄していた支援物資を最も脆弱な人々に配布しました。しかし、トルコからシリア北部への国際支援に使われていた唯一の道路が被害を受け、さらに支援を届けることが難しくなっていました。
現在は道路が再び使えるようになり、国連の支援を運ぶ最初の6台のトラックの車列が入り、さらに多くの支援が届く予定です。現時点では、すべてを失った人々の命を守り、冬を乗り切るための支援が最優先です。
マゼンは、屋根のある市場に避難できているだけでも自分たちはラッキーだ、今はさらに多くは望まないようにしていると話します。
「私たちは今この瞬間のことしか、考えることができません。明日なにが起こるかも分かりません。今はただ、神に安全を祈るだけです」
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