2022年4月26日、岡山市のJR岡山駅構内に登場したUNHCRブルーのこいのぼり。「世界難民の日こいのぼりプロジェクト」(岡山市とUNHCR駐日事務所が後援)を通じて製作された、難民の子どもたちの幸せを願う特別なこいのぼりです。今年の5月5日「子どもの日」から6月20 日「世界難民の日」、紛争や迫害で故郷を追われた子どもたちに思いをはせてほしいという想いを込めて、岡山から #世界難民の日こいのぼり を全国に発信します。
日本の伝統文化・産業で難民問題の啓発
プロジェクトのきっかけは、ミャンマー出身のファッションデザイナーの渋谷ザニーさんと、こいのぼり生産量全国第一位を誇る、岡山県和気郡の株式会社徳永こいのぼりの出会いです。
渋谷さんは幼いころ、迫害により家族とともに日本に逃れてきた経緯を持ち、自分と同じ境遇の人々の力になることができればと、国連UNHCR協会の国連難民サポーター(広報担当)としても活動してきました。
「日本の伝統文化に関心を寄せるザニーさんが当社を訪れた際、初めてその生い立ちを知りました。ミャンマー支援活動のことを聞き、私たちからは家庭でのこいのぼり需要が減少傾向にあることなどをお伝えし、その後、一緒に何かできないかと相談を始めた矢先にウクライナ危機が起きました」。徳永こいのぼり代表取締役の徳永夕子さんはそう振り返ります。世界の難民支援のためにできることがあるはず―。こうして、難民を象徴する特別なこいのぼりの製作プロジェクトが始まりました。
プロジェクト代表を務めたのは渋谷さん。ファッションデザイナーとして、こいのぼりのデザインを手掛けました。「UNHCRのロゴから着想を得て、難民を守る手をモチーフに、人々が紛争や迫害で故郷を追われることのない世界を表現しました。難民の背景を持つ私自身のように、世界の難民の子どもたちが平和な社会で立身出世できるよう願いを込めました」と話します。日本の伝統を取り入れながら、新しいこいのぼりとして節句文化の継承に貢献したいと、デザインには市松模様や七宝など、日本の伝統文様を組み合わせました。
完成までには、こいのぼり職人たちの試行錯誤がありました。「難民支援をこいのぼりでどう表現できるか、社内でアイデアを出し合いました。鱗(うろこ)柄がないこと、風の届かない駅構内で掲揚することなど、従来とは異なる点も多い中、こいのぼりらしさを維持できるよう、サイズや飾り方を工夫しました」と徳永こいのぼり専務の永宗洋さん。UNHCRブルーの色味を再現する上でも試作を重ねたといいます。
子どもを思う気持ちを難民支援の連鎖に
5月2日には、プロジェクトを主催・後援する関係者が一堂に会して、ルネスホールで制作発表会が行われました。出席したナッケン鯉都UNHCR駐日事務所首席副代表は、「このこいのぼりをたくさんの方が目にし、難民支援の輪に加わってくださることを願っています」と話し、さまざまなパートナーシップによる「社会全体による難民支援」の重要性を呼び掛けました。
飾るだけでなく、活動の趣旨や難民問題に対する理解が広がってこそ意味がある――徳永さんの言葉のとおり、ニュースなどを通じてプロジェクトメンバーの想いは着実に届いています。こいのぼりを目にした人からは、「子どもの日のこいのぼりだと思っていたけれど、難民支援の意味が込められていることを知りました」といった声が寄せられています。
JR岡山駅を皮切りに始まった掲揚は、さまざまな人々の賛同・協力を経て、岡山市内のルネスホール、岡山市役所、そして東京都渋谷区の国連大学へと、広がっています。
世界では、紛争や迫害などにより故郷を追われ、親と離れて避難先で過ごす子どもがいる――こうした現状を踏まえ、渋谷さんは「こいのぼりとは、子どもを思う気持ちです。それは、大切に継承していくべき日本の文化であり、世界共通で必要とされる気持ちでもあります。“世界難民の日こいのぼり”がその象徴として、日本各地の、そして世界の空を泳ぐ日が来るよう、活動を続けていきたいと思います」と語ります。
難民問題の啓発と日本の伝統文化・産業の振興、その双方に貢献する画期的なプロジェクト。「世界難民の日こいのぼり」が地域や家庭にも広がり、難民の子どもたちが置かれている状況や難民問題への理解につながっていく――そんな発展を期待して、UNHCRはこの活動を応援していきます。
【掲揚場所】
・JR岡山駅:4月26日~6月20日
・ルネスホール(岡山市):5月2日~6月20日
・岡山市役所:6月2日~20日
・国連大学(渋谷区):6月20日~26日
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