昨年12月からカメルーン極北州では、遊牧民、漁民、農民の間で水資源をめぐる争いが激化し暴力に発展しています。ンジンダの村も命がけの争いが続いている地域のひとつです。
「私たちの村も攻撃されて、準備する間もなく、着の身着のまま避難を余儀なくされました」
ンジンダは夫と7人の子どもと一緒に、安全を求めて南に向かって避難し、ボゴの居住区にたどり着きました。極北州からの国内避難民のために設けられた居住区で、激しい暴力からこの地域に逃れてきた4,200人のおよそ半分を受け入れています。
地元のコミュニティが寛大な支援の提供を続けていますが、食料など生活に必要なものがまったく足りておらず、ンジンダの夫は農作物や持ち物を取りに故郷に戻っていきました。
「夫は村に戻って、畑でソルガムを収穫しようとしていました。しかし彼が着くと、渡り鳥にすべて食べられてしまっていました」。そしてさらに悲劇が起こります。夫は二度と戻ってこなかったのです。ンジンダは夫は自分の故郷の変化を見てショックを受け、それが突然の死につながってしまったのではないかと思っています。
7人の子どもとともに取り残され、収入もないンジンダは、これからどう生きていけばいいのか、途方に暮れています。「私たちはほとんどすべてを使い果たしてしましました。子どもが病気になっても、病院に連れていくこともできません」。
アフリカのサヘル地域のこの周辺では、世界平均の1.5倍の速度で気温が上昇しており、水やその他の資源をめぐる競争が激しくなっています、カメルーン北部の国境に広がるチャド湖の水位はこの60年間で95%下がり、この湖につながるロゴネ川、チャリ川の水源に依存している住民たちに影響が広がっています。
フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官はカメルーンへの3日間の訪問の間、ンジンダなど、最近の暴力の影響を受けて避難を強いられている家族に話を聞き、まさに今必要なニーズを聞きました。
「当局によるさまざまな努力、受け入れコミュニティのあたたかい支援がありながらも、食料、教育、医療などに対するニーズはまだまだあります。地元のあらゆるサービスへの負担に対する懸念もあり、避難してきた家族と受け入れコミュニティの人々両方に対する支援の強化を求める声も聞かれました」
UNHCRはパートナー団体とともに、国内避難民のための居住区を確保し、水やシェルター、その他日用などの命を守るための物資の提供を続けています。カメルーン当局とも連携し、暴力の終結に向けて、紛争の解決に向けて取り組みも進めています。
「紛争の原因を確認し、その対応に努めることが、コミュニティ間の平和的共存につながります。和解と再建こそが、故郷を追われた家族の自主的かつ安全な帰還への道を切りひらくカギとなります」とグランディ高等弁務官は話します。
ンジンダ一家が暮らす居住区への訪問中、グランディ高等弁務官は森林再生プロジェクトを視察。これから2,000本の植林が行われ、気候危機によって加速している砂漠化への対応、国内避難民と受け入れコミュニティが資源や収入を得る機会が増える助けとなることを目指します。
このプロジェクトは、サヘル地域の土地劣化、砂漠化、干ばつへの対応策として、大陸を横断する8,000キロの樹林帯を作ることを計画している「緑の長城(Great Green Wall)イニシアティブ」の一環です。
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