ウクライナから近隣国から避難した人が330万人を超え、またウクライナ国内でも多くの人が避難を余儀なくされ、緊急人道支援のニーズが高まっています。また、こうした人々に加えて、国内で最も戦争の被害を受けている地域では約1,300万人に影響がおよんでおり、人道支援や保護を必要としています。
ウクライナ国内
マリウポリやスームィなどの都市の人道的状況は極めて悪く、住民たちは食料、水、薬などの深刻な不足に直面しています。UNHCRはすでに人道支援の貨物の準備を完了させ、安全な輸送経路の確保に向けた交渉を注視しています。状況が許され次第ただちに、必要な物資をスーミに輸送する体制が整っています。
オデーサでは、市内の約45万人に対する食料、薬の支援要請が当局から出ています。3月17日現在、毎日600~800人がムイコライウから西部への乗り換えを行うオデーサ駅に、保護、法的、社会的なニーズの相談窓口が常設されています。
ウクライナ東部では、人道支援のニーズの緊急性がさらに高まってきています。ドネツクではいくつもの地域で20万人以上が水へのアクセスがなく、ルハンスクでは定期的な爆撃により8割が破壊されてしまった地域もあり、9万7,800世帯が停電しています。
市民や市民の住居、民間の施設への攻撃が続き、安全な輸送経路も確保されていないことから、何万人もの市民の命や生活が深刻に脅かされ、保護のリスクも高まっています。被害を受けている地域では、女性や子ども、障がい者、高齢者、その他マイノリティなど脆弱な立場にある人々が、移動手段、食料、水、薬、救急など、あらゆる必要なサービスへのアクセスが困難な状況です。
UNHCRはウクライナ国内において、現地当局、人道支援団体と密に連携しながら人道支援を実施しており、その一環として、受け入れ施設の開設、緊急援助物資やシェルターの提供、国境地域での支援の強化などを行っています。依然として保護に関するサービスの重要性は高く、法的支援、社会心理的サポート、その他必要な支援が最も脆弱な人に行きわたるように調整を図っています。
着の身着のまま逃れてきた国内避難民への支援のために、UNHCRは大規模の多用途の現金給付プログラムの立ち上げを行っています。家賃、食料、衛生用品などの基本的なニーズをカバーするためのものであり、国内避難民はそれぞれが優先度の高いものに使うことができ、地元の経済への貢献にもつながります。UNHCRは3月17日に首都キーウの国内避難民を対象にこのプログラムを開始し、他の都市や地域にもニーズに応じて拡大していく予定です。
ウクライナ国外
現場のUNHCR職員は、国境地域、受け入れ施設など難民が通過もしくは集まる場所で保護のリスクを把握し、難民の受け入れ地域のサポートを行うために、保護のモニタリングを続けています。
ウクライナから近隣国への避難は女性と子どもが約9割を占めているため、UNHCRは他の団体と人身売買や搾取のリスクの高まりについて警告を出しています。保護に関するリスクが非常に高いことから、UNHCRはパートナー団体と連携し、人身売買、搾取、虐待などのリスクについて必要な情報を発信し、難民に対して警告を高めています。
UNHCRは性的搾取・虐待の防止(PSEA)調整官、ジェンダーや子どもの保護の専門家をポーランド、モルドバ、ハンガリー、ルーマニアに派遣し、効果的かつ一貫したアプローチを行うため、パートナー団体や現地当局と保護の体制を整えました。
ウクライナの緊急事態に対して、UNHCRとユニセフは6カ国(チェコ、ハンガリー、モルドバ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア)において共同で「Blue Dot」を展開することで合意しました。その他の国も、状況や現場でのニーズに応じて適宜追加されます。
「Blue Dot」は、子ども、家族、特別なニーズのある人々に必要な保護のサービスを提供するための安全な拠点であり、既存のサービスや政府の取り組みをサポートするためのものです。さまざまな団体から提供されるサービスへのアクセスと標準化の改善を目指したもので、「Blue Dot」という承認ラベルを通じた普及もねらいです。提供されるサービスが関連の保護の基準を満たしたものであればどのサービス提供者も活動が歓迎されることから、緊急支援のひとつの形としてインクルーシブな連携の好事例です。
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