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本日、8月30日は「無国籍の削減に関する1961年条約」採択60周年です。UNHCRはこの機をとらえ、無国籍の根絶は達成可能な目標であり、国籍への権利を守ることがこれまで以上に必要されていると国際社会に訴えます。
フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は「世界各地で故郷を追われる人が増加を続けていること、さらに新型コロナウイルスや気候変動の影響など新たな世界規模の課題が出ていることからも、国籍に対する権利が重要な役割を果たしていることは明らかです。この世界のすべての人は、自身の国とその政府からきちんと把握されることによって各国が実施するさまざまな施策の対象に含まれるべきです」と強調します。
さらに「国籍を持つことはもちろん、国籍を持つことによって得られる政府の保護は、特に現在のような危機の際には、ワクチン、避難、社会的なセーフティーネットなど、さまざまな意味で命にかかわる問題となります」と訴えます。
無国籍者は、どの政府からも保護を受けることができず、公的な身分証明書を所持していないことも多く、紛争や強制移動に直面した際にいかなる支援からも取り残されるケースが広く確認されています。新型コロナウイルスのワクチンについては、各国がパンデミックの対応の一環として定めている接種計画に含まれないリスクもあり、無国籍者のコミュニティは、パンデミックの影響に対する社会経済的な救済支援策の対象とならない傾向にもあります。さらに、気候変動の悪化に伴う政府の諸対策においても無国籍者は除外されるリスクがあります。
無国籍であるということは、より一般的には、教育、医療、合法な雇用へのアクセスがないことを意味することが多くなっていす。また、移動の自由、家や土地の購入、選挙権、銀行口座の開設、さらには結婚することすらも妨げられる場合もあります。現在、地球上で420万人の人々が無国籍者であるとして把握されています。しかし、データ収集が徹底されていないために、どの国の国民としても認められていない人の数は実際はずっと多いとされています。
「無国籍の削減に関する1961年条約」は、無国籍の防止と削減のカギとなる国際条約です。世界のすべての国の加入が実現すれば、子どもが国籍がない状態で生まれることを防ぐことに役立ち、最終的には、無国籍根絶にもつながります。
2021年8月末時点で「無国籍の削減に関する1961年条約」の締約国は77カ国、この10年で特に増加しています。2010年以降、同条約への加入により無国籍削減へのコミットメントを正式に表明した国は40カ国、最近ではアイスランドやトーゴが挙げられます。
またこの間、80万人を超える無国籍者が国籍を取得・確認し、無国籍でなくなったことが報告されています。
グランディ高等弁務官は「UNHCRは『無国籍の削減に関する1961年条約』に入っていないすべての国に対して加入を求めるとともに、同条約で定められていることを各国の国籍法に反映し、すべての人の国籍を持つ権利が守られるよう求めます」と訴えます。
また、UNHCR駐日代表カレン・ファルカスは日本に対して、「日本の国籍法にはすでに無国籍の防止と削減に関する条項が含まれており、それに伴う行政先例や裁判例とあわせてアジアの中でも好事例となりえます」と話します。「日本は『無国籍の削減に関する1961年条約』(および『無国籍者の地位に関する1954年条約』)に加入していませんが、これらの条約に加入することで、無国籍削減に向けた取り組みはさらに強化されるでしょう。『難民に関するグローバル・コンパクト』の理念に基づき、また『持続可能な開発目標(SDGs)』達成への貢献に向けて、UNHCRは日本による国内外の無国籍に対応する取り組みのサポートを続けていきます」。
『無国籍の削減に関する1961年条約』への加入は、「無国籍根絶のためのグローバル・アクションプラン」で掲げられている10の行動計画のうちの一つです。2014年にUNHCRは向こう10年での無国籍根絶を掲げた「#IBelong キャンペーン」を立ち上げており、このアクションプランでは、各国に対して目標達成に向けた取り組みが提示されています。
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▶UNHCRファクトシート:無国籍の削減に関する1961年条約(英語・日本語)
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