3月3日、カナダ大使館とUNHCR駐日事務所の共催で「難民と移民の円滑な社会統合に向けて ―カナダと日本の経験から」がオンラインで開催されました。
国境を越えた人の移動が増える中で、難民や移民の受け入れや社会統合の在り方は世界共通の課題です。本イベントでは、この分野に関わる日本とカナダの専門家を迎え、難民や移民が受け入れ国での生活において直面する課題やその解決策などについて、両国の事例を通じて議論されました。
冒頭のあいさつでは、UNHCR 国会議員連盟会⾧を務める逢沢一郎 衆議院議員が「第二次世界大戦後、難民問題は最大の危機にある。十分な支援が行われていないことを憂慮している」と訴えました。他方、「日本は第三国定住、留学生の枠組みを活用したシリア難民受け入れなど、国際社会に胸を張れるほどの成果ではないかもしれないが、自ら支援の道をひらいてきている」として、カナダの先進的事例から国民の寛容な姿勢を学んでいきたいと話しました。
カナダでは40年以上にわたり、民間による難民受け入れ「プライベート・スポンサーシップ」が独自に発展し、受け入れ人数は30万人以上にもおよびます。この枠組みを世界的に広めるために立ち上がった「Global Refugee Sponsorship Initiative(GRSI)」のジェニファー・ボンド代表は、市民が中心になっていることの意義、受け入れ側の社会にもたらす利益に言及し、この数年で15カ国で導入が進んでいることも紹介しました。
また、民間セクターとして難民支援をリードするファーストリテイリングの新田幸弘グループ執行役員より、UNHCRとのグローバルパートナーシップによる取り組み、衣料寄贈や難民雇用、自立支援プログラムなどが紹介され、「今後、一社でできることは限られてくる。民間連携がますます重要になってくる」と訴えました。あわせて、企業として取り組む難民支援の意義について柳井正会長のメッセージも紹介されました。
続いてのパネルディスカッションは二村伸 NHK 解説委員がモデレーターを務め、カナダと日本における具体例、課題や解決策について意見交換が行われました。
カナダのNGOからは、カナダでは幼少期から多文化教育が組み込まれており、一人ひとりの個性を尊重する文化、「プライベート・スポンサーシップ」が根付く土台があることが紹介されました。そして、難民、スポンサー、コミュニティ、カナダ全体で“win-win-win”の関係が成り立っていることこそが、成功と継続のカギだということが強調され、難民とスポンサー相互の期待値、見通しを現実的なものにしておくためにも、接点をなるべく早い段階で作る、入国前からの支援の重要性も伝えられました。
日本からは、日本政府の委託により難民の定住支援などを担う難民事業本部(RHQ)や日本国際社会事業団(ISSJ)、NGOとして難民申請者の支援や日本語学校と連携したシリア人受け入れを行う難民支援協会(JAR)の取り組みが共有されました。
また、自治体を代表して、中東出身者の家族の呼び寄せが進み、現在約80人のシリア人が暮らす兵庫県三木市国際交流協会から、生活ルールや日本語の支援などについての紹介がありました。三木市の人々は「(人道危機を乗り越えてきた)シリア人の強さに救われる」こともあるといい、信頼、尊敬、理解の上にこそ共生は実現することが強調されました。
日本在住のカナダ人研究者は、日本でもカナダでも難民や移民が帰属感を得られるよう、企業や地域社会が一丸となって多様性と共生社会を実現できるような政策づくりを訴えました。
日本がカナダから学べる点については、各パネリストから「難民を地域住民として受け入れる、社会の中でコンセンサス成り立っていることが素晴らしい」「技術的なところから参考にしていきたい」「難民支援に関わって良かったという前向きな雰囲気づくりが大切」などのコメントがありました。
最後に、日本・カナダ友好議員連盟 副会⾧兼幹事⾧、UNHCR 国会議員連盟 副会⾧を務める中川正春 衆議院議員よりあいさつがあり、「日本は外国人受け入れに関して、その時々のパッチワーク的な対応でなく総合的な政策が必要。国際的な人の移動に対し、日本が自らのダイナミズムにどう取り組んでいくかが問われている」と訴え、本イベントを締めくくりました。
UNHCRは今後もさまざまなパートナーと連携しながら、日本をはじめ、世界各地で難民一人ひとりの命と尊厳を守る受け入れが行われるよう取り組みを進めていきます。