シリア・アレッポ郊外でUNHCRの移動チームから手洗いの指導を受ける子どもたち
© UNHCR/Hameed Maarouf
世界中の人にとって、2020年は大変な一年でした。新型コロナウイルスのパンデミックにより、180万人近くの人が命を奪われ、私たちはこれまで経験したことのない過酷な生活を余儀なくされました。
ワクチンの接種が年末にかけて少しずつ始まり、すべての人が一日も早い収束を願っています。しかし、パンデミックに対する社会経済的な効果は、これから先も長く続くとみられています。特に難民や国内避難民が多く暮らす開発途上国は厳しい状況にあります。
しかし、UNHCRは希望を抱いています。世界各地で紛争や迫害により故郷を追われた人たちは、これまでも想像を絶する喪失を経験してきました。彼らの生き抜くチカラは、この危機を乗り越えるためにはなくてはならないものだからです。
2020年の難民たちの取り組みの中で、特に印象的なものを5つ紹介します。
1. 最前線での対応
2020年3月初旬、新型コロナウイルスのパンデミックが宣言される前から、エクアドルのベネズエラ人医師サミュエルは、地方のリスクの高い地域で暮らす現地の人に対して感染予防策の指導を行ってきました。イランでは、アフガン難民の医師フェゼがウイルスに感染した地元の人、アフガン難民の患者を休みなく治療し、ウイルス対策のための安全情報や対策を提供しました。バングラデシュでは、トレーニングを受けた地域のヘルスワーカー(すべてロヒンギャ難民)が、世界最大の難民キャンプで新型コロナウイルス感染の疑いがある人を診療所に紹介するという活動を行っています。
2. 石けん、マスクなど衛生用品の製造
ケニアの難民キャンプでは、ブルンジ難民の起業家イノセントが石けんを製造し、手ごろな値段で販売しています。隣国ソマリアでは、24歳の帰還民ファドゥサが仕立てのコースに入り、半年後にはマスクを作って、人々を感染から守る支援をスタートさせました。メキシコでは、ラテンアメリカの救急対応を安全に行うために、特別仕様の洗濯機を製造する会社の戦力として難民たちが加わりました。
3. こころのケアとウェルビーイングへの対応強化
経済の低迷、長期にわたるロックダウンにより、メンタルヘルスの問題が深刻化しています。難民も例外ではなく、心と体の健康を保つための方法を必要としています。ペルーでは、ベネズエラ人のカウンセラーが新型コロナウイルスのパンデミックとどう付き合っていくか、リモートで「心理の救急」をテーマにしたセッションを開き、故郷を離れて暮らす仲間たちをサポートをしています。イラクでは、トレーニングを受けた難民がロックダウン中のキャンプでこころのケアを提供しています。ケニアでは、ヨガインストラクターのウガンダ難民リタが、自分を受け入れること、こころの健康を推進するオンラインクラスを国内外の難民を対象に配信しています。
4. コミュニティの安全
スイスで暮らすシリア難民のシャディたちは、最もニーズの高い脆弱な立場の人と外の世界につなぐ重要な役割を果たしており、お年寄りや病気の人、リスクの高い人に対して、買い物やおつかいのためのボランティアネットワークを運営しています。この意欲的な取り組みは、“誰一人取り残さない”ことを確実にするために、難民によるボランティアと地域の啓発活動として世界各地に広まっています。
5. ロックダウン下の娯楽と教育
ロックダウン中になにができるか、誰もが今できることを考える中で、難民からも新たな娯楽や創造的なアイデアが生み出されました。インドでは、グラミー賞受賞者のリッキー・ケジの指導を受けて、24人の難民のミュージシャンが集まり、“Shine Your Light”を多言語(英語、ダリ語、ペルシャ語、パシュトー語)で歌い、希望と思いやりの大切さを呼び掛けました。カナダでは、世界各地から逃れてきた今はカナダが“家”である難民たちが、自分たちのストーリーとお気に入りのレシピを無料の電子書籍「Tastes from Home: Recipes from the Refugee Community」に寄稿しました。