2018年12月末に国連総会で採択された「難民に関するグローバル・コンパクト」(Global Compact on Refugees:GCR)の理念に基づき、日本では難民支援に携わるステークホルダー間での情報交換が活発に行われています。
今年秋には国内の難民支援の継続的なネットワークづくりを目指した「MSC(Multi-Stakeholder Consultation)勉強会」がスタートし、11月には第2回目が「高等教育が難民の保護とエンパワメントに果たす役割」をテーマに行われました。
現在、難民の若者の高等教育への進学率は3%。世界全体では37%と推定される中で、きわめて低い数値になっています。教育は難民が自らの手で未来を切りひらく上で重要な役割を果たし、高等教育はその先のキャリア構築にもつながります。
勉強会の冒頭では、UNHCR本部で第三国定住プログラムの特別顧問を務めるデイヴィッド・マニコムから第三国での教育を通じた難民の受け入れの意義、世界各地の事例の紹介がありました。高等教育に関する支援は難民保護の観点からも今後重視されていくべきであり、UNHCRが国際社会に向けて支援を訴えている分野のひとつであることが強調されました。
続いて、出入国在留管理庁の本針和幸難民認定室長から、日本政府が実施しているシリア人学生の受け入れの背景、内容についての説明がありました。2011年から続くシリア紛争の影響を受けた若者への支援として開始されたこのプログラムは、シリアの復興に資する人材育成への貢献も期待されています。
また、日本ではすでに民間でも高等教育を通じた難民支援が広がってきています。その一つ、日本国際基督教大学財団(JICUF)からは、2017年から実施しているシリア人学生に対する奨学金制度(シリア人学生イニシアチブ)についての紹介がありました。
UNHCRも日本国内の大学と連携し、2007年からUNHCR難民高等教育プログラム(RHEP)を実施しています。
RHEPパートナー大学である関西学院大学と早稲田大学からRHEPの実施に必要な資金や人材の確保、日本語教育の提供などについての経験やノウハウが紹介され、難民の受け入れに関心を持つ叡啓大学から、2021年4月開校予定の大学の紹介と、教育を通して難民を受け入れる機会を創出するためのリソースの確保に係る課題の共有がありました。また共通して、在学中のみならず卒業後の進路のサポートも強化していきたいという意見がありました。
世界各地の才能あふれる難民の若者たちに質の高い教育を提供できるよう、また、難民と大学のみならず、日本社会全体にとって価値ある取り組みを目指して、今後日本国内でもさまざまなステークホルダーの参入が求められています。
第3回のMSC勉強会は「就労」をテーマに開催される予定です。