紛争や迫害により故郷を追われた人たちが、日本の大学で学びが続けられるように―
「UNHCR難民高等教育プログラム(Refugee Higher Education Program – RHEP)」は日本で2007年にスタートし、2020年度の募集からは全国13校に拡大することが決定しています。
RHEPインタビューシリーズの第3回は、日本各地で難民支援に取り組む学生グループから、明治大学のMIFOの皆さんに話を聞きました。
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RHEPパートナー大学の一つ、明治大学公認のボランティアサークルMIFO(Meiji International Friendship Organization)は、国際交流、国際協力を2本柱に活動する団体。立ち上げは2011年、RHEPの難民の学生、ミャンマー出身のモモさんと、当時2年生の山口真人さんの出会いがきっかけでした。
「モモさんと最初に知り合ったのは、学部の先輩が企画した難民映画の上映会でした。国際協力に漠然と興味があったとはいえ、普段ニュースで見聞きしていた“ミャンマー”や”難民“といったバックグラウンドの学生が、自分の身近にいることに衝撃を受けました」と山口さん。親しくなるうちに「ミャンマーの民主化を支援したい」というモモさんの強い想いに後押しされ、モモさんのために、モモさんの故郷のために、学生としてできることを考えるようになりました。
当時、明治大学には国際交流サークルのような“留学生と友達になる場”は複数あったものの、一緒に何かを企画して活動をしたり、世界で起こっている問題を議論できるような“学びの場”はありませんでした。「自分自身、そして周りの学生も難民問題についての知識がまったくなかったので、難民の学生と交流をしながら、世界が抱える問題を学び、行動を起こせる場になればとMIFOを立ち上げました」。
それから9年、山口さんやモモさんの想いは後輩に受け継がれ、現在は1、2年生約30人を中心に活動を行っています。設立時からの “自由なサークルでありたい”というモットーに沿って、各自が関心のあることを見つけてアイデアを持ち寄り、さまざまなことにチャレンジしています。
サークルに入る動機もさまざまです。「国際交流に興味があって入った」という人もいれば「日本に難民がいることも知らなかった」という人も。「難民が直面する課題について勉強して、こんなに知らないことがあったと驚いた」「支援がなぜ必要なのか、このサークルの活動を通じてその意義を知った」など、サークルの活動からさまざまな変化も生まれています。最近の若者は“内向き志向”と表現されることもありますが、MIFOのメンバーいわく「先進国、途上国関係なく、海外に興味がある学生は明治大学には多い」と言います。
MIFOの主な難民支援活動は、日本で暮らす難民の故郷の味を学食で提供する「Meal for Refugees
(M4R)」とユニクロの全商品リサイクル活動。それぞれ年2回、学内の学生たちに難民問題について知ってもらうきっかけとしても大切にしている取り組みです。
「M4Rはまずは『海を渡った故郷の味』を参考に、サークルのメンバーでレシピを考えます。学生には魚はあまり人気がないのでお肉がいいねとか」。3つくらい候補を選んで食堂の方と相談を重ね、試食会で味見をしながらレシピを固めていきます。
その間サークル内では、難民問題やM4R、料理の国についての勉強会を開き、学びを深めています。「ビラ配りをして宣伝するのですが、なかなか受け取ってもらえないんです。周りの学生に知ってもらうことが大変です」。それでも毎回、1週間1日60食は完売。「ただおいしそうだから食べたという人も多いので、さらに一歩、先の行動につながるような工夫をしなければと思います」。
全商品リサイクル活動は、着なくなったユニクロ・ジーユーの服を集めて、難民など服を必要としている人たちに届ける活動。学生や職員への呼び掛け、明治大学の新聞に掲載して保護者などにも協力を求め、毎回大きなダンボール7~8個は集まります。他のブランドの服も回収し、フリーマーケットに出展して、売り上げの一部を難民支援団体に寄付も行っています。
そのほかにも、毎年夏のカンボジア・ミャンマーへの訪問、日本で暮らしている外国籍の子どもに勉強を教えるボランティアなど、MIFOの活動は多岐にわたります。
MIFOには難民の学生に限らず、タイやベトナム、韓国、中国、台湾など、さまざまな国と地域のメンバーが参加しています。創設者の山口さんは、「日本に来てよかった」「MIFOのメンバーと友達になって、いろいろなことを一緒に学べてうれしかった」と言ってもらえたことが強く印象に残っているといいます。
設立から9年、一人ひとりの学びがサークルに蓄積され、大きな財産と仲間に囲まれているMIFO。現役メンバーは「自分たちの活動がどのような人たちに届いているのか、これからはもっと顔が見える支援にも取り組んでいきたい」と意気込みを語ります。全国の難民支援を行う学生団体との横のつながりも作っていくことができればとも考えています。
「日本の難民の方とも直接合える機会が増やしたい」「子どもたちとは年齢が近いので、より距離感の近い支援ができるかもしれない」「社会人と比べるとお金の寄付はそんなにできないけれど、相手のことを知ったり学ぶ時間もたっぷりある。その知識を土台にしっかりと地に足をつけて活動していきたい」。アイデアが次々とあふれてきます。
日本全国に広がりつつある学生の難民支援―。一人ひとりの熱意が集まり、学生という枠にとらわれない大きな力となっています。