13歳の時、イスラム過激派組織ボコ・ハラムに誘拐されたアディア。
男子は兵士として訓練され、女子は兵士の妻になるか、自爆テロの“爆弾”となることを要求されました。
兵士が妻を選び一人ひとり連れ去っていき、アディアの番がきました。しかし彼女は拒否しました。命令に背く者は、生き埋めにされたり、人前で処刑されたりしていましたが、「猶予をやるから考え直せ」と言われ、アディアはその場での処刑を逃れたのです。
しばらくして戦闘が起こり、兵士が出払った隙に、アディアは危険を承知で逃げ出ました。夜通し何日も歩き、ナイジェリア北東部のマイドゥグリに着いた時、隣国ニジェールの安全な場所に連れていくという車に乗せられました。
しかし、そこにはより厳しい現実が待っていました。
ニジェール南東部のディファに着くと、難民や国内避難民、暴力から逃れてきた人々が2万5000人以上。アディアは着の身着のまま、家族がどこにいるかもわかりませんでした。同世代の少女たちとシェルターに身を寄せましたが、お金を稼ぐ手段もなく、人道支援も届かず、生きていくためには自分の体を売るしかありませんでした。
「1、2カ月して、妊娠していることに気づきました。父親が誰であるかわかりません。売春なんてしたくない。でも、やめると食べ物が買えず、この子がお腹を空かして泣いてしまいます」。1歳半になる息子をひざにのせて、そう話します。
ボコ・ハラムの脅威から逃れ、ナイジェリアからディファに避難してきた難民は11万8000人。多くは女性、その半数が18歳未満で、性暴力の被害者は少なくとも3500人とも言われています。ボコ・ハラムによる性暴力の実態は2014年に300人の少女が誘拐された事件で明らかになりましたが、それ以外にも被害は絶えません。
「性暴力は女性の人生に暗い影を落とすだけでなく、彼らの家族や、コミュニティにも影響します。性暴力は犯罪です。人間の福祉や自由、倫理感を犯すものであるということを認識しなければなりません」とUNHCRニジェール代表は訴えます。
UNHCRはアディアにとって最も良い支援を探しており、まずは基本的なサービスを受けることができる難民キャンプに移動させること、その先に第三国定住の可能性も探っています。
2018年1月、UNHCRは、ボコ・ハラムから被害を受けたニジェール、チャド、カメルーンで難民や国内避難民に対して、1億5700万米ドルの支援を求めるアピールを出しましたが、今年7月までに集まった支援はわずか32%。国際社会からのさらなる支援が必要とされています。
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