ジュネーブ発
UNHCRはEUトルコ合意の当事者に向けて、この合意を受けて地中海を渡りギリシャへ辿りついた人々をトルコに送り返す前に、難民保護の制度を整備する事が先決であると訴えました。
メリッサ・フレミングUNHCR報道官は、欧州で相次ぐ国境閉鎖の影響を受け、ギリシャが多くの人々を受け入れざるを得ない現況に触れ、「UNHCRは個々の人権が守られるのであれば、保護のニーズが認めらない人や、庇護を求めなかった人をトルコへ送り返すことに反対するものではありません。しかし、ギリシャでは、国際保護を必要とする人々を受け入れるための枠組みがまだ整備されていないのです。」と述べました。
ギリシャには現在5万1000人の難民や移民がおり、そのうちレスボス島などの島には5000人、ギリシャ本土には4万6000人ほどがいます。これまで毎日平均300人が到着していたのに比べ、3月末には766人へと急増しました。レスボス島には「ホットスポット」であるモリアと呼ばれる施設があり、ここは3月20日以降、強制送還されるか否かの結果を待つ人々が収容される施設として使用されるようになりました。本来なら最大収容人数が2000人のこの施設には、現在2300人以上がおり、生活環境は悪化しています。
フレミング報道官は「野外で眠る人もおり、食糧も足りていません。家族と離ればなれになってしまった人も多く、不安や苛立ちが募る中、トルコへと送り返されるのではという更なる懸念が広がっています」と語りました。
同じようにギリシャ、サモス島のヴァシーにある施設では、衛生状態が悪く、特別なケアを必要とする人々への支援がほとんどない状態です。また、チオス島のヴィアルでは、最大収容人数が1100人なのに対し、1700人以上が生活しています。
UNHCRは「収容の代替措置」を推し進めるという国際的な動きに則り、収容施設での支援活動を停止しましたが、収容された人々の保護という観点からのモニタリングと、庇護申請手続きの情報共有は継続して行なっています。
3月20日の協定合意以前にギリシャの本土へと到着した人々にとっても同じように厳しい状況が続いています。難民や移民は、ギリシャ国内の30ヶ所で別の国へと移動する機会を待っています。ギリシャ当局が難民登録を行い、難民申請を処理できる対応能力には限りがあり、EU諸国からの支援が急務となっています。
トルコにおいては、UNHCRは庇護を求めて逃れた人々が国際保護を享受し、本国に強制送還されないようにするためにも、ギリシャからトルコへ送り返された人々と面会できるよう求めています。さらにUNHCRは、ギリシャからトルコへの再入国が安全になされるために必要とされる保護制度についての提言を行ないました。