2015年上半期、地中海を渡って欧州に辿りついた難民、移民の数は13万7000人に上ったことがわかった。その多くが紛争や迫害から逃れている事から、危機的状況に陥っている難民が増えているといえる。
地中海を渡ってイタリアやギリシャに辿りついた人の3人に1人が難民として保護を必要としているシリア出身者である。次に多い出身国はアフガニスタンやエリトリアなど多くの難民が出ている国である。
アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は「地中海での危険な航海にどのように対応すべきかが議論されているが、海路で欧州に辿りつく人々の多くが紛争や迫害を逃れ、他国に庇護を求めてる難民であるということを明確に伝えたい」と訴えた。
今年1月から6月の間に地中海を渡ってギリシャ、イタリア、マルタ、スペインに到着した人数は13万7000人であり、昨年の同期間(7万5000人)に比べて84%増加した。
海路での避難は年の後半に増加する傾向がある。特に夏が多く、2014年も下半期は上半期の倍に膨れあがった。2015年は4月に死亡した人数が増加し、5月と6月に激減した。1月から3月の間は479人の難民、移民が海で溺死したり、行方不明となった。これは1年前の同期間が15人だったのと比べると大幅に増加していると言える。
4月は特に多数の遭難事故が重なり、1308人の難民、移民が溺死したり、行方不明になった。5月はこの数が68人となり、6月は12人となるなど減る傾向が続いた。(2014年は6月だけで305人が溺死、もしくは行方不明)
グテーレス高等弁務官は「ここ2ヶ月、溺死したり行方不明となる人数が減っているのは良い兆候だ。様々な対応策が功を奏し、海上での事故死は減らせることを証明している。しかし一方で、何千人もの難民、移民が海路での避難を続けており、危機的状況は変わっていない」と語った。
移動する人々は、従来は北アフリカを発ち、イタリアを目指すルートを主に使っていたが、最近はトルコを発ち、ギリシャを目指す東部のルートを通る人の方が増えたこともわかった。ギリシャに辿りつく人の多くがシリア難民である。多くがまずトルコやレバノンなどシリア周辺国へと逃れるが、受け入れ国での経済の逼迫や公共サービスの不足などの影響で、雇用機会やシェルター、教育機会などを見つけられないなどの困難に直面する。人道支援への資金が大幅に不足するなか、周辺国に避難しているシリア難民の多くが別の国へと移動せざるを得なくなっている。
ギリシャでは2000ヶ所で難民を受け入れているが、増え続ける難民に対応するのは難しい状況である。難民の多くがマケドニア旧ユーゴスラビア共和国、セルビア、ハンガリーなどを経由し避難している。毎日平均1000人以上がギリシャからマケドニアに流入しているが、数週間前その数は200ほどだった。避難の過程では密航業者や犯罪組織による暴力も報告されている。
グテーレス高等弁務官は「欧州には紛争や迫害を逃れて庇護を求める人々を保護する責任がある。その責任を放棄することは、これまで欧州が懸命に作り上げてきた人道支援の枠組みが脅かされることを意味する。欧州各国はこの危機に対し、公平に負担を共有すべきである」と訴えた。
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