2014年2月3日 中央アフリカ共和国、バンギ
40歳のアディジャ*は喪失感と重い心を抱え数十年間暮らした中央アフリカ共和国を出発した。
「中央アフリカ共和国を去るのは自分の一部を残していくような気分。でも同時にもうこの国に二度と戻ることはないと分かっている。」UNHCRバンギ事務所でそう話した彼女は夫と10人の子どもたちと共に空港行きのバスに乗り込んだ。
チャドの首都ンジャメナやチャド南部に位置するアム・ティマンから避難してきたチャド難民201人は1月19日にUUNHCRとIOM(国際移住機関)の帰還プログラムによって母国への自主的帰還を果たした。
中央アフリカ共和国の戦闘によって90万人以上が国内避難民となり、およそ8万6000人が国外に避難したとみられている。暴動の原因は複雑で、集団だけではなく個人による暴力行為や略奪行為によって事態は急激に悪化している。
多くの暴力行為は「セレカ(イスラム系の反政府組織)」と「反バラカ(キリスト教系民兵組織)」の衝突によるものだ。各宗教のリーダーが暴力行為をやめるよう呼びかけているが状況は悪化の一途を辿っている。
長年にわたり、地域に馴染んで暮らしてきたアディジャたちチャド難民にとってこの出来事は衝撃的だった。かつて難民を暖かく受け入れてくれた国が突然、脅威と危険に満ちた場所となってしまった。特にチャド人は戦闘においてどちらかに加担していると見なされることが多く、非常に危険な立場にある。
状況の悪化を受け、アディジャをはじめとした多くの難民たちは故郷への帰還を決断した。不確かな将来を前にしつつも、アディジャは首都ンジャメナから南東に350キロほど離れた生まれ故郷のサールで新しい人生を切り開きたいとUNHCRに話した。
UNHCRは中央アフリカ共和国で避難生活を送る1万7850人以上の難民・避難民の支援と保護を行っており、そのうちおよそ4000人が首都バンギで避難している。
*本人保護のため、文中の名前は変更しています。
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