スイス、ジュネーブ
ここ1週間で300人以上が、北アフリカから地中海を欧州に向けて航海中に死亡した。地中海を航海中に死亡した人の数は今年に入り、1900人近くに上っており、6月以降は1600人が亡くなっている。
「地中海を渡って欧州を目指す人たちにとって、今年最悪の数日間でした。少なくとも3隻の大型船が沈没しました」とUNHCR首席報道官メリッサ・フレミングが記者に語った。
連日の事故の中でも8月22日の被害は最大のもので、少なくとも270人を乗せていたとみられるボートが、リビアの首都トリポリ東部で転覆した。生存者はわずか19人、リビアの沿岸警備隊が子ども5人と7人の女性を含む100人の遺体を引き上げた。残りの乗員251人は溺死したとみられている。
フレミング報道官は生存者の証言を引用し、「船はすでに満員でしたが、出航直前にさらに多くの人が詰め込まれました。船は航海中突然転覆し、船内にいた人々は全員中に閉じ込められたのです」 と話した。リビアの沿岸警備隊は被害者の捜索と救助、遺体引き上げのための支援を要請した。
8月23日には、イタリア海軍がリビアの領海から20マイル離れた海域で73人を救出し、損傷したゴムボートから18人の遺体を引き上げた。10人が依然として行方不明で、溺死したとみられている。船に乗っていたのは主にマリ、コートジボワール、ギニア、スーダン出身の人だった。救助隊に発見された時、船はすでに空気が部分的に抜けている状態で、海で溺れる人のために救命用ゴムボートが投げ下ろされた。
欧州に向かう人の多くは、リビアから出航する。悪化するリビアの治安情勢は、密入国業に携わる人々の増加を招いただけでなく、難民や移民にとって、紛争地域に留まるよりも航海の危険を冒し、欧州へ向かう決心をさせることに繋がった。
「トリポリのUNHCR事務所には難民や庇護申請者、不安定な立場に置かれた人々から毎日のように電話がかかってきます。彼らは生命の危機を感じ、食べ物や水、医療品や避難場所を必死に求めています。イタリアを目指す人々は、(リビア東部の)ベンガジなどの港から長く危険な航海に出ています」
フレミング報道官は、こうして命の危険を冒して欧州に向かう人々の多くが、紛争や暴力、迫害から逃れる難民であるとし、「欧州の海域におけるこの緊急事態に対して、欧州各国は地中海での救助活動の手段が安全であることを確認し、救助される側にとってのリスクを最小限にすべきです。その上で、協力して迅速に海上救命活動の強化に当たる必要があります」と語った。
「UNHCRはイタリア海軍とリビア沿岸警備隊が地中海で行なった海上救助活動を称賛します。エリトリア、シリア、ソマリアから命の危険を冒して欧州に向かう難民や移民の数が増えるており、迅速な対応が求められています。」とフレミング報道官は強調した。
UNHCRはこの痛ましい一連の事故で家族や友人を失った生存者にとって、精神面での支援が最重要であると考える。海から引き上げられた遺体の身元確認の作業が進み、被害者の家族にこれ以上余計な苦痛を与えないよう、正確な情報が迅速に伝えられることを要請する。
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