ブジュンブラ、ブルンジ共和国、2013年10月14日発
コンゴ民主共和国出身のアナクレは、他の子どもとは違う息子ジェフを心配している。近くのタンガニーカ湖から吹く心地よい風も、その不安な気持ちを和らげることはできない。
父子はコンゴ民主共和国からの難民だが、大湖地域の他の何十万人もの難民、避難民のように暴力や紛争から逃れてきたのではない。父子は、6歳の息子ジェフの臓器を呪術に使うために狙う人々から避難してきたのだ。
「私たちは息子のために安全な場所を求めて常に移動し続けてきました」とアナクレはブルンジの首都ブジュンブラに今年初旬オープンした移送センターでUNHCRの職員に語った。
教育が行き届かず識字率が低いこの地域では危険な迷信が浸透し、先天性白皮症(アルビノ)であるジェフはそのターゲットとなってしまった。ブルンジやコンゴ民主共和国、タンザニアなどにおいて、白皮症の人の体は魔よけや幸運や富をもたらすなどの霊的な力があると信じられ、まるで野生動物を狩るかのように白皮症の人びとを狙う人がいる。
この現象を問題視したUNHCRと現地の国境なきアルビノ支援団(Albinos Sans Frontière)は、ブルンジで難民や現地の人びとを対象に、白皮症に見られる障害についての意識を一般に広めるキャンペーンを行った。
少年の青白い顔とデリケートな肌、赤い瞳は確かにサブサハラアフリカ地域では目立つが、ジェフは近年まではコンゴの南キブ州ウビラの湖畔の街で両親と兄弟たちと平穏な生活を送っていた。
しかし、彼が5歳のとき全てが変わってしまった。民兵グループ「マイマイ」のメンバーが夜中に家に押し入り、ジェフを殴り意識をなくし、バッグに詰め込んで立ち去ろうとした。それに気付いたアナクレは近所の人の助けもあり侵入者を撃退し息子をかろうじて奪還することが出来た。
マイマイ民兵グループの中には、白皮症の体の一部を御守に持つことによって戦場において無敵になれたり護ってくれるなどの迷信や呪術を信じる者がいる。
襲撃を受けてジェフは数日間怯えて話すことも出来なくなってしまい、マイマイ民兵グループはジェフを差し出すか、さもなくば1万米ドル払え、と脅した。判断を誤れば家族全員が殺されかねなかった。「子どもは大切な私の一部です。差し出すなんて出来るわけありません。だから去年の6月に避難する場所を提供してくれた親戚が住むゴマに逃げて来たのです」とアナクラは北キブ州の首都に避難した経緯を話した。
しかし、その2ヶ月後には、ゴマで起きた、コンゴ政府と反政府武装勢力の「3月23日運動」(M23)との間の衝突により南キブに逃げ戻らなければならなくなった。彼らはブカブの英国国教会の牧師の元に身を寄せたが、ジェフの存在が牧師とその家族を危険にさらす恐れがあったため、そこも退去しなければならなかった。
家族は、2012年8月、周辺国のブルンジの首都であるブジュンブラ近くに避難した。「夫は配管工としての仕事を得て、私は小魚を市場で売る仕事を始めました」とジェフの母ソランジュは振り返る。しかし、ジェフの家族の試練はそれで終わらなかった。「今年の8月6日、誰かが家に手榴弾を投げ込んだんです。私たちの平穏な生活はまたも幕を閉じました。」
その後家族は政府の難民・無国籍者保護委員会とUNHCRに庇護を求め、恒久的な解決策を模索する間、保護と安全な場所の提供を受けることになった。
UNHCRブルンジ事務所代表のキャサリン・ハックは、国境なきアルビノ支援団(Albinos Sans Frontieres)と協働してジェフのような人たちを支援することはとても大切であるとし「この協働関係が白皮症の人びとの人権尊重に役立つことを願う」と語り、今後も協働して活動を進めていく意思を付け加えた。
「呪術や非科学的な迷信が未だ信じられている国々の政府は、ジェフのような子どもが教育を受ける権利も含めて、白皮症などの人びとの人権保護、尊重を保障すべく適切な対応措置を取らなければならない。」とハックは語った。
ブルンジ政府は近年この問題に対応して、白皮症者の誘拐や殺害に関与した人を逮捕、起訴する一方、白皮症の人を施設に集め警察の保護下に置くなど試みているが、それでは十分とはいえない。
ジェフはカメンゲ(Kamenge)移送センターでふさぎこんでおり、10歳の姉のジャスティンは心配して常に彼に付き添っている。「弟に辛い思いをさせたくないんです」と彼女は恥ずかしそうに語ると、ジェフは微笑みながらうなずいた。
「私たちの望みは、自分の大切な子どもを呪術医と反政府軍から護りたいだけなんです。本当に心配でなりません」とソランジュは語った。
詳しくはこちら(英語)