質問2.難民はいつ難民になるのですか?難民条約は難民として認定された人にしか適用されないのですか?
質問4.「拡大された定義の下での難民」(広義の難民)とは誰のことですか?
質問7.1967年の難民の地位に関する議定書の内容はどのようなものですか?
質問13.難民条約は国内避難民の問題についても扱っていますか?
質問16.難民条約を締結した国はすべての難民に対して恒久的な庇護を与えなければいけませんか?
質問17.非締約国は、難民の可能性がある人たちの入国を拒否できますか?
質問18.どんな人たちが条約で難民と規定されていないのですか?
質問22.ヨーロッパ諸国などへ庇護希望者が殺到しているというのは本当ですか?
質問23.難民条約の加入によって、庇護希望者が殺到する可能性はありますか?
質問24.難民条約へ加入すると国家主権が侵害されてしまいますか?
質問1.難民条約の歴史について教えて下さい。
難民を保護するための国際法、条約やガイドライン体系の発展の過程は、20世紀初めに、国際連合の前身である国際連盟から始まりました。1951年6月28日には、国連特別会議で、「難民の地位に関する条約」が承認されました。
条約では難民の定義、法的保護の種類、それ以外の支援や難民が条約締約国から受けることのできる社会的権利などを規定しています。同時に、条約には庇護国政府に対する難民の義務や、戦争犯罪人などの難民地位を得る資格のない者の区分が記されています。
条約が採択される数カ月前の1951年1月1日から、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は活動を開始しました。1951年条約は、急激に変化する時代に実に柔軟に対処し、難民保護のための礎となり続けています。
最初の条約は、主に第2次世界大戦後のヨーロッパ諸国で発生した難民を保護することに限定されていました。しかし1967年に採択された「難民の地位に関する議定書」は、条約の範囲を世界中の故郷を追われた人々の増加にも対処するように求めるものでした。条約では、1969年に成立した「アフリカ統一機構条約」や1984年に成立した「南米カルタヘナ宣言」など地域的制度の発展を奨励しています。
1951年条約と1967年議定書のどちらか1つあるいは両方に加入している国は145カ国以上あります(加入国のリストはこちら)。しかし世界的な移民の流れが変わり、移動する人々の数がここ数年で急増するにつれて、1951年条約の妥当性に関する疑問が、皮肉なことに条約の生みの親であるヨーロッパ諸国から特に、呈示されてもいます。
質問2.難民はいつ難民になるのですか?難民条約は難民として認定された人にしか適用されないのですか?
難民は難民条約の定義を満たした時点で、同条約上の難民となります。これはその難民の地位が公式に認定される前に起こることであり、難民の地位の認定がその人を難民にするのではありません。
難民認定はその人が難民である旨を宣言するものです。よって、難民は難民認定の効力によって難民となるのではなく、その人が難民であるから難民と認定されるのです。難民認定がまだなされていない庇護希望者(庇護国で法的な滞在許可がない者も含む)に対しても、難民条約上の権利の中でも、例えば「ノン・ルフールマン原則」(生命や自由が脅威にさらされるおそれのある国に送還してはならないという原則)や、不法入国や不法滞在に対して刑罰を科してはならないという原則等の適用がなされます。
質問3.難民とは誰のことですか?
1950年UNHCR事務所規程、1951年難民条約、1967年難民議定書において、難民は、人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々と定義されています(厳密な定義は難民条約の第1条A(2)を参照)。
この定義では、自国における平時と戦時の区別をしておらず、国際的・国内的な武力紛争や戦争から他国に逃れてきている人々も、上記の定義に該当するのであれば「難民」とします(UNHCR国際的保護に関するガイドライン 12を参照)。
質問4.「拡大された定義の下での難民」(広義の難民)とは誰のことですか?
1951年難民条約上で定義された「難民」(ここでは条約難民と呼びます)に加えて、その後の世界情勢の変化に応じて行われた国連総会や経済社会理事会の決議などによって、故郷を追われた人々をよりインクルーシブな形で保護するために、難民の定義が拡大してきています。この「拡大された定義の下での難民」に基づき、武力紛争などで常態化した暴力が発生し、自国に帰ると無差別な形で命や自由が脅かされる人々も、国際的保護を必要とする「難民」とされています。このような人々も条約難民と同様にUNHCRの支援対象者です。
質問5.難民条約はなぜ重要なのですか?
この条約は難民の抱える基本的な問題をカバーする、初の真に国際的な取り決めです。この条約は、難民が享受できる基本的な権利(少なくとも合法的に過ごしている外国人と同じか、多くの場合にはその国の国民と同じ程度の自由)を設定しました。条約では難民問題の国際的性格や、国家間で義務・負担を共有するという国際的な協力の必要性が認識されています。
質問6.1951年難民条約の内容はどのようなものですか?
1951年難民条約は、「難民」という語を定義しました。信教の自由や移動の自由、勤労の権利、教育を受ける権利、そして旅行証明書を発給してもらうことなど、難民の権利内容について概説しています。同時に同条約は、受入国に対する難民の義務についてもはっきり示しています。最も重要な規定は、難民は迫害を受けるおそれのある国へ、自分の意思に反して帰還させられるべきではないということです。また、同条約によってはカバーされない人々や集団についても詳細に説明しています。くわしくはこちら
質問7.1967年の難民の地位に関する議定書の内容はどのようなものですか?
1951年条約は、1951年1月1日以前の主にヨーロッパにおける難民を対象とするものでしたが、1967年議定書ではこの地理的・時間的制約を取り除きました。くわしくはこちら
質問8.保護とは何ですか?
政府には国内法を施行する責任があります。しかし紛争や内戦が勃発した場合など、しばしば政府が国内法を施行することができなかったり、またその意思がないことがあります。その場合、基本的人権を脅かされた人々はよその国へ逃げ出し、逃げた先で難民と認定され、基本的権利を保障してもらうことがあります。
質問9.誰が難民を保護するのですか?
難民を保護する責任は、第一に受け入れ国にあります。1951年条約と1967年議定書の一方または双方の締約国となっている国が、こうした規定を守る義務を負っています。UNHCRは、真に難民である者が庇護を保障されるようにモニタリングを継続し、必要に応じて仲裁を行い、彼らの生命が危険に晒される可能性がある国へ強制的に送還されることがないようにしています。UNHCRは、現地社会での定住や、故郷への自発的な帰還、またはそれが不可能な場合の「第三国定住」などの方法を通じて、難民が生活を再び始められるように支援しています。
質問10.難民条約は21世紀においても適切でしょうか?
はい。
1951年条約はもともとヨーロッパで起きた第2次世界大戦後の処理や、東西間の政治的緊張に対処するために採択されたものでした。紛争の性質や移動のパターンがこの数十年間で変化しましたが、条約はあらゆる状況に置かれた人々を保護するために、柔軟に対応できるものであることが実証されています。個人や集団への迫害が続く限り、条約の必要性がなくなることはありません。
質問11.難民条約の目的は人口移動を規制することですか?
いいえ。
何百万という「経済的」あるいはそのほかの目的を持った移民が、この数十年で発達した通信手段の利用により、主に西側先進諸国へと新たな生活を求めて移動します。彼らはしばしば難民と混同されますが、真の難民は生命が危険に晒されるような迫害から逃げてきているのであり、単に経済的な困難さを理由としているのではないので、彼らとは区別されるべきです。近代の移動のパターンは非常に複雑になっており、そして経済移民や本当の難民やそのほかの人は混ざり合っています。政府は公正な庇護の手続きによって、混在する集団から難民を見分け、適切に処遇するという難しい仕事に直面しています。
質問12.経済移民とはどう違うのですか?
経済移民は、通常、より良い生活を求めて自発的に国を離れます。国へ戻ったとしても、戻った国で政府の保護を受けることができるでしょう。難民は、迫害のおそれのために国を逃げ出し、故郷での状況が安定するまでは安全に帰国できないのです。
質問13.難民条約は国内避難民の問題についても扱っていますか?
特に扱っていません。
難民とは国境を越えて庇護を求めて外国へ逃げた人々のことをいいます。国内避難民(IDPs)は同じような理由で逃げた人たちですが、国境を越えずにいるので、その国の法律に未だ服しています。特定の危機の場合、UNHCRは国内避難民のうち、数百万人を支援していますが全てではありません。現在では故郷を追われた人々をどのように保護すべきか、そしてそれは誰によりなされるべきかについて、国際的な議論があります。
質問14.難民条約は難民問題を解決するものですか?
自国における政治的、宗教的、軍事的、もしくはそのほかの問題のために、個人的に、または大量に出国した人々は難民となります。1951年条約はこの根本的な原因に取り組むことを意図してはいません。しかし犠牲者たちに国際的な法的保護やそのほかの支援をある程度提供することで、事の重大さを和らげ、結果的には難民が再出発することを援助することになります。保護はその問題全体の解決に貢献していますが、この数十年で難民の数が劇的に増加するにつれて、人道的な支援活動は将来起こりうる危機を回避しあるいは解決する代替案あるいは政治的行為として機能しえないことが明らかになっています。
質問15.難民にはどんな義務がありますか?
難民には庇護国の国内法と規則を遵守する義務があります。
質問16.難民条約を締結した国はすべての難民に対して恒久的な庇護を与えなければいけませんか?
1951年条約は自動的なあるいは恒久的な保護を与えるものではありません。難民が庇護国へ恒久的に統合されるという場合もありますが、難民が難民の地位を獲得した理由が消滅したときに、難民ではなくなることもあります。難民が国籍国へ自発的に帰還することは、UNHCRにとって「望ましい」解決方法ですが、当該国の状況が安全な帰還を可能にする場合にのみそうだといえるでしょう。
質問17.非締約国は、難民の可能性がある人たちの入国を拒否できますか?
「ノン・ルフールマン原則」が当てはまります。「ルフールマン」とは、迫害にあう可能性がある国へ強制的に送還することをいい、慣習国際法である「ノン・ルフールマン原則」は、すべての国を拘束するものです。よって、どの政府もそのような状況にある人を強制退去させるべきではありません。
質問18.どんな人たちが条約で難民と規定されていないのですか?
平和に対する犯罪、戦争犯罪、人道に対する罪を犯した人、避難した国の外で重大な犯罪(政治犯罪を除く)を犯した人は、難民と定義されません。
質問19.「迫害の主体」とは誰ですか?
「迫害の主体」とは政府、反乱軍や他の集団などの個人や集団であり、当該の人が逃げることを余儀なくされる原因をつくっているものです。しかしながら迫害の主体が何かは、個人が難民該当性があるかどうかを決定するのに決定的な要因となるべきではありません。大切なことは、国籍国で保護を受けることができるかどうか、その個人が国際的な保護を受けるのに値するかどうかということです。
質問20.「一時的保護」とは何ですか?
1990年代はじめの旧ユーゴスラビア紛争でのケースのように、突然の人々の大量流入に直面し、通常の庇護システムが麻痺状態になってしまった場合、国家は「一時的保護」を与えることがあります。この様な状況では、人々は恒久的な庇護の保障はないものの、迅速に安全な国への入国が認められるべきです。したがって「一時的保護」は特定の状況にある政府と庇護申請者双方にとって便利なものとなります。しかし条約によって規定されているように、それは補足的なものにすぎず、難民の庇護を含めた幅広い保護の手段の変わりにはなれません。
質問21.戦闘員も難民になりますか?
難民とは民間人を指します。例えば、過去に兵士だったという人は難民に該当することはあり得ますが、軍事活動を続けている人は庇護されません。
質問22.ヨーロッパ諸国などへ庇護希望者が殺到しているというのは本当ですか?
ヨーロッパを含めて世界中の国々が、自国には庇護希望者が押し寄せてきていると考えています。確かに多くの地域において過去数十年間で庇護希望者の数は急増していますが、各国の懸念は相対的なものです。覚えておくべきは、アフリカやアジアでは、先進国よりも経済的に貧しいにもかかわらず、ずっと長期間にわたって、ずっと多くの難民を受け入れている国があるということです。
質問23.難民条約の加入によって、庇護希望者が殺到する可能性はありますか?
いいえ。
大多数の難民人口を受け入れている国の中には、難民に関する条約や議定書の締約国でない国もあります。難民の行き先としての「魅力」という意味では、地理的・政治的要因や家族とのつながりがむしろ重要な要素となります。
質問24.難民条約へ加入すると国家主権が侵害されてしまいますか?
主権は決して絶対なものではありません。国際関係には合理的で受け入れ可能なレベルでの妥協というものがあります。難民法は国益と保護の折り合いをつけたものです。たとえば庇護(訳注:庇護国での滞在許可と人道的な処遇)を与えることは、難民に関する条約や議定書には組み込まれておらず、それぞれの政府の裁量に任せられています。
質問25.ある国を「安全」であると宣言し、その国からは難民が発生することがあり得ないことがありますか?
いいえ。
迫害という深刻な危険が一般的にないような国の出身者からの庇護申請でも、審査はなされなければなりません。当該庇護希望者が公正な面接を受ける機会を与えられるなら、「迅速手続き」によって処理することも考えられるでしょう。
質問26. 庇護希望者の「拘禁」(収容)について国際的ルールはありますか?
庇護希望者の拘禁(収容)は通常は回避されるべきであり、拘禁に代わる措置が機能しないと判断された時の「最終手段」であるべきです。これは、難民および人権に関する国際法・国際基準に従ったものです。拘禁を行うことができるのは、正当な目的があり、個別事案ごとに必要性と比例性があると認定された場合に限ります。
また、期間の定めのない恣意的拘禁を避けるためにその上限は法律によって定められるべきであり、拘禁やその延長の決定にあたっては、独立した機関によって審査が行われなければなりません。最終手段として拘禁が必要な場合であっても、拘禁の環境は人間的かつ尊厳のあるものでなければならず、独立した監視および査察の対象とされるべきです。