1.第一次庇護国の負担軽減に向けた責任分担の改善
- UNHCRは、出発点として、提案された「ツール・キット」を使用し、適宜それを発展させることにより、大量流入事態における責任分担の改善を推進するとともに、負担の共有に基づく包括的なアプローチを調整するために必要な措置について検討する。
- UNHCRと各国は、難民を受け入れている開発途上国の対応力および貢献を評価しようとする常設委員会の現在の努力を踏まえて、責任分担に関する検討事項の枠組みを定めるUNHCR執行委員会の結論の作成が望ましいかどうか、またそれが実行可能であるかどうかを検討する。
- 各国は、難民の大量流入と長期化する難民問題への一貫性ある持続可能な国際的対応を実現するため、二国間または多国間の負担共有協定の有用性について検討する。
- 各国およびUNHCRは、国際金融機関に対し、多数の難民を受け入れる経済的・社会的コストをどの程度まで融資計画の中に組み入れることができるかについて検討するよう奨励する。
- 各国は、国際機関および民間セクターと共同で、難民、特に青少年のための高等教育、職業訓練および大学教育の機会を拡大するトラストファンド(例えば、「難民教育基金」)や奨学金制度(例えば、「難民のためのアインシュタイン奨学金計画」)の財源確保改善の方法を検討する。
- UNHCRは、受け入れ国の政府、国連専門機関、NGO、その他の関係者と協力の上、特に長期化する難民問題において難民が受け入れ国の経済、社会、環境および安全保障に与える影響について調査する。
2.難民受け入れ国における保護対応力強化に向けてのさらなる協力
- UNHCRおよび各国は、NGOと協力の上、最良の実務例に基づき、難民受け入れ国・地域において保護対応力を強化するための具体的なモデルを開発、実施する。これらのモデルは、受け入れ国での保護を実施し解決策を生み出すことにより、庇護希望者と難民が非正規に移動し続ける必要性を減少させることも目的とする。
- この点に関して、各国は、基本的な難民保護のニーズを満たし、教育および職業訓練を含む必要不可欠なサービスを提供する第一次庇護国の能力を引き上げるように財政・技術援助の対象の目標設定を行う。
- UNHCRは、2001年9月の「世界協議」に提出された覚書に添付されている対応力強化に関する原則・枠組みをさらに発展させる。15 UNHCRは、職員と関係者を対象に一貫性のある保護対応力強化を目的とした『受け入れ国における難民保護対応力強化に関するハンドブック』を作成する。同時に、UNHCRは、上記覚書の付録に依拠し、この分野のイニシアチブと活動に関する最新の情報を収集する。16
- UNHCRは、関心の程度に応じて、国家または地域レベルの政策を立案・実施する目的で、各国およびNGOの関与する地域的または準地域的なワークショップを開催する。
- UNHCRは、対応力強化が最も必要とされている分野を特定し、各種の活動の優先順位を確定し、支援を必要としている受け入れ国を特定する。UNHCRは、これらの国が必要とする活動と、各国、国際機関、NGO、民間部門およびその他の関係者からの具体的な支援および専門知識の提供を組み合わせる業務を推進する。
- 各国およびNGOは、政府間提携プロジェクト(“twinning” projects)17 を拡大させる可能性を追求する。
- UNHCRは、「世界協議」開催中に技術支援等(例えば、国境警察または難民の地位の認定に関与している職員の研修)を申し出た国に、その支援申し出の再確認をする。これらの申し出については、UNHCRがまとめ、必要に応じて利用していくものとする。
- 「第三国定住に関する作業部会」は、保護対応力と第三国定住の関係について、引き続き検討していく。
15 「受け入れ国における保護対応力強化」(EC/GC/01/19)を参照。
16 同上参照。
17 様々な分野の専門能力を構築するために、難民保護レジームの整備が遅れている他の国を支援すべく各国政府の公務員が役務を提供するプロジェクトを指す。
3.NGOを含む市民社会との難民の保護のためのパートナーシップ強化
- 各国は、NGOの事業についての明確な法的枠組みを設定することにより、NGOの法的地位を向上させる方法を検討する。
- UNHCRは、受け入れ国および援助国政府(国家議会および地方議会を含む)だけでなく、NGO、市民グループ等の関係者と難民男性・女性・子どもとの間でも、保護および難民問題意識向上のためのパートナーシップを継続的に強化していく。
- UNHCRとNGOは、特に後者が現地駐在している場所において、難民保護上の問題を明確化し、それに対処するために、両者の協力関係を強化する。
4.保護の必要性に自ら対応するための難民コミュニティへの権限付与
- 各国、UNHCRおよびその他のパートナーは、難民の流入で始まる緊急事態から恒久的解決が達成されるまでの間、難民自身のコミュニティを基盤にしたシステムとネットワーク(特に女性と子どもの保護のためのものを含む)を整備し、これを活用する。
- UNHCRは、難民コミュニティ開発政策18 の広範な普及と理解の向上を図り、その実施について職員、政府関係者およびその他のパートナーの研修を行う。
- 各国、UNHCRおよびパートナーは、能力を十分に発揮する機会が与えられた難民は自身とそのコミュニティに対してより良い貢献ができるという事実を認識し、難民(特に女性と青少年)がその技術や能力を活用できるようにする方法を検討する。
18 「コミュニティ開発アプローチ」(EC/51/SC/CRP.6)(2001年2月15日)参照。
5.難民問題の国内・地域・多国間の開発政策への連結
- 各国は、開発資金を(可能であればその一定割合)を受け入れ国の難民と現地住民の双方に同時に利益を与えるプログラムに割り当てることを検討する。
- 各国は、難民受け入れ地域をその国家開発計画の中に含めることを検討する。UNHCRは、多国間および二国間の開発援助におけるパートナーがそのようなイニシアチブに対して目に見える支援を差し伸べるように奨励するとともに、そのような活動について定期報告書を提出する。
- UNHCRと各国は、民間部門とともに新規の資金調達戦略を検討する。
6.負担の共有の手段としての第三国定住のより効果的な利用19
- 各国は、大量に難民が生じた際に難民の地位の集団認定を受けた難民であって難民条約第1条F項が適用されない者について、より柔軟な第三国定住基準と人道的な一時避難計画の適用を検討する。
- 「第三国定住に関する作業部会」は負担の共有の手段として第三国定住を利用する可能性についてさらに検討する。その中には、大量に難民が生じた場合とりわけ他の恒久的解決策の見通しが皆無に等しい場合に適用される基準の設定も含まれる。
- 各国およびUNHCRは、例えばNGOやその他の関係者とのパートナーシップ強化を通じて第三国定住対応力を拡大する方法を検討する。