今年のクリスマス、レバノンの最大都市ベイルートでのこと。子どもたちが心を込めて、クリスマスキャロルを歌っています。
白いシャツとサンタクロースの帽子の姿でステージに立っているのは、4歳から16歳まで26人から成る聖歌隊。地元の子どもたちに加え、シリアから逃れてきた7人の難民も参加していました。
この聖歌隊の子どもたちは、聴覚に障がいがあります。彼らを指導してきた支援機関FAIDのパスカルは、「一生懸命練習して、ここまで歌えるようになった子どもたちが誇らしい」と話します。
人工内耳を通して聞こえる音は、専門家の例えでは、水中やトンネルの中で聞く音のようだといいます。子どもたちは数々の困難を乗り越え、約半年かけてメロディーと歌詞を暗記し、3つのクリスマスソングを歌えるようになったのです。
シリアの首都ダマスカスから逃れてきたアリ(9)は、生まれつき聴覚に障がいがあり、6年前に学校に通うようになってから補聴器をつけ始めました。「みんなと一緒に歌えてうれしい」。お気に入りの曲は、発表会でも披露したサイレントナイトです。
今回、子どもたちは手話を使った歌にも挑戦しました。「耳が聞こえない人が聞きにきても、何を歌っているか分かるようにしたい」。子どもたち自身がそう強く希望したそうです。
UNHCRは2017年から、FAIDに通うシリア難民の子どもたちへの支援を続けています。これからも多くの人々に歌声を届けることで、障がいがあっても、難民でも挑戦できる、音楽は国境を超える“ことば”であることを伝えていきたいと、FAIDは考えています。
また、北部の都市トリポリでもクリスマスのために聖歌隊が結成されました。集まったのは、障がいのある人、シリア、イラク、パキスタンから逃れてきた難民など160人以上。「歌が得意な難民はいないか」と、地元のNGOがにコンタクトしてきたのは11月はじめのこと。イベントの企画者は、出身地も、言語も、障がいの有無も関係なく、難民もレバノン人も、みんなが一つになって“平和と団結”のメッセージを届けたいと考えました。
「みんなと一緒に歌っていると、幸せや平和を実感するんです。難民として生きてきた苦しみがやわらいでいくような気がします」
聖歌隊に参加した難民たちは、口々にそう話しています。
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