「シリア紛争のことを普通に話しても関心を持ってもらえない。そこで思い付いたのが、音楽やラップを通じて伝える方法です」
そう話すのは、シリア難民のラッパー、ジェイモス兄弟。2007年、シリアの首都ダマスカス郊外でラップデュオ「Refugees of Rap」を結成し、シリアでの生活や苦難を伝える活動を始めました。
その後、2013年に故郷を離れることを余儀なくされ、フランスに逃れて難民として認定されました。そんなジェイモス兄弟が今回企画したのが、ノルマンディ地方・トレヴィエールの学校で難民の現状について伝えるイベントでした。
「紛争や難民にあまり興味がない若者たちのエネルギーを力に変えたい。芸術を通じてなら、平和へのメッセージをストレートに伝えることができることを証明したかったんです」
イラクやスーダン、イラン、シリアなどから逃れてきた難民たちも巻き込み、子どもたちの前で出身国の文化や特技などを紹介。レストランのシェフ、ミュージシャン、ジャーナリスト、農家、建築家・・・、故郷を追われる前の職業はさまざま。子どもたちは一人ひとりの話に興味深く耳を傾けます。
そして、ジェイモス兄弟が担当したのは、強制移動や自由をテーマに“ラップ”をつくるワークショップです。
最初は恥ずかしがっていた子どもたちでしたが、そのうち、自分で考えたラップを我先にと披露し始めました。アレクサンドル(14)は、スーダンから逃れてきた難民の話を聞きその人生をラップで表現。「テーマは自由。苦難に満ちた旅のことを書きました」。
“海を渡ってくるのは簡単じゃなかった、でも無事にここにたどり着けたんだ”
今回、イベントの会場となった学校で社会科を担当する教師は「子どもたちに難民と移民の違いなど正しい知識を身に着けて、世界に目を向けてほしい。そして、学校で学んだことを家で話し、家族間でも視野を広げてほしいと思っています」
子どもたちは未来そのもの、新しい変化をもたらしてくれる存在です。そのためにも、ジェイモス兄弟はラップを通じて彼らに伝え続けたいと考えています。
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