ペルーの首都リマの路上では、2015年以降、無許可で商売をする人が倍増しています。その多くはベネズエラから逃れてきた人々。この3年で200万もの人がふるさとを追われ、うち45万人がペルー逃れています。
親友とヒッチハイクと徒歩で、20日間かけてリマにたどり着いたというアントニオ(24)は、市内でココアと菓子パンを売って生活しています。ベネズエラでは大学に通っていましたが、情勢不安から退学を余儀なくされました。
フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は、ベネズエラから移動を強いられている人々のニーズを把握するため、1週間かけて南米の視察を行い、受け入れ国側との今後の対応を話し合いました。
「ペルーはベネズエラから逃れてきた人々に国境を開放するだけでなく、就労の条件を緩和したり、公共サービスへのアクセスを拡大するなど、地域の優先的事項としてこの問題に取り組んでいることが評価されます」
2017年1月には、就労や教育、銀行口座開設を認める1年の一時滞在ビザの発行を発表し、11万人を超える人が取得しています。2018年5月から急増するニーズに対応するため、国の移民管理局が24時間体制で手続きを行っています。
公共サービスで救われた命もあります。路上でアイスティーを売って生計を立てているケルビンの妻は体調を崩し、一時は危険な状態でした。自身の収入では医療費を支払うことができずに困っていましたが、病気という理由が考慮され妻はビザを取得。医療サービスを受けることができるようになりました。しかし現時点では、この方法での許可が認められているのはごくわずかです。
長く困難な道のりを経てペルーにたどり着くため、精神面への影響も懸念されています。仮設住居で暮らす人々のサポートに従事しているルースはこう指摘します。
「家を失い、行き先が見えないことに不安を感じています。一瞬ですべてを失ったことを理解できていないのです」
多くの人がふるさとに親戚を残してきており、心配と不安から、精神的に不安定な状態にあります。また、自国では教師や医者といった職業に就いていたものの、ペルーで仕事を見つけられずにストレスを感じているともいいます。「自分の技術や経験を生かして、この国でも貢献したい」。ベネズエラから逃れてきた人々はそう感じています。
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