ニューヨーク発 2013年2月27日
アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は2月26日、シリアで「決着の時(a moment of truth)」が近づいていることに対し、国際社会が一致団結して状況の悪化をくい止めねばならないと警鐘を鳴らした。
「今シリアで起こっていることはシリアの周辺地域のみならず、国際社会が対処できない大惨事へと発展する可能性を有している。それは、政治的にも安全保障の側面からも、人道的観点からも、国際社会の対応能力を超える最悪の事態が起こる事を意味している。国際社会は何としてもそのような事態へと発展するのを食い止めなければならない。」とグテーレス高等弁務官はニューヨークで開かれた国連安全保障理事会で訴えた。
グテーレス高等弁務官はシリアの最新情勢に触れ、「人々が直面している状況は筆舌に尽くしがたいほど過酷だ。難民を生みだす危機的状況が何ヶ月も続いている。」
UNHCRはシリア周辺国に避難している難民と、シリア国内にいる国内避難民に対し大規模な支援活動を行ってきたが、紛争が勃発してから一年経った頃の2012年4月時点で、難民登録していていた人の数は3万3000人であった。
「昨日(25日)までに国境を越えたシリア難民の数は94万人。シリア難民が逃れている地域は中東や北アフリカと広範囲に及んでいる。今年1月はじめには、たった一週間に4万人がシリアから逃れた。」
またグテーレス高等弁務官は、増加するシリア難民の数は衝撃的だが、同時にシリア国内で避難生活を強いられている人々の苦しみを忘れてはならないと強調した。シリア国内には200万人もの国内避難民がおり、さらに紛争の影響を受け続けている人々は400万人にのぼる。「シリア国内では50万人のパレスチナ人が紛争による被害を受けている。」
さらにグテーレス高等弁務官は、難民の4分の3は女性と子どもが占めており、その多くが親戚を失い、家を失い、所持品すべてを失った者たちであることを強調した。「子どもたちが払う犠牲は最も深刻だ。この紛争によって何千人もの子どもたちの将来が閉ざされてしまった。これはシリアという一国を担う次世代が、今後長期にわたって暴力とトラウマにさいまれることを意味している。」
グテーレス高等弁務官は、ヨルダン、レバノン、トルコ、イラクが社会的にも経済的にも大きな犠牲を払った上で、人道的精神のもと寛容にシリア難民を受けれている事実を忘れてはならないと安全保障理事会に加盟する15カ国に対して訴えた。さらにグテーレス高等弁務官は、シリア難民の受け入れによってわずか400万人のレバノンの人口が10%増加したことに触れ「シリア難民を受け入れている国はとても寛容に、国境を難民のために開いてきた。しかし、これらの国の受容能力には限りがある。」と述べた。
「国際社会は結束し、シリア難民を受け入れ続けている国を緊急に支援しなければならない。寛容であるから受け入れ国を支援する、という話ではなく、国際社会が自発的に取り組むべきことである。なぜなら難民受け入れ国が社会的経済的に安定することは、世界全体にとっても重要な関心事であるはずだからだ。」
最後にグテーレス高等弁務官は、シリア情勢は悪化する兆しがあることに言及し、最悪の事態には国際社会によるさらなる対策が必要であると結んだ。「シリアでの危機のように、全く予測出来ない事態に対して対処できるよう国際社会は備えを怠ってはならない。」
シリアをはじめとした世界中の緊急事態は、国際社会が対処できない最悪の事態を生み出す可能性がある。だからこそ国際社会は、今まさに最悪の事態へと発展しつつあるシリアに対し危機感を持ち、これを阻止しなければならない。
グテーレス高等弁務官は3月10日から15日、トルコ、ヨルダン、レバノンを訪問予定である。
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