2013年 10月18日 ジュネーブ発
欧州へと避難するシリア難民が増加するのを受け、UNHCRはシリア難民が避難する過酷な道のり、また国境付近で直面する困難の深刻さに懸念を表明した。これは多くの死者が出たランペドューサ島での出来事が象徴するように、シリア難民の避難路の安全が確保されていないことを踏まえてのことである。
UNHCRは10月11日に 400人〜500人のシリア人とパレスチナ人を乗せた船が沈没し、たった200人しか助からなかった出来事に深い悲しみを感じている。エジプトから地中海を渡りイタリアへと避難するシリア難民が増えているが、避難する過程で襲撃を受けたり、脅されたり、収容や強制送還といった脅威が常につきまとっている。エジプト政府によると、エジプト国内には25万から30万人のシリア難民がおり、そのうち12万2774人がUNHCRによって難民登録されたシリア人である。
今年1月から9月30日までの期間に、 7557人のシリア人とパレスチナ人が海を渡ってイタリアへと避難しており、その多くが欧州の別の国での庇護を求めている。中でも深刻な問題は、保護者のいない子どもが船で避難するケースが増えていることだ。船で避難する場合、一人につき2000米ドルから5000米ドルかかるため、子どもだけ送り出したり、親ではなく親戚や友人が同行する傾向がある。さらに船が沈没して命を落としたり、生存者が収容されるケースが報告されている。
UNHCRは難民受け入れ国の政府、EU(欧州連合)や他のパートナーとともに、海路で避難する難民を支援する包括的な仕組みを模索している。UNHCRは悲劇を二度と起こさない為にも効果的な枠組みを求めており、難民保護における責任分担をより強化したいと考えている。さらに現在難民を受け入れている国以外にも、難民保護における国際的責任の分担を通し、明確で意義のある連帯を示すよう求めている。
国際社会がシリア難民受け入れ国に対して経済的支援を引き続き行うことは重要だが、一方で難民保護上の人道的配慮、第三国定住、家族の再統合、柔軟なビザの発給といった取り組みによって連帯を示すことも可能である。
さらにUNHCRは、シリア難民が避難する際の安全を確保すること、また難民保護の手続きを円滑に行なうことにより、シリア難民への支援と保護を強化することを求めている。身分証明証を所持していない難民、不法に入国した難民が不当な扱いを受けることなく人道的配慮に基づく保護を得られるなど、柔軟かつ寛容な保護のあり方が望まれる。また、家族再統合における審査基準や手続きを柔軟に行うことも一つの試みである。ビザ発給の要件を緩和し、雇用、教育、人道的保護の観点からの支援の枠組みを国内で整備することも重要である。
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