2012年3月13日、
シリア周辺国から難民の急増の報告を受け、アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は、パノス・ムンチスをシリア難民の地域難民保護調整官に任命した。ムンチス地域難民保護調整官は会見で、以下のような状況を説明した。
シリアでの混乱は、発生以来1年が経過し、約3万のシリア難民が近隣諸国へ逃れている中、いまだ多くが国内で避難を強いられることが推測される。ヨルダン、レバノン、そしてトルコの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のチームは、各国政府やNGO団体の難民保護活動を支援している。過去6か月間、シリア国内では衝突が激化する状態が続いているが、そのような状況の中でも、11万人の難民(主にイラク難民)の受け入れと支援が続けられている。現在までヨルダン、レバノン、トルコは、シリア難民に対し門戸を開いた状態が継続している。
UNHCRとレバノン政府は共に難民登録を行っており、レバノン北部において7088人を登録。さらに数千人がいると推測されるトリポリで難民登録を続ける。また、UNHCRと現地のパートナー団体はベカー高原にも約4千人のシリア難民が存在すると推定し、その数の特定と食糧などの配給を始めている。レバノンの他地域においても、千人のシリア難民を支援している状況である。
レバノン北部において、UNHCR、レバノン政府とパートナー団体は定期的に、難民やホストファミリーに対して食糧と生活必需品などを支給している。初期健康管理や高度な治療は、UNHCRやレバノン政府によって資金提供を受けた病院等で受けることが可能である。またUNHCRとパートナー団体の支援を受けた現地の学校に、難民の子どもたちも入学が可能である。現在まで525人のシリア人の子どもが入学している。補修授業などのプログラムなどを通して、UNHCRとレバノン政府は、引き続きレバノンとシリアの子どもたちの教育支援を進めていく。
ヨルダンでは5千人以上のシリア難民が昨年3月以来難民登録を行っており、2千人以上が登録待ちの状態である。シリア難民の多くがホストファミリーに身を寄せており、UNHCRは都市の難民に対する現金や物資支援、ヨルダン政府の国境付近施設管理の支援を行っている。レバノンと同様ヨルダンにおいても現地のNGOは食券配布、暖房器具などの生活必需品の支援対応、難民登録、行政サービス支援、医療支援などの重要な役割を果たしている。UNHCR、国連現地駐在チームとヨルダン政府の協働によってこれらの活動は実施されている。
トルコでは、政府が難民キャンプを運営しており、2011年4月以来2万3000人の難民をハタイ県の7つのキャンプで受け入れている。このうちシリアへ帰還したものもいるため、現在の全難民キャンプ人口は1万3000人以上とされている。 トルコ政府は、受け入れ態勢の整ったキリス県へ難民の移動を計画し、キャンプ内における初期健康管理、重症患者については病院での治療などを全て無料で行っている。教育に関してはキャンプ内に68の教室が設置されている。難民登録はUNHCRの協力の下、現在も実施されている。
イラク難民の報告によると、シリア国内では、経済の悪化により生活用品の急激な価格上昇が起こっている。UNHCRは1万1000人の困窮したイラク難民家族に経済的支援を継続し、約9万7000人の難民には食糧支援をする予定である。UNHCRはシリア国内や国際支援団体とともに困難化する社会・経済状態に対応できるよう難民に対し必要なサービスを提供している。
UNHCRは、より安全な場所を求めダマスカスの農村地域や主要都市の周辺地域に難民やシリア人が移動していることを確認している。