UNHCR事務所規程は1950年の国連総会で採択されました。 この規程は、UNHCRの機能を、難民に国際保護を提供し、各国政府が難民への恒久的解決策を模索するのを支援することと規定しています。UNHCRは当初は3年間のみの暫定機関として設立されましたが、その後国連総会決議で引き続き存続期間が延長され、2003年には、難民問題が解決するまで、恒久的に存続する機関とすることが決定されました。
総会はまた事務所規程を採択する決議において、高等弁務官の任務の遂行について諸政府が協力するよう要請しています。本規程によれば、高等弁務官のオペレーションは、人道的及び社会的なものでありまた完全に非政治的な性格のものです。
これまでの国連総会決議において、UNHCRの事務所規程の関心対象となる基準も拡大されてきました。国際保護を確保し、UNHCRの関心対象者の恒久的解決をめざすことがUNHCRの主要な目標であることに今も変わりはありません。これら2つの目標は異なった機能を持つと捉えられる場合が多いのですが、実際には相互に依存しあう関係にあります。
採択 1950年12月14日
総会は、
1949年12月3日の決議319Aを考慮し、
1 国際連合難民高等弁務官事務所規程である同決議附属書を採択し、
2 国際連合難民高等弁務官事務所の権限に該当する難民に関する国際連合難民高等弁務官の任務の遂行について、諸政府が特に次のことを行うことにより、高等弁務官に協力するよう要請する。
(a) 難民の保護について規定する国際条約の当事国となること及びかかる条約の当事国となること及びかかる条約に基づき必要な実施措置をとること。
(b) 難民の状態を改善し、保護を必要とする人数を減少せしめるに適する措置を実施するため高等弁務官との間で特別協定を締結すること。
(c) 最窮乏状態にある難民を排除することなしに、すべての難民の入国を認めること。
(d) 難民の自発的帰還の促進に尽力する高等弁務官を援助すること。
(e) 特に帰化を容易にすることによって、難民の同化を促進すること。
(f) 難民に対して、旅行証明書及び国家機関が通常他の外国人に与えるその他の文書、特に難民の再定住を促進する文書を与えること。
(g) 難民に対して、その資産、特に再定住のために必要な資産の移転を許可すること。
(h) 高等弁務官に対して、難民の数及び状態並びに難民に関する法令についての情報を提供すること。
3 本決議の実施にあたって国際連合非加盟国の協力をも得るため、事務総長に対して、この決議を附属書とともに、非加盟国に対しても送付するよう要請する。
【附属書】
国際連合難民高等弁務官事務所規程
第一章 一般規程
1 国際連合難民高等弁務官は総会の権威の下に行動して、本規定の適用範囲に該当する難民に対して国際連合の後援の下に国際保護を与えるという任務を負い、かつ、このような難民の自発的帰還又は新しい国内社会内での同化を促進するために政府及び、関係国政府による認可を条件として、民間団体を援助することによって難民問題の恒久的解決を図るという任務を負う。
この任務の遂行にあたって、とりわけ、困難が生じた場合、さらには例えばこれらの難民の国際的地位に関する論議については、高等弁務官は、難民に関する諮問的委員会が創設されているときは、同委員会の意見を求めなければならない。
2 高等弁務官の事業は完全に非政治的性質のものでなければならない。又、同事業は人道的及び社会的なものでなければならず、原則として難民という集団ないし部類に関係するものとする。
3 高等弁務官は、総会又は経済社会理事会が与える政策指示に従わなければならない。
4 経済社会理事会は、難民に関する諮問的委員会の設置を決定することができる。ただし、この件に関して高等弁務官の見解を聴取した後でなければならない。同諮問的委員会は、難民問題の解決に寄せる当該者の顕著な関心及び献身を基礎として同理事会が選出する国際連合加盟国代表及び非加盟国代表によって構成される。
5 総会は高等弁務官事務所が1953年12月31日以降も存続されるべきかどうかを決定する目的で、同事務所のための諸取極を第八通常総会期までに再検討するものとする。
第二章 高等弁務官の任務
6 高等弁務官の権限は次の者にまで及ぶ。
A(i) 1926年5月12日及び1928年6月30日の両取極、又は1933年10月28日及び1938年2月10日の両条約、1939年9月14日の議定書又は国際難民機関憲章のいずれかに基づいて難民とみなされている者。
(ii)1951年1月1日前に生じた事件の結果として、かつ、人種、宗教、国籍若しくは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者又はそのような恐怖を有するため若しくは個人的便宜以外の理由のために国籍国の保護を受けることを望まない者。又は、無国籍者であって、かつ、常居所を有していた国の外にいる者であって、当該常居所国に帰ることができない者又は個人的便宜以外の理由のために当該常居所国に帰ることを望まない者。
国際難民機関がその活動期間中に下した適格性に関する決定は、本項の条件を充たす者に難民たる地位を付与することを妨げない。
高等弁務官の権限は本A項に定める者に対し、次のいずれかの場合には適用を終止しなければならない。 (a) 当該者が任意に国籍国の保護を再び受けている場合。
(b) 当該者が国籍を喪失していたが、任意にこれを回復した場合。
(c) 当該者が新たな国籍を取得し、かつ、当該の新たな国籍国の保護を受けている場合。
(d) 当該者が迫害を受けるおそれがあるという恐怖を有するため、定住していた国を離れ又は定住していた国の外にとどまっていたが、当該定住していた国に任意に再び定住するに至った場合。
(e) 当該者が難民であると認められる根拠となっていた事由が消滅し たため、国籍国の保護を受けることを拒否しつづけるための、個人的便宜上の理由ばかりではなくそれ以外の理由をも、もはや主張することができない場合。純粋に経済的な性質の理由は援用することはできない。
(f) 当該者が無国籍者である場合には、難民であると認められる根拠となった事由が消滅し、かつ、以前に常居所を有していた国へ帰ることができるために、当該国へ帰ることを拒否しつづけるための、個人的便宜上の理由ばかりでなくそれ以外の理由をも、もはや主張することができない場合。
B 人種、宗教、国籍若しくは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国政府の保護を受けることができない者又はそのような恐怖を有するために国籍国政府の保護を受けることを望まないその他の者。
又は、当該者が無国籍である場合、上記の恐怖を有するために以前の常居所国の外にいる者であって、かつ、当該常居所国に帰ることができないその他の者若しくはこのような恐怖のために当該常居所国に帰ることを望まないその他の者。
7 ただし、6に定める高等弁務官の権限は次の者には及ばない。
(a) 二つ以上の国籍を有する者であって、そのいずれか一つの国との関係では前条の条件を満たしていない者。
(b) 現在居住している国の権限のある機関によって、その国の国籍を保持することに伴う権利及び義務を有すると認められる者。
(c) 国際連合の他の組織又は機関から保護又は援助を引き続き受ける者。
(d) 犯罪人引渡条約の規定の適用範囲に入る犯罪、国際軍事法廷ロンドン憲章の第6条に定める犯罪、又は世界人権宣言(注)第14条2の条件の適用範囲に入る犯罪を行ったと思料される重大な理由のある者。
8 高等弁務官は以下のことによってその事務所の権限の範囲内に入る難民の保護に備える。
(a) 難民保護のための国際条約の締結及び批准を促進し、その適用を監督し、かつその修正を提案する。
(b) 政府との特別協定を通じて、難民の状態を改善し保護の必要な人数を減少せしめるのに適する一切の措置の実施を促進する。
(c) 任意の帰国又は新しい国の社会内での同化を促進しようとする政府及び民間の努力を援助する。
(d) 最窮乏状態にある難民を排除することなく、難民の各国領域への受入れを促進する。
(e) 難民がその財産、とりわけ再定住に必要なものの移転するための許可を得るよう努力する。
(f) 各国領域内の難民の数と状態及び難民に関する法令について各国政府から情報を入手する。
(g) 関係する各国政府及び政府機関と連絡する。
(h) 難民問題を取扱う民間機関との、高等弁務官が最善と思料する方法による接触設定をする。
(i) 難民の福祉に関係のある民間機関の努力の調整を促進する。
9 高等弁務官はその自由裁量に委ねられる財源の範囲内で、帰国及び再定住を含めて、総会の決定するその他の活動にも従事しなければならない。
10 高等弁務官は難民援助のために受理した公私からの一切の基金を管理し、この援助を運営するに最も適格であると同弁務官が思料する民間機関及び(適当な場合には)公的機関にこの基金を分配する。
高等弁務官は、適当と思料しない一切の提供又は利用しえない一切の提供を拒絶することができる。
高等弁務官は、あらかじめ総会の同意がなければ、各国政府に対して基金提供を訴えたり、一般に対して援助を訴えてはならない。
高等弁務官はこの分野における自らの活動の報告をその年次報告のなかに含める。
11 高等弁務官は総会、経済社会理事会並びにそれらの補助機関において自らの見解を表明する権利を有するものとする。
高等弁務官は毎年、経済社会理事会を通じて総会に報告を行う。この報告は総会議事日程において独立した議題とみなされる。
12 高等弁務官は各専門機関の協力を要請することができる。
第三章 組織及び財政
13 高等弁務官は事務総長の指示に基づいて総会が選出する。高等弁務官の任用条件は事務総長が提案し、総会が承認する。高等弁務官は1951年1月1日から3年の任期で選出される。
14 高等弁務官は自らの国籍と異なる国籍を有する高等弁務官代理を、同じ任期の間で任命する。
15(a) あてがわれた予算の範囲内で、高等弁務官事務所の職員は高等弁務官により任用され、その任務遂行について高等弁務官に対して責任を負う。
(b) 上記職員は高等弁務官事務所の目的に献身的な者のなかから選ばれる。
(c) 上記職員の雇用条件は、総会が採択した職員規則及びそれに基づいて事務総長が制定した細則の定めるところによる。
(d) 無報酬の職員の雇用については、これを許可するための細目を定めることもできる。
16 高等弁務官は難民の居住する国の国内に代表を任命する必要があるかどうかについて、同国政府と協議する。その必要を認めるいかなる国の国内にも、当該国政府の同意を得られた代表を任命してこれをおくことができる。上記規定を条件として、同一代表が二つ以上の国において職務を行うことができる。
17 高等弁務官と事務総長は相互の利害関係事項について連絡及び協議を行うために適当な取極を結ばなければならない。
18 事務総長は高等弁務官に対して、予算の範囲内で一切の必要な便宜を提供する。
19 高等弁務官事務所はスイス国ジュネーブに置く。
20 高等弁務官事務所の財政は国際連合の予算によって賄われる。ただし総会が後日別段の決定を行う場合を除いて、高等弁務官事務所の任務に関する行政支出以外のいかなる支出も国際連合予算に計上されることはないものとし、かつ、高等弁務官の活動に関するその他の一切の支出は自発的寄附金によって賄われるものとする。
21 高等弁務官事務所の管理は国際連合財政規則、及びそれについて基いて事務総長が発布する財政細則に従う。
22 高等弁務官の基金に関する処理は国際連合監査委員会の監査に服する。ただし、同委員会は、基金の割当てを受けた機関から監査済みの会計報告書を受領することができる。基金の保管及び割当のための行政取極めは、国際連合財政規則及びそれに基づいて事務総長が発布した細則に従って高等弁務官と事務総長の間で合意される。
(注) 1948年12月10日の国連総会決議217A(III)参照。