執行委員会は、
各国が次のような考察から指針を受けるべきであると判断した。
一般原則
- 各国は、真正な庇護希望者に対して庇護を与えるよう最善の努力をすべきである。
- 難民が迫害を恐れる理由のある国への帰国を余儀なくされるかまたは送還される措置は、承認されたノン・ルフールマン原則の重大な侵害にあたる。
- 遭難中の船舶が自国の領水内に避難することを許可し、および、庇護を求める乗船者に庇護または少なくとも一時避難を与えることは、あらゆる沿岸国の人道的義務である。
- 各国は、人種、宗教、政治的意見、国籍または出身国による差別なく庇護の付与について決定しなければならない。
- 各国は、家族の再統合のためおよび人道的理由により、一時避難または恒久的庇護を与えられた者の、少なくとも配偶者および未成年の子どもまたは扶養されている子どもの入国を促進すべきである。
庇護希望者の大量流入に関する事態
- 大量流入の場合、庇護を求める者は、常に、少なくとも一時避難を与えられるべきである。地理的条件またはその他の理由で大量流入に直面している諸国は、必要な場合および関係国の要請があった場合には負担の衡平な配分の原則に従って他国から即時の援助を受けるべきである。当該諸国は、当事者が十分に保護され、緊急援助を与えられおよび恒久的解決がはかられることを確保するため、できる限り速やかにUNHCRと協議すべきである。
- 他国は、個別に、共同でまたは国連難民高等弁務官事務所もしくは他の国際機関を通じて適切な措置をとり、第一次庇護国の負担が衡平に配分されることを確保すべきである。
個別の庇護希望者に関する事態
- 庇護申請を審査する責任を負うべき国を特定する問題を、共通の基準の採用によって解決するよう尽力すべきである。当該基準を作成するにあたり、次の原則が遵守されるべきである。
- 当該基準は、庇護申請を審査する責任を負うべき国であって、かつ庇護希望者が関係機関に出頭する可能性のある国を積極的に特定することを可能にするものでなければならない。
- 当該基準は、いずれの国に庇護申請を審査する責任があるのかについて起こりうる国家間の意見の相違を回避する性質を有し、かつ庇護希望者の他国における滞在の期間および性質を考慮に入れるものでなければならない。
- 庇護の申請を望む国に関する庇護希望者の意図は、できる限り考慮に入れる。
- 庇護は、他国で求めることができたはずであるという理由のみによって拒否されるべきでないという考え方に考慮を払う。ただし、庇護を申請する前にすでに他国との結びつきまたは密接な関係を有していることが明らかな場合には、公正で相当と思われるとき、当人に当該他国からの庇護を最初に申請するよう要請することができる。
- 基準の設定とともに、解決策が見出されていない事案に関する関係政府間の定期協議および必要な場合にはUNHCRとの協議のための取決めを行う。
- 他の締約国から自国の領域に不法に入った者の送還について定める協定は、庇護希望者について、その特別な状況に相当の注意を払って適用される。
- 庇護希望者に対し一定の期限内に庇護申請を提出するよう求めることはできるが、当該期限を徒過したことまたは他の形式的要件が満たされなかったことによって庇護申請を審査の対象から除外すべきでない。
- 執行委員会 第28会期に採択された勧告(A/AC.96/549,para.53(6),(E)(ⅰ))に従って、庇護希望者が最初に国境機関に出頭した場合、当該機関は当該申請を中央機関に付託することなく拒否すべきでない。
- すでに庇護を与えられている難民が迫害の恐れのためまたは身体の安全もしくは自由が危険にさらされているため現在の庇護国を離れざるを得ないという理由から他国で庇護を申請する場合、当該他国の当局は当該庇護申請について好意的考慮を払うべきである。
- 各国は、UNHCRの要請により、いずれの国にも庇護を見出すことのできない一定数の難民を受け入れることについて好意的考慮を払うべきである。
- 各国は、難民が迫害を恐れる理由のある国以外の国に居住する可能性を得ないまま庇護国に居住しまたは帰国する権利を失う事態を避ける必要性に特に注意を払うべきである。
- 各国は、1951年条約付属書第6項および第11項の目的に従って、難民が他国の領域に合法的に居住することになるまでの間、難民旅行証明書を更新しまたはその有効期間を延長し続けるべきである。1951年条約の規定する旅行証明書以外の旅行証明書を所持している難民についても、同様の実務が可能な限り施されるべきである。
*1国連総会文書No.12A(A/34/12/Add.1)に含まれている。