目標2 重層的な人口移動の中での難民の保護

1.庇護希望者と難民のニーズを明確化し、そのニーズに適切に対応すること(出入国管理という広い文脈における保護へのアクセスを含む)


  • 各国は、多国間および様々なセクター間の関連協議を踏まえ、出入国管理措置が難民と国際的保護を必要としない者とを適正に区別する適切な保障手段を具備していることを確保し、合意された国際的枠組みに難民保護のニーズを適合させる。
  • 各国は、出入国管理と庇護に関する一貫性のある政策課題を作成する。この政策課題は、出入国管理の優先事項と難民保護の要請との間に適切なバランスをとり、また、雇用と家族の再統合という観点から透明で衡平な出入国管理政策を含むものとする。
  • UNHCRは、「入国阻止の場合における保障措置に関するガイドライン」と、各国、国際機関およびNGO向けの研修パッケージを作成する。
  • UNHCR執行委員会は、入国阻止措置がとられる場合における保護および保障措置に焦点をおいた「UNHCR執行委員会結論」の採択を検討する。
  • UNHCR、各国その他の利害関係者、(例えば、国際海事機関)は、庇護希望者と難民の海上における救助の責任(救助された者の下船と、とられるべき解決策に関する責任を含む)について共通の了解に達することを追求する。
  • 各国は、出入国の管理という幅広い文脈において、1990年の「すべての移住労働者及び家族構成員の権利の保護に関する国連条約」および国際労働機関(ILO)諸条約(特に第97号条約および第143号条約)の締結を検討する。

 

2.密入国および人身取引と闘う国際的営みの強化


  • 各国は、2000年の「国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約」および同議定書(「国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書」と「国際的な組織犯罪の防止に関する国連条約を補足する、人、特に女性および児童の取引を防止、抑止および処罰するための議定書」)を締結することを検討する。
  • 各国は、人身取引の対象にされた個人、特に女性および少女から庇護申請があった場合、明らかに根拠のない理由に基づかない限り、その申請が確実に受理されるようにする。
  • 各国は、密入国・人身取引に従事する者に科せられる刑罰を周知させる。
  • UNHCRは、人身取引の対象にされた子どもの保護の必要に焦点を当てた専門家会合の開催を検討する。

 

3.庇護と移民の関連性に関するデータの収集と研究の改善


  • 各国は、国際的な人口移動の原因および詳細を明らかにし、問題の質的な分析を可能にするため、移動の流れの規模、形態およびその人口構成に関するいっそう詳細で比較可能な性別・年齢別の統計を作成し、これを共有する。特に、各国は、データを「国際移民統計に関する国連の勧告」(改訂版1998年ニューヨーク)にしたがって作成することを検討する。
  • 各国は、密入国、渡航ルートなどに関する情報を含め、不法移民および非正規移動者に関する情報の収集および共有の方法について検討する。
  • この点に関して、国際移住機関(IOM)が各国および国際機関と協議の上、「プッシュ」および「プル」要因など移民の動態に関する詳細な研究を実施することが奨励される。UNHCRおよびIOMは、地域機関およびその他の機関11と共同して、それぞれの網羅する地域に関する同様の研究の実施あるいは既存のデータの出版を検討する。

11 「難民、避難民および移住者に関するアジア太平洋政府間協議」(APC)、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、経済協力機構(ECO)、欧州連合(EU)、「北米、欧州および豪州における庇護、難民および移民政策に関する政府間協議」(IGC)、欧州安全保障協力機構(OSCE)、南アジア地域協力機構(SAARC)および「南アフリカ開発共同体」(SADC)など。

 

4.非正規あるいは二次的な移動の削減


  • UNHCRは、「すでに保護を受けている国から非正規に移動する難民および庇護希望者の問題」に関する「UNHCR執行委員会結論」第58号(XL)(1989年)に留意しつつ、第一次庇護国において何が実効的な保護を構成するのかについてより明確な理解の上に立ち、また国際的な連帯および負担の共有を考慮しながら、関係パートナーと協力の上、こうした移動の理由の分析を行うとともにこれらの問題に対処するための具体的な戦略を提案する。
  • UNHCRは、包括的行動計画の一環として、特定の非正規あるいは二次的な移動の状況に対して発動し得る措置に関して、出身国、経由国、最終目的国およびIOMを含むその他のパートナーと協働する。

 

5.UNHCRとIOMの協力関係のいっそうの緊密化


  • UNHCRとIOMは、関係国、その他の国際機関12、およびNGOと協議の上、2001年11月に設立された「庇護および移民に関するアクション・グループ」(AGAMI)の枠組みの中での協力を深める。これは、両機関が庇護と移民の関係についての理解をさらに深め、この問題に対する各国の取り組みに寄与できる能力を高めることを目的とする。この点に関して、AGAMIは、移民と庇護との相互関係における課題の明確化および分析を行い、この二つの関連性についての理解を深め、理論上13および具体的運用上14の問題に対応し、情報のより良き共有を推進する。
  • UNHCRは、各国およびその他の関係者にAGAMIの協議プロセスに関する情報の提供を引き続き行う。

12 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国際労働機関 (ILO)、移住者の人権に関する特別報告者などが考えられよう。
13 専門用語、研究やデータ収集、質的分析など。
14 各国政府による密入国・人身取引被害者に対する入国阻止、庇護手続きへのアクセスの確保、情報と一般市民向け意識向上活動、政府関係者の研修など。

 

6.合法的に移民できる可能性と密入国・人身取引の危険性についての情報キャンペーン


  • 各国は、IOM、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、ILOなどの国際機関およびNGOと協力の上、既存または開発中のものを参考にしながら、合法的な移民のために利用可能な経路に関する情報を提供し、密入国および人身取引の危険性を警告し、さらに、対象者にいきわたるように資料を提供できる情報キャンペーンのモデルを開発する。その中には、保護の必要な者に対して国際社会が負う責任について説明する資料も含める。

 

7.国際的保護を必要としない者の帰国


  • 各国は、国際機関、特にIOMおよびUNHCRならびに適宜NGOと協議しながら、過剰な力に訴えることなく、また、子どもの場合にはその最善の利益に相当の考慮を払い、国際的保護を必要としない者の帰国あるいは出身国への再入国を人道的な、かつ人権と尊厳とを完全に尊重する方法で促進する方策(二国間および地域的な再入国協定も含む)を開発する。
  • 各国、IOMおよびUNHCRは、国際的保護を必要としない庇護希望者の早期帰国に対する障害を除去するために適宜協力する。その活動の前提となるのは、自国民の再入国を認める国家の義務である。
  • UNHCR執行委員会は、各国に、自国民の受け入れと帰国を容易にする国家の義務および関連諸問題について指針を提供する「結論」の採択について検討する。

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