9月上旬 、外務省とUNHCR駐日事務所の共催で「第1回日本グローバル難民フォーラムネットワーク会合」が開かれました。
「グローバル難民フォーラム(Global Refugee Forum: GRF)」は、長期化する難民危機にどう対応していくか、その枠組みを考えアイデアを交換する場です。2018年12月に国連総会で採択された「難民に関するグローバル・コンパクト」の理念に基づき、“社会全体で取り組む難民支援”の推進に向けて、2019年から4年に一度開催されています。
昨年12月にスイス・ジュネーブで開催された第2回GRFには、日本を含む5カ国が共同議長国を務め、政府、民間セクター、NGO、宗教団体、教育機関、そして難民も含めて、世界各国から4,000人以上が集まりました。共同議長国の任期は次回の2027年まで続き、各国には国際社会におけるリーダーシップが期待されています。
第2回GRFでは、日本から40を超える難民支援に関する「宣言(プレッジ)」が提出されました。その進捗を確認し、実行を確実にするため、このたび新たに「日本グローバル難民フォーラムネットワーク」が立ち上げられ、第1回目の会合には、これまでのGRF参加者に加え、難民支援に関心を持つ団体などが参加しました。
外務省国際協力局の日下部英紀審議官は開会のあいさつで、「昨年のGRFで日本は共同議長国として国際社会に団結を呼びかけ、それが今、世界中で芽を出し始めている。日本は政策レベルから現場レベルまで多様な形で難民支援に取り組んでおり、企業やNGOの活動も重要な役割を果たしている。日本グローバル難民フォーラムネットワークを通じ、これからさらに関係者間の連携を強化したい」と述べました。
続いて、UNHCR駐日代表の伊藤礼樹がGRFの目的と経緯を説明し、GRFの主要テーマである「難民受け入れ国の負担軽減」「難民の自立促進」「第三国定住の拡大」「安全で尊厳ある帰還に向けた環境整備」の4本柱の重要性を再確認しました。「第2回GRFでフィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官が示した “新しいマルチラテラリズムの始まり”とは、従来の多国間の協力にとどまらず、社会全体が参加する難民支援を指している。日本でもこのネットワークを通じて各宣言の進捗を共有し合い、現場での支援につなげていきたい」と期待を込めました。
次に、第2回GRFで提出された宣言のうち、6つの提出元が代表して進捗を報告しました。
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外務省/国際協力機構(JICA)
「人道と開発と平和の連携(HDPネクサス)」に関する宣言のリード国として、第2回GRFで上川陽子外務大臣が表明した「アフリカeセンター」を通じた人道支援従事者の能力強化や「女性・平和・安全保障(WPS)」の視点を重視した取り組みを強化。また、JICAのリードにより、難民の自立や開発計画策定の支援(ウガンダ・ザンビア)、精神保健・心理社会的支援(ヨルダン・トルコ)、専門家派遣(ケニア・バングラデシュ)、紛争予防と帰還支援(ウクライナ・コロンビア)など、HDPネクサスをはじめ、複数の宣言に貢献するプロジェクトを実施・検討中。
ソニーグループ
「新型コロナウイルス・ソニーグローバル支援基金」を通じて2023年にUNHCRとパートナーシップを締結。3年間で約600万ドルの拠出を決定し、約400万ドルの支援を実施済み。バングラデシュと南部アフリカでは、難民・受け入れコミュニティの復興支援と疫病予防に関する支援が進行中で、より質の高い保健医療や衛生サービスへのアクセスや啓発に向けた自社の専門技術の活用も検討中。今年4月にはバングラデシュ・ロヒンギャ難民キャンプの視察を行った。
Welcome Japan
今年6月の世界難民の日にあわせて「Welcome Japan Summit」を開催し、「CxOカウンシル」を通じた産業界との連携をはじめ、日本での難民包摂市場の推進に向けた議論を深めている。住居支援に関するイベントも開催予定で、その他にも、日本語教育やメンタルヘルス支援に注力している。また、各企業と協力してDX人材の難民雇用を推進しており、これからコンソーシアムを発足予定、100億円規模の就労機会創出を目指す。
全日本仏教会
全国60の加盟団体、約7万5,000の加盟寺院に対する広報活動を実施し、宗教記者クラブでの報告会、特設ウェブサイトや情報誌の作成、世界難民の日の各寺院のブルーライトアップなどにより、難民支援に関する意識向上に努めている。また、各宗派に対する啓発の強化や都内寺院での発信イベントなどを検討中。
創価学会
国連UNHCR協会と連携した映画上映会、展示活動、機関紙での報道などの啓発活動を実施。ヨルダンでは「音楽は私たちをつなぐ」プロジェクトを通じて、音楽教育を通じた難民への継続的なサポートに加えて、難民と受け入れコミュニティ間の関係構築、子どもたちへのワークショップ、障がいなど特別な配慮が必要な子どもへの音楽療法の導入に向けた研修を推進している。
これらの発表を受けた意見交換では、日本から提出された宣言のフォローアップの重要性が再確認され、このネットワークについて、情報共有にとどまらず成功や失敗を通じて互いに学び合う、より開かれた場として活用していくこと、また、各宣言において難民の“意義ある参加”を推進することなどが提案されました。
また、世界の難民を取り巻く傾向を知り課題を共有する機会として、今年6月にUNHCRがIPSOSと共同で発表した52カ国を対象とした調査「難民に対する世界の態度」が紹介されました。その調査結果をもとに、日本で難民に対する共感と支援を広げるために何ができるか、日本と他国の回答の違いの要因、この数年の調査結果の変化などについて、参加者間で活発に議論が行われました。
最後に、UNHCR駐日代表の伊藤は「どの取り組みにおいても、難民の参加が重要であり、さらに進めていく必要があると感じた。今後このネットワークを通じて、難民支援における課題解決に向けて建設的なディスカッションを行っていきたい」とコメントし、会を締めくくりました。
「日本グローバル難民フォーラムネットワーク会合」は、2027年の第3回GRFまで年2回の開催が予定されています。UNHCRは引き続き、日本国内外のパートナーと協力し、誰一人取り残さない社会の実現に向けて取り組みを進めていきます。
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