5月下旬、ケリー・クレメンツ国連難民副高等弁務官の訪日に伴い、UNHCR国会議員連盟(UNHCR議連)による特別会合が開かれました。
冒頭、UNHCR国会議員連盟会長 逢沢一郎衆議院議員は、「国際社会は今、ウクライナ、中東、ガザなど多くの難民問題を抱えており、数年前は7~8,000万人だった強制移動の数が、直近は1億人を超えている。この厳しい現実にしっかりと向き合い、国際社会が解決に向けて力を合わせることが求められている」と強調しました。続いて、公明党代表の山口那津男衆議院議員も、「難民危機に伴う状況が厳しくなってきており、UNHCRの役割が高まっていると感じる。この会合を通じて現状を聞き、どのような支援ができるかの認識を新たにしたい」と話しました。
続いて、クレメンツ副高等弁務官より、世界の難民の現状とUNHCRの活動についての発表がありました。UNHCR議連をはじめ、日本からの継続的な支援への感謝を述べたうえで、「現実はとても厳しい。強制移動の数は増え続けており、この1年は特に、スーダンでの人道危機が大きく影響している。ここで皆さんに、強制移動は世界的な課題であるということを強調したい」と話し、「気候変動や新型コロナウイルスに私たちがみんなで立ち向かっているように、難民問題の恒久的な解決策を見つけるために必要なのは国際社会の連帯」だと訴えました。
また、昨年12月にジュネーブで開催された「第2回グローバル難民フォーラム」でも共同議長国を務めた日本のリーダーシップの意義をあらためて強調。命を守るための緊急支援から自立に向けた中長期的な支援まで、日本の強みである「人道と開発と平和の連携(HDPネクサス)」と「女性・平和・安全保障(WPS)」を通じた取り組みへの期待を伝えました。
続いて、同じく訪日中のUNHCRウクライナ副代表のアレクサンダー・ムントより、ウクライナの現状と現場で必要な支援について共有がありました。2022年2月のロシアの軍事行動開始から2年以上がたった今も、ウクライナ国内では攻撃が激しさを増しており、国外に約650万人、国内に約370万人が避難しており、現場での人道支援のニーズが引き続き非常に高いことを説明しました。
ウクライナ国内では、インフラの破壊による生活基盤の喪失に加え、就労や教育の機会の中断など、家を追われた人々の困難は測り知れないとし、UNHCRは現地当局と連携して、シェルターの整備、オンライン授業の導入や避難場所でもある地下鉄の駅での教室建設、家や家族を失った人々に対する心理社会的なケアなども強化していると説明しました。そのうえで「早期復興と人道支援を並行して、バランス良く進めていくことが重要」と話しました。
また、「この2年の間で、ウクライナの人々も心身ともに疲弊しており、蓄えも底をつき始めている。日本はウクライナ危機の支援に大きな貢献を果たしており、引き続きの支援をお願いしたい」と訴えました。
質疑応答のセッションでは、難民問題における政治的解決の重要性、中長期的解決策に求められていること、日本が難民問題、ウクライナの平和に関するサミット(2024年6月スイス開催)への期待などについて議論がありました。
最後にUNHCR駐日代表の伊藤礼樹は、「UNHCRの現場の声を伝えるために、本日このような機会をいただいたことに感謝したい。これからは、昨年12月のグローバル難民フォーラムでの議論どう進めていくかが重要になってくる。向こう4年、共同議長国を務める日本には、引き続き日本らしさが出る支援、HDPネクサスなどを通じたご支援をお願いしたい」とコメントしました。
これを受けて逢沢議員は、「政府、民間、市民社会が、それぞれの立場で難民問題に向き合い、力を発揮していくという『難民に関するグローバル・コンパクト』の理念を日本でもさらに広めていかなければならない。UNHCR議連としても、このテーマにどう取り組んでいくかをしっかり考えていきたい」と応え、会を締めくくりました。