UNHCR駐日事務所では、各部署でインターンが活躍しています。
2024年1月から総務部のインターンとして勤務している松本真左子さんは、大学での多文化共生やマイノリティなどの分野での学びを通じて、国連機関のなかでもUNHCRに興味を持っていたといいます。
松本さんが所属している総務部は“事務所全体を支える”部署。インターンを通じた学びややりがい、今後のキャリアなどについて松本さんに聞きました。
過去の経験からグローバルな支援活動へ
私は自分自身が移民2世として日本で生まれ育ったため、外国人やマイノリティに関する社会問題や多民族・多文化共生についてはずっと関心を持っていました。大学では特にアジアを中心とした平和構築とトランスナショナリズムについての研究をし、「日本に住む難民2世のアイデンティティと統合」というテーマで論文を執筆しました。
私が「難民問題」に特に興味を持ったのは、北欧での大学交換留学中に、難民の背景を持つ多くの友人と出会ったことがきっかけでした。それまで私は、難民に関する知識が乏しく、社会的に立場が弱い人といった印象だけを持っていました。しかし、難民という背景を持ちながらも、避難・定住先の国で自分のアイデンティティを生かしてたくましく生きている彼らの姿を目にし、日本における移民・難民の支援に直接的に関わりたいという気持ちが芽生えました。
私はUNHCR駐日事務所のインターンを始める前から、難民支援の民間団体で言語支援や就労支援などの草の根活動に携わってきました。実際に日本で暮らす難民の方と関わる中で多くの知り合いができ、難民認定の有無に関わらず、日本で難民として生きることの困難や課題について、制度面と生活面共に理解が深まりました。この活動を通して、民間の視点やコミュニティベースの日本の難民支援の現場を知ることができたのですが、同時に、日本政府や国際機関といったより大きな単位での支援体制や役割についても学びたいと思うようになりました。
そんな時に、国連フォーラムのメーリングリストでUNHCR駐日事務所総務部インターンの求人を見つけて応募しました。UNHCRは数ある国連機関の中でも特に興味がありました。社会人経験がないことが不安でしたが、オファーをもらうことができて本当に幸運でした。
UNHCR駐日事務所の
総務インターンの仕事
総務部の仕事は、主に財務・人事・ICTに関わるもので、UNHCR駐日事務所全体を支えています。財務関連では事務所の運営予算に関わる資料の分類、人事関連では求人があった際の掲載、ICT関連ではオフィスの電子機器のメンテナンスやトラブルシューティングといったバックオフィスの作業が多く、総務部の職員の皆さんの補佐をします。その他にも、書類提出のための銀行・外務省・大使館の訪問、来客がある際のホテルや車の手配、イベントの会場予約など業務は多岐にわたります。他の部署のインターンの勤怠管理やサポートをするのも重要な役割です。私はこれまで事務に関わる職務経験がなかったので、最初の方は多くのことを覚える必要がありました。しかし、慣れてくると新たな業務に取り組む度に知識が増えるので、仕事がますます楽しく感じられるようになりました。
外部から見ると渉外や広報の活動が目立つかもしれませんが、総務は他部署のプロジェクトが円滑に機能するように裏から手助けする大切な部署です。オフィス全体の動きを包括的に追い、通常の業務に加えて各部署の業務も学べるのは、総務インターンの魅力だと感じています。また、バックオフィスの業務は国連に限らず、民間企業や政府機関でも行われているため、今後のキャリアにも応用が利くと感じています。UNHCR駐日事務所でインターンをする中で、国連機関の人の入れ替わりの頻繁さと、イベントやミッションが次々と展開され常に新たな仕事に挑戦する刺激を感じています。
また、総務の仕事以外にも、「グローバル難民フォーラム」関連のイベントや駐日代表が登壇するシンポジウムなど、部署の垣根を超えた事務所全体で行う活動のサポートも経験することができました。今後も国連難民副高等弁務官来日や世界難民の日など様々なイベントが予定されています。このような外部と連携して行われる企画への参加は、日本政府や民間企業、他の国連機関、NPOなどのステークホルターとの連携を知り、日本社会全体で取り組む難民支援との向き合い方を学ぶ良い機会になると思います。
UNHCRインターンでの
経験を生かして
私は大学4年の授業が終わった時期から大学院に進学する間の半年間、フルタイムで勤務をしています。9月からはイギリスの大学院で社会正義と開発について学ぶ予定です。まだまだ未熟で経験不足ですが、将来的には自身の専門知識を生かして支援活動が行われている現場で働きたいと考えています。
実際に現場で働く前に、UNHCR駐日事務所でのインターンを通して、国連機関の資金調達や組織構造を知り、人事にも関わることができたのは良い選択だったと思います。また、インターン中にはさまざまな人道支援の現場で働かれてきた経験豊富な職員の皆さんの話を聞ける場が多くあるため、将来の方向性や自分に必要なスキルを明確にする上で非常に貴重な機会です。
実際に中に入って働いてみないと分からない部分がたくさんあるので、国際協力の道に進みたいと思っている方や、国際機関での仕事に興味がある方にとって、UNHCRでのインターンはキャリアの解像度を上げる重要な経験になると思います。
インターンの中には、難民支援に関わってきた人もいれば、これまで全く違う専攻やお仕事をされてきた方も多くいます。もし応募するか迷っている方がいらっしゃれば、ぜひ挑戦してみてください。
この体験記が今後UNHCRでのインターンを考えている方にとって少しでも参考になれば幸いです。