2023年1月にUNHCR駐日代表に着任した伊藤礼樹が、日本記者クラブで着任のあいさつを兼ねて会見を行いました。
冒頭、伊藤はこれまでの自身のキャリアにふれ、「大学院卒業後、日本で仕事が決まっていたが、入社まで時間があり、ボスニアの紛争になにかできないかと国連ボランティアに応募した。その時のUNHCRの現場への派遣が人生の転機となり、以降約30年、UNHCRで難民保護の仕事に携わってきた」と話しました。
まず、新駐日代表としての抱負として、難民の視点に立った活動を第一に挙げ、そのために必要なことに、難民との垣根をなくすこと、日本社会でのパートナーシップの強化、そして若い世代との連携を挙げました。
また、世界で故郷を追われた人が1億人を超えた今、世界中に決して見過ごしてはならない難民の状況があること、日本をはじめ、国際社会からの継続的な支援が必要不可欠であることを強調しました。
その一例として、昨年2月から続くウクライナ人道危機についてふれ、「日本のメディアが現地の状況について詳細に伝えてくださったこともあり、ウクライナの故郷を追われた人々にたくさんの想いを寄せていただいた」と、日本の社会全体からの迅速な支援への感謝を述べました。また、危機から1年を迎えるこのタイミングで、全国の大型ビジョンなどで放映されるUNHCR制作のウクライナ支援の特別動画についても紹介しました(プレスリリースはこちら)。
他方、ウクライナ国内ではいまだ激しい戦闘が続いており、厳しい冬の気候の中での避難生活は予断を許さない状況であると訴えました。「昨年の発電所の攻撃により、電力の安定供給が得られない状況。日本政府から発電機やソーラーランプが迅速に供与され、人々は生活に必要な電力にアクセスできるようになった」と現地での高まるニーズと支援について紹介し、日本からのさらなる継続的な支援を呼び掛けました。
また、今年2月6日に発生したトルコ・シリア大地震については、当時、自身もレバノンに出張中で大きな揺れを感じたこと、直近にはUNHCRレバノンとシリアの代表を務めていたこともあり、「シリアの人々が直面する悲惨な状況に心を痛めている」と話し、長引く紛争と今回の地震により、シリアの故郷を追われた人々の苦難は二重、三重にもなっていることを強調しました。
そのほかにも、ミャンマー、アフガニスタン、アフリカ、ベネズエラなど、世界各地では強制移動が増え、複雑化していることから、2018年12月に国連総会で採択された「難民に関するグローバル・コンパクト」でも掲げられている「社会全体で取り組む難民支援」がますますカギになってくると訴えました。
最後に、今年12月に開催される「第2回グローバル難民フォーラム(Global Refugee Forum:GRF)」において、日本がアジアで唯一の共同議長国に決定していることも紹介しました。
「2023年は日本にとって重要な年。国連安全保障理事会の非常任理事国の2年の任期がスタートし、G7サミット(主要国首脳会議)のホストも務め、外交的にも期待が高まっている」とし、「それに続く形で、日本はGRFでも共同議長国としてリーダーシップを取り、難民に対する支援や解決策を国際社会に積極的にアピールしてほしい。私もUNHCR駐日代表として、日本のさまざまなパートナーの方々と対話し、さらなる連携を生み出していけるよう力を尽くしたい」と締めくくりました。
▶伊藤着任のプレスリリースはこちら