バングラデシュでモンスーンによる豪雨が数日にわたって続いており、南東部コックスバザールの難民キャンプでも被害が拡大しています。
ロヒンギャ難民のメヘル(60)が息子、義娘、孫と暮らすビニールシートで覆われた竹製のシェルターにも水が迫ってきました。ミャンマーから逃れてきてから4年近く、丘のふもとに建つ住まいで、ここまでの洪水を経験したことはありませんでした。2~3時間のうちに、胸元まで水につかり、ストーブ、ガスボンベ、太陽光パネルだけを持って避難しました。
「なにもできませんでした。どこに行ったらいいかも分からなくて。水位があっという間に上がって、戻ることもできませんでした。持ち物はほとんど流されてしまいました」
この数日で、コックスバザールに広がる難民居住区で暮らすロヒンギャ難民21万人以上が、鉄砲水と地滑りの被害を受けています。月曜と火曜の2日間は24時間で300ミリ、7月の月間降水量の平均の半分近くにもなる雨が降り、水曜、木曜も豪雨が続きました。これまで6人の難民が亡くなり、何千人もの住まいが流されたり、浸水などの被害を受けたりしています。
現在、メヘルと息子家族は、水につかった自宅から丘を少し上がったラーニングセンターに避難しています。同じく洪水で避難した約20家族も一緒です。そこでも、わらぶき屋根は雨漏りし、生きた心地がしない状況だといいます。
洪水で避難を強いられた人々はシェルターにぎゅうぎゅう詰め、もしくはラーニングセンターのような共用施設に滞在しています。
今回の洪水は、バングラデシュが新型コロナウイルスの感染拡大、死亡者数の増加と戦う中での厳しいロックダウン下で起きました。今年3月には難民キャンプで発生した大規模火災により11人が亡くなり、何千世帯ものシェルターが被害を受けました。UNHCRは、悪天候に続く、今回の地滑りと洪水により、バングラデシュのロヒンギャ難民はさらなる困難に直面し、人道支援のニーズはさらに高まっていると声明を出しています。
2017年以降、70万人を超える難民がミャンマーからコックスバザールに逃れてきてから、洪水や地滑りのリスクを軽減するために、難民キャンプ内で植林が続けられてきました。UNHCRはパートナー団体と連携し、災害が発生した際にすぐ正しい行動ができるよう、難民と受け入れコミュニティのボランティア育成を行ってきました。今週、そのボランティアたちが昼夜活動し、洪水、崩壊したシェルターから、安全な場所への避難を誘導しました。
バングラデシュは気候変動と熱帯性低気圧のリスクに最も直面している国のひとつで、この数年、モンスーンの頻度も増え、被害も拡大しています。
「こんな洪水は見たことがありません。ミャンマーでは平地に住んでいて、モンスーンで洪水も発生しませんでした」
メヘルは、自分たちのシェルター、残してきたものがすべて水につかってしまったのではないかと心配しています。
「いつこの雨が止むのか、いつ家に戻れるのかも分かりません」
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