12月4日から6日の3日間、アントニオ・グテーレス国連難民高等弁務官は、昨年6月に就任後二度目となる訪日をした。外務・法務両大臣など政府関係者との協議、JICA(国際協力機構)やNGOなどのパートナーとの意見交換のほか、4日には訪日記念シンポジウム「人道支援と企業のCSR」にて、また6日には外務省主催の「国際連合加盟50周年記念 人間の安全保障国際シンポジウム」にて基調講演を行った。
今回の訪日では、長年米国に次ぐ第2位の拠出国である日本からの支援に対する感謝を表明。UNHCRにとって重要なパートナーである日本との協力関係をさらに強化していく旨述べた。麻生外務大臣との会談では、日本政府が、南部スーダンにおける難民・国内避難民の帰還及び帰還地における定住を支援するために1200万ドルの拠出を行うことを決定したことに対して謝意を述べた。また、今後も同地域での難民支援プロジェクトに関し、日本政府とUNHCRの現場における協力を強化することとし、その中で、日本のNGOの積極的な参加を実現していくことに合意した。
シンポジウム「人道支援と企業のCSR」では、難民の保護と問題の恒久的解決をめざした難民の能力強化に力を入れる観点から、日本政府に難民支援拡大に向けた取り組み強化を求める考えを示した。高等弁務官は、「日本は伝統的に宗教に寛容だからこそ、平和構築や人間の安全保障に向けた国際社会での政治・外交的な役割が果たせるはず」と、紛争予防における指導力発揮に期待を寄せた。また、難民の受け入れや保護拡大に向けて、難民申請手続きや認可プロセスなど、日本での対応改善を求めた。さらに、今後は政府やNGOに加え、民間セクターが難民支援において果たす役割の重要性を述べ、企業に対する期待を表明した。
グテーレス高等弁務官は、森喜朗元内閣総理大臣・UNHCR国会議員連盟会長と逢沢一郎UNHCR国会議員連盟事務局長の進行のもと開催されたUNHCR国会議員連盟の会合にも出席。今後の活動方針や世界の難民問題の現状について説明した。外務省主催の「国際連合加盟50周年記念 人間の安全保障国際シンポジウム」では、高等弁務官はスーダン・ダルフール地方の事例を挙げ、約200万人の国内避難民の厳しい現状にふれ、国内避難民をとりまく問題の緊急性を唱えた。
また、日本のNGOパートナーと意見交換を行い、献身的な活動に感謝するとともに、一層の活躍への期待を表明。これにより、難民の支援に関する日本のNGOのより積極的な参加と、支援の現場での協力強化につながることが期待されている。
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